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戻った日常

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今日から庶民棟が再開される。

「んー!!学校、行こっか!セシール。」
「うん。アリーナ姉さん。」

私とセシルはこうして毎回互いの名前を呼びあってから登校する。万が一があっても呼び間違えないように。
  
こうして、いつもの通りの庶民棟が始まるのだ。




庶民棟

帰ってきて早速だが身だしなみチェックか。。

「ステラ様に誉められるよう頑張ろ!」
「う、うん。」

ステラ、お願いだから私のことをアリーナとして扱ってね。前までの圧力多めステラでお願いします!!

ガチャ。

「ごきげんよう。本日から学校が再開ですわ。気を引き閉めてくださいまし。ということで、本日も...」
「風紀委員クビっつたろ。なにしに来てんだよ。」

え?
カルム、今なんつった?

「おかしいですわ。なぜ私がクビに?きちんと仕事をやっていましたわ。これからもそのつもりでしたわよ!」
「はいはい。その確証がねぇからだろ。つか、あのバカクリス様を庶民棟の管理から外した方がいいんじゃねぇの?」
「腹黒陰険王子は確かに外すべきですがそうしたら私たちまで外れてしまいますわよ。それは困りますわ。ということで、いいですか?本日から私は風紀委員カルム・アンジェルの補佐として公平なチェックを行いますわ。」
「それ、5回唱えて誓えよ。」

カルムとステラのやり取りに他のみんなはポカンとしている。

「要するに、お二方からチェックを受けるということですね?」
「あぁ。そうだな。キールくんはそこのネクタイ。」
「曲がっていて少し不格好ですわ。縛り直してくださいまし。次、カナタ。髪が耳についてますわ。」
「すいません。」
「他は...特に違和感ありませんわね。とはいえ、アリーナ。少し、ポニーテールが曲がっていますわよ?」
「あ、はい!結び直します!」

よかった。いつもの厳しいステラだ...!!

「仕方ありませんわね。結んであげますわ。「ステラ様の手を使わせるのは申し訳ないと姉が言っております。」」
「お気に入りさんも困ってるし、帰るぞ。」
「はぁ。引っ付けなくて残念ですわ。。」
「まぁ、そう引っ付くなよ。じゃあ、またな。お気に入りさんとセシールくん。」

...これは、いつも通りじゃないかもしれない!!

「なんだあれ。ステラ様は風紀委員をクビでカルム様が新風紀委員。だけど、チェックは二人でって意味わかんねぇ。」
「ホントだよ。こういうときは情報通セシールの登場だぁ!」
「ねぇ、カナタそれ無茶ぶりだから!」
「やけにアリーナに向ける視線が優しかったがなにかあったのか?」
「ステラ様だんだんアリーナの何かに目覚めてるよね??」

何かに目覚めるって詳しく教えてよ!エミリ!

「この間の魔猫騒ぎの時少し仲良くなっただけだよ。そんなバカみたいに執着するほどじゃないだろうし。だとしたら、僕が止めるね。」
「貴族相手でもとどまることを知らないセシールのシスコン。悪くないねぇ。いつか、貴族に噛みつきそうだな。」
「そ、そんなことし、しないし。」

リクトの言葉に前科持ちセシルが明らかに動揺している。


そんな日常(?)を送りながら私たちは淡々と授業を受け、気付けば放課後になっていた。

『貴族棟より告ぐ。アリーナ・グラントは至急、貴族棟の第二生徒会室まで来なさい。』

「アリーナ姉さん。今日からの報告会はいつもの3倍の危機感で行くようにしてね。困ったことあったら電話するんだよ?必ず帰ってきてね。」
「シスコン過ぎてセシールがヤバイよ。頑張ってね、アリーナ。あと、ステラ様クビの案件!掘り下げてきてね!!」
「そんな激高難易度私には無理だよぉ。エミリ。。」

仕方ない。頑張ろう。




第二生徒会室前

コンコンコン。

「どうぞ。」
「失礼致します。」

今日も勝負が始まる。そう思った瞬間だった。

「ようこそ!こちらがアリーナの好きなお茶にお菓子ですわ。あと、今日のプレゼントです。」
「お気に入りさんのために俺からもお菓子を大量にあげる。セシールくんにも渡してやってくれ。」
「は、はい。ありがとうございます。ステラ様。カルム様。」

なんで二人がここにいるの...!?

「出てってくれませんかね?」
「嫌ですわ。」
「それはちょっと...」
「あ、クリス様。眼鏡とカラコンとゴム取りますか?」
「そういうときだけ積極的にならなくて大丈夫です。僕のしていたことがバレてしまうじゃないですか。」

そうクリス様は困ったようにため息をついた。

「クリス様、まさか変装を解かせていたのですか...?私がいないところでアリア様と二人っきりになって。」
「見張って、手を出したら告発すればいいんじゃね?一旦出ようぜ。ステラ。」
「僕の婚約者はなぜこうも人に愛されるのでしょうか。。」
「というか...最近お話ししていませんでしたが今日はあの話をしに来たんです。」
「その話ならお断りですよ。もう絶対放さない。そう言いましたよね?」

いつどこで。。
というか、言われ過ぎてどれのことかわかりませんよぉ!

「ですから、婚約破棄してください!!!!」

と、まぁまぁ大声で思いっきり言ってしまった。

「ステラ。カルム。一旦出てくれませんか?」
「ん?」
「わ、わかりましたわ~。外で待っていますわ。5分だけ。」 
「き、気を付けろよな?」

カルムはまだしも最強な精神力の持ち主ステラまで...!!

「僕の信頼の成果が出てよかったです。さて、アリア。婚約破棄になぜそんなこだわるのか聞きたいです。」
「ですから、クリス様にはもっと似合う女性がいますから。それに、私に王城の妃なんて向いていません。あと、私はずっとこのアリーナ・グラントも捨てたくありません。王族の婚約者が二人の人物になり済ましてる。良くないですよね?」

その言葉にクリス様は優しく微笑んだ。...ように見えた。

「今日は帰ります~。」

ヤバイ、黒い。
久々にクリス様が黒い。

「報告がまだですよー?」
「いつもしてないじゃないですか!っていうか、してないのになぜそんな完璧な報告書が書けるんですか!?」
「さぁ。そんなことより、弁解を始めましょうか。」
「べ、弁解?」
「僕はアリアじゃなきゃダメなんです。これも何度も言ってますよね。あと、アリアとアリーナ僕はどちらも愛しています。」
「な、なるほど。。」
「ですから、逃げようたって無駄ですよ?あなたの固定観念は僕の権力の前に太刀打ちもできませんから。だから、逃げないで。ずっと、僕の側に居てください。」

最後の方、クリス様は辛そうに手を握ってきた。
何度も言ってることなのになぜこうも毎度必死になって私を引き止めるのだろう。
私も私だよな。
こんな、こんな。

「おや?アリア、恥ずかしがってますね?では、僕にときめいたので今日も勝ちです。婚約破棄の話はなかったことにしましょう!」
「...うぅ。なにも言い返せない。」

胸がドキドキしてしまうなんて...!!

こんなの日常じゃない...!!
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