38 / 66
公妃になるなんて無茶難題過ぎます。
志望動機を語るがよろしいわ。
しおりを挟む
そのつんざくような絶叫に私とヴィックは驚いて身をギクッとこわばらせた。
二人の世界に酔いしれていたはずの私はびしりと固まる。ロマンティックな雰囲気が一気にサスペンス風味になってしまったため、あんなに熱を持っていた身体が急速に冷えていくのがわかった。
そんな私と比べるとヴィックのほうが切り替えが早かった。彼は身体を起こしてぐるりと警戒した眼差しで周りを見渡すと……ある一角を見てぎょっとした顔をしていた。
「……なぜ君が私の寝室に入ってきているんだ、ハンナ・コール…」
その単語に私は布団から顔を出してヴィックの見ている方向へと視線を向けた。……本当だ。解雇決定したと聞かされていたハンナ・コールがヴィックの寝室に足を踏み入れている姿がそこにある。……なんでこの人深夜にヴィックの部屋に侵入してるの…? また窃盗でもしにきたのか?
一方の彼女と言えば、私とヴィックを見て、口をパクパクさせては顔を赤くしたり青くしたりなにやら狼狽えていた。……ていうかまた行為を第三者に見られた。なんなの、何が何でも婚前交渉は許しません的な呪いでもかかっているんだろうか。
彼女の絶叫で異変を察知したのだろう。部屋の外からはバタバタと複数の足跡が近づいてきた。その音に気づいたヴィックが私を腕の中に隠していた。
「何事ですか!?」
乱暴に開かれた扉の向こうには使用人達。中には寝間着姿の人もいた。やっとお休みの時間だったろうに急に悲鳴が響き渡って慌てて飛んできたのだろう。彼らは部屋にいるハンナ・コールを見て怪訝な顔をして、ベッドの上で不機嫌な顔をしているヴィックとその腕の中にいる私に気づいて気色ばんだ。
「まぁああ! リゼット様! お部屋を抜け出して何をなさっていますの!?」
案の定、怒髪天を衝いてしまったようである。メイドさんの悲鳴のような声に申し訳なくなりながら、私は言い訳じみた言葉を漏らす。
「だ、だってヴィックが大事な話があるって言うから」
私だって話を聞きに来ただけだったんだよ。ふたりきりでしか話せない内容なんだと思って、こっそり抜け出してきたんだ。
実際は私が夜這いしに行ったみたいな感じになっているけどね。
「そんなの、日中にでもすればよろしい! ヴィクトル様もヴィクトル様ですよ! いくらリゼット様を愛しく思われていたとしても、結婚前の男女が…!」
「責任は取ると言っている」
「そういう問題じゃありません!」
説教モードに入ったメイド長は男性使用人を一旦下げさせると、布団にくるまった全裸の私にネグリジェを着させた。ヴィックも渋々寝間着を着直している。
うぅ、また複数の人に見られた……なんだこの羞恥ならぬ周知プレイ……。
深夜に差し掛かるであろう時間だが、私とヴィックはメイド長によってくどくどと婚前の男女の距離感というものを指導された。
「そうは言うが、流石に一昔前の価値観だろう」
「おだまりなさい!」
うんざりした様子のヴィックが水を差すとメイド長が口から火を吐く勢いで怒鳴った。日中はヴィックのお怒りに青ざめていたメイド長が今ではまさにお母さんのようにヴィックを叱り飛ばしている。
……逆転しているじゃないか。この2人のパワーバランスが気になるところだが、私は身を縮めて彼女の説教を受け入れた。
□■□
しかしここでなぜハンナ・コールがヴィックの部屋にいたのかという疑惑が持ち上がる、疑惑も何も現行犯なのだが、あの場で執事頭に咎められた彼女は「夜這いしに来た」とぺろっと自供した。
だけどいざ部屋に入ってみれば、寝台の上で2人の男女の絡み合う生々しい姿を見て衝撃を受けて叫んでしまったのだという。刺激が強すぎたらしい。
ハンナ・コールという人物に関して不審な点を感じた執事頭が色々と調査してくれたそうだが、クレームついでに紹介状を書いたメイド協会に損害賠償請求したら新たな事実が判明した。
城で色々問題を起こしたこのハンナは偽物で、本名はエラというらしい。彼女は本物のハンナ・コールの幼馴染。本物は出発の前夜に睡眠薬で昏倒させられ、紹介状と身分証明証、移動用のチケットも奪われたのだそうだ。
手加減無しで薬を盛られた本物ハンナさんが目覚めたのは病院で、昏倒しているところを親御さんに発見されたとか。その時点で既に1週間以上経過した後だったらしい。退院してから慌ててメイド協会に駆けつけたが、身分証明書も紹介状も奪われた【ハンナ・コール】の身分証明とかその他の煩雑な手続きでなかなかエーゲシュトランド城の採用担当者と連絡が取れなかったのだという。
「色々不審な点があったので再調査しましたが……どんな理由があったにせよ身分詐称は褒められたことではありません」
変だな変だなと思ってたらそれが偽物だったとは誰が想像できるか。
こっちは写真なんてないから、別人の身分証明書を利用することも簡単みたいだもんね。偽物ハンナ・コールであるエラの取り調べに同席していた私は言葉も出なかった。本物のハンナさんは災難だったね…というしかあるまい。
悪いことをしたのは明白なのに、エラはブスくれていた。彼女は私が見ていると気づくと、こっちをギラリと睨みつけてきた。その眼光の鋭さに私はビクッとしてしまう。
「だってスラムの娘を妃にするって聞いたら興味わくに決まってるじゃない! 会ってみれば私のほうが美人だったから私が妃になってやろうと思ったのよ! …私はただの平民で終わる女じゃないんだから!」
そんな。原因が私だと言いたいのか。
この人は……言葉の端々から幼馴染のハンナさんを見下している風な言い方しているし、優秀なメイドだと認められたハンナさんに嫉妬して悔しくてそのポジションを奪ったってのもあるんじゃないかなぁ。お山の大将気取りなのだろうか。
「は…? なにを偉そうに。私のリゼットのほうが可愛らしいに決まっているだろう…」
エラの反論にわかりやすく反応したのはヴィックである。彼は私の肩を抱き寄せて鼻で笑っている。恥ずかしいからやめてほしい。ヴィックは恋で盲目状態だからそんなこと言えるんだ。
おい、思い出したかのようにちゅっちゅっとキスするな。みんなの前でされると恥ずかしいんだよ私は。ヴィックの口を手のひらで塞ぐと、今度は手のひらにキスし始めたし。
「なんなのよ! 私のほうが美人でしょうが!」
ヴィックには私しか見えないようだ。エラの存在を忘れて私を愛でる。それが彼女のプライドを傷つけたのだろうか。なんか顔を真っ赤にさせて憤慨しているようだったが、危害を加えるかもしれないってことで早々に強制送還させられていた。
その際、給料では相殺できなかった被害金額をエラの実家あてに被害請求することも忘れない。私の髪飾りの窃盗に破損もだけど、関係各所で色々やらかしていたようである。
しっかり損害金の取り立てをするために海を渡って隣国入りして、エラの住んでいた町へ出向いた執事頭はそこであちらのメイド協会の人間と顔を合わせたそうだ。協会長の隣には意気消沈した若い女性の姿。彼女は周囲をごつい男に囲まれて監視されているエラを見るなりビンタをぶちかましたそうだ。
そう、その女性こそ本物のハンナ・コールだ。彼女は推薦状をもらえるほど認められるまでに必死に働いてきたのだ。それは彼女の努力の賜物。それを奪い取り、先方で迷惑をかけまくった身勝手な幼馴染のことが許せなかったのだろう。
それなのにエラは逆ギレしてハンナさんを殴り返した。最初から最後まで反省の色もなく、ハンナ・コールを小馬鹿にした態度を崩さなかったそうだ。その後エラの両親がやってきて平謝りしてきたそうだが、執事長は仕事を完遂すべくこれまで起きたことをずらりと箇条書きにした紙と請求書を提示して被害総額を一括で支払うように命じるとあちら側は血相変えて泡を食っていたとか。
激怒した両親に頬を張られたエラはギャーギャー騒いで耳障りだったと執事頭は後に語っていた。
嵌められた上に何もしていないのに解雇になるのは流石に本物のハンナ・コールが可哀想なので、その気があるならこちらで身元調査、面談・実技筆記試験をクリアした上で雇用を検討すると条件を出すと、本物のハンナさんは、前のめりになって頷いていたそうだ。
賃金がいいのか、エーゲシュトランド公国というネームバリューがいいのか、どうしてもここで働きたいのだという。その熱意に応えてチャンスを与えることにしたのだという。
後日、ハンナさんがエーゲシュトランドに来訪する機会があり、面談の場には私も同席した。公妃、そして女主人になった際には使用人の掌握も必要なのだとヴィックに言われた為である。まるで就職試験の場所で面接官をしているような心境であった。
メイド長に「リゼット様からなにか聞きたいことはありますか?」と話を向けられたので。私は難しい顔をしてそれらしく言った。
「ご自身の強みはなんですか? 具体的な経験例を交えて3分以内で答えてください」
「強み、ですか…えぇと私の強みは」
大学生が新卒試験で受けそうな質問を投げかけると、本物のハンナさんは緊張しながらも真面目に返してくれた。その回答は模範解答と言ってもいい。私は鷹揚に頷いてベテラン面接官のような反応を示したのである。
本物のハンナさんはメイド長が思わず手放しで褒めてしまうほど優秀なひとだったようで、実技試験筆記試験ともに優秀な成績を修めた。採用可否について私は口を挟む暇もなかった。
彼女が腹の中でどう思ってるかは分からないけど、スラム出身である私にも敬意を示してくれるし、上手に隠せるだけ十分である。
そんなわけで本日改めて新しくメイドのハンナ・コールさんが入職しました。
二人の世界に酔いしれていたはずの私はびしりと固まる。ロマンティックな雰囲気が一気にサスペンス風味になってしまったため、あんなに熱を持っていた身体が急速に冷えていくのがわかった。
そんな私と比べるとヴィックのほうが切り替えが早かった。彼は身体を起こしてぐるりと警戒した眼差しで周りを見渡すと……ある一角を見てぎょっとした顔をしていた。
「……なぜ君が私の寝室に入ってきているんだ、ハンナ・コール…」
その単語に私は布団から顔を出してヴィックの見ている方向へと視線を向けた。……本当だ。解雇決定したと聞かされていたハンナ・コールがヴィックの寝室に足を踏み入れている姿がそこにある。……なんでこの人深夜にヴィックの部屋に侵入してるの…? また窃盗でもしにきたのか?
一方の彼女と言えば、私とヴィックを見て、口をパクパクさせては顔を赤くしたり青くしたりなにやら狼狽えていた。……ていうかまた行為を第三者に見られた。なんなの、何が何でも婚前交渉は許しません的な呪いでもかかっているんだろうか。
彼女の絶叫で異変を察知したのだろう。部屋の外からはバタバタと複数の足跡が近づいてきた。その音に気づいたヴィックが私を腕の中に隠していた。
「何事ですか!?」
乱暴に開かれた扉の向こうには使用人達。中には寝間着姿の人もいた。やっとお休みの時間だったろうに急に悲鳴が響き渡って慌てて飛んできたのだろう。彼らは部屋にいるハンナ・コールを見て怪訝な顔をして、ベッドの上で不機嫌な顔をしているヴィックとその腕の中にいる私に気づいて気色ばんだ。
「まぁああ! リゼット様! お部屋を抜け出して何をなさっていますの!?」
案の定、怒髪天を衝いてしまったようである。メイドさんの悲鳴のような声に申し訳なくなりながら、私は言い訳じみた言葉を漏らす。
「だ、だってヴィックが大事な話があるって言うから」
私だって話を聞きに来ただけだったんだよ。ふたりきりでしか話せない内容なんだと思って、こっそり抜け出してきたんだ。
実際は私が夜這いしに行ったみたいな感じになっているけどね。
「そんなの、日中にでもすればよろしい! ヴィクトル様もヴィクトル様ですよ! いくらリゼット様を愛しく思われていたとしても、結婚前の男女が…!」
「責任は取ると言っている」
「そういう問題じゃありません!」
説教モードに入ったメイド長は男性使用人を一旦下げさせると、布団にくるまった全裸の私にネグリジェを着させた。ヴィックも渋々寝間着を着直している。
うぅ、また複数の人に見られた……なんだこの羞恥ならぬ周知プレイ……。
深夜に差し掛かるであろう時間だが、私とヴィックはメイド長によってくどくどと婚前の男女の距離感というものを指導された。
「そうは言うが、流石に一昔前の価値観だろう」
「おだまりなさい!」
うんざりした様子のヴィックが水を差すとメイド長が口から火を吐く勢いで怒鳴った。日中はヴィックのお怒りに青ざめていたメイド長が今ではまさにお母さんのようにヴィックを叱り飛ばしている。
……逆転しているじゃないか。この2人のパワーバランスが気になるところだが、私は身を縮めて彼女の説教を受け入れた。
□■□
しかしここでなぜハンナ・コールがヴィックの部屋にいたのかという疑惑が持ち上がる、疑惑も何も現行犯なのだが、あの場で執事頭に咎められた彼女は「夜這いしに来た」とぺろっと自供した。
だけどいざ部屋に入ってみれば、寝台の上で2人の男女の絡み合う生々しい姿を見て衝撃を受けて叫んでしまったのだという。刺激が強すぎたらしい。
ハンナ・コールという人物に関して不審な点を感じた執事頭が色々と調査してくれたそうだが、クレームついでに紹介状を書いたメイド協会に損害賠償請求したら新たな事実が判明した。
城で色々問題を起こしたこのハンナは偽物で、本名はエラというらしい。彼女は本物のハンナ・コールの幼馴染。本物は出発の前夜に睡眠薬で昏倒させられ、紹介状と身分証明証、移動用のチケットも奪われたのだそうだ。
手加減無しで薬を盛られた本物ハンナさんが目覚めたのは病院で、昏倒しているところを親御さんに発見されたとか。その時点で既に1週間以上経過した後だったらしい。退院してから慌ててメイド協会に駆けつけたが、身分証明書も紹介状も奪われた【ハンナ・コール】の身分証明とかその他の煩雑な手続きでなかなかエーゲシュトランド城の採用担当者と連絡が取れなかったのだという。
「色々不審な点があったので再調査しましたが……どんな理由があったにせよ身分詐称は褒められたことではありません」
変だな変だなと思ってたらそれが偽物だったとは誰が想像できるか。
こっちは写真なんてないから、別人の身分証明書を利用することも簡単みたいだもんね。偽物ハンナ・コールであるエラの取り調べに同席していた私は言葉も出なかった。本物のハンナさんは災難だったね…というしかあるまい。
悪いことをしたのは明白なのに、エラはブスくれていた。彼女は私が見ていると気づくと、こっちをギラリと睨みつけてきた。その眼光の鋭さに私はビクッとしてしまう。
「だってスラムの娘を妃にするって聞いたら興味わくに決まってるじゃない! 会ってみれば私のほうが美人だったから私が妃になってやろうと思ったのよ! …私はただの平民で終わる女じゃないんだから!」
そんな。原因が私だと言いたいのか。
この人は……言葉の端々から幼馴染のハンナさんを見下している風な言い方しているし、優秀なメイドだと認められたハンナさんに嫉妬して悔しくてそのポジションを奪ったってのもあるんじゃないかなぁ。お山の大将気取りなのだろうか。
「は…? なにを偉そうに。私のリゼットのほうが可愛らしいに決まっているだろう…」
エラの反論にわかりやすく反応したのはヴィックである。彼は私の肩を抱き寄せて鼻で笑っている。恥ずかしいからやめてほしい。ヴィックは恋で盲目状態だからそんなこと言えるんだ。
おい、思い出したかのようにちゅっちゅっとキスするな。みんなの前でされると恥ずかしいんだよ私は。ヴィックの口を手のひらで塞ぐと、今度は手のひらにキスし始めたし。
「なんなのよ! 私のほうが美人でしょうが!」
ヴィックには私しか見えないようだ。エラの存在を忘れて私を愛でる。それが彼女のプライドを傷つけたのだろうか。なんか顔を真っ赤にさせて憤慨しているようだったが、危害を加えるかもしれないってことで早々に強制送還させられていた。
その際、給料では相殺できなかった被害金額をエラの実家あてに被害請求することも忘れない。私の髪飾りの窃盗に破損もだけど、関係各所で色々やらかしていたようである。
しっかり損害金の取り立てをするために海を渡って隣国入りして、エラの住んでいた町へ出向いた執事頭はそこであちらのメイド協会の人間と顔を合わせたそうだ。協会長の隣には意気消沈した若い女性の姿。彼女は周囲をごつい男に囲まれて監視されているエラを見るなりビンタをぶちかましたそうだ。
そう、その女性こそ本物のハンナ・コールだ。彼女は推薦状をもらえるほど認められるまでに必死に働いてきたのだ。それは彼女の努力の賜物。それを奪い取り、先方で迷惑をかけまくった身勝手な幼馴染のことが許せなかったのだろう。
それなのにエラは逆ギレしてハンナさんを殴り返した。最初から最後まで反省の色もなく、ハンナ・コールを小馬鹿にした態度を崩さなかったそうだ。その後エラの両親がやってきて平謝りしてきたそうだが、執事長は仕事を完遂すべくこれまで起きたことをずらりと箇条書きにした紙と請求書を提示して被害総額を一括で支払うように命じるとあちら側は血相変えて泡を食っていたとか。
激怒した両親に頬を張られたエラはギャーギャー騒いで耳障りだったと執事頭は後に語っていた。
嵌められた上に何もしていないのに解雇になるのは流石に本物のハンナ・コールが可哀想なので、その気があるならこちらで身元調査、面談・実技筆記試験をクリアした上で雇用を検討すると条件を出すと、本物のハンナさんは、前のめりになって頷いていたそうだ。
賃金がいいのか、エーゲシュトランド公国というネームバリューがいいのか、どうしてもここで働きたいのだという。その熱意に応えてチャンスを与えることにしたのだという。
後日、ハンナさんがエーゲシュトランドに来訪する機会があり、面談の場には私も同席した。公妃、そして女主人になった際には使用人の掌握も必要なのだとヴィックに言われた為である。まるで就職試験の場所で面接官をしているような心境であった。
メイド長に「リゼット様からなにか聞きたいことはありますか?」と話を向けられたので。私は難しい顔をしてそれらしく言った。
「ご自身の強みはなんですか? 具体的な経験例を交えて3分以内で答えてください」
「強み、ですか…えぇと私の強みは」
大学生が新卒試験で受けそうな質問を投げかけると、本物のハンナさんは緊張しながらも真面目に返してくれた。その回答は模範解答と言ってもいい。私は鷹揚に頷いてベテラン面接官のような反応を示したのである。
本物のハンナさんはメイド長が思わず手放しで褒めてしまうほど優秀なひとだったようで、実技試験筆記試験ともに優秀な成績を修めた。採用可否について私は口を挟む暇もなかった。
彼女が腹の中でどう思ってるかは分からないけど、スラム出身である私にも敬意を示してくれるし、上手に隠せるだけ十分である。
そんなわけで本日改めて新しくメイドのハンナ・コールさんが入職しました。
21
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
朝日みらい
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
嫌われ女騎士は塩対応だった堅物騎士様と蜜愛中! 愚者の花道
Canaan
恋愛
旧題:愚者の花道
周囲からの風当たりは強いが、逞しく生きている平民あがりの女騎士ヘザー。ある時、とんでもない痴態を高慢エリート男ヒューイに目撃されてしまう。しかも、新しい配属先には自分の上官としてそのヒューイがいた……。
女子力低い残念ヒロインが、超感じ悪い堅物男の調子をだんだん狂わせていくお話。
※シリーズ「愚者たちの物語 その2」※
美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
悪役令嬢の生産ライフ
星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。
女神『はい、あなた、転生ね』
雪『へっ?』
これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。
雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』
無事に完結しました!
続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。
よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる