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涙の理由
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クリスside
僕が発信器を頼りにここへついたとき目の前の光景は衝撃的だった。
号泣するアリアにそれをなだめるリア様。呆れたような目のサクとこちらをずっと睨み付けてくるカナ様。
「それ以上アリアに触れないでください。」
そう僕は言った。が、しかし。
アリアはきっとこの人たちに泣かされたわけではない。
僕のどこかの勘がそう告げていた。
「なにか、ありましたか?アリア。」
だから、出来るだけ優しい口調で現状を把握することを優先した。
「うぅ。今は優しいのにい"い"い"!」
「これはあれですね。昔のクリス様がボロカスなことをアリア姉様が思い出したやつですね。」
「間違いありませんわ!クリス様、忘れてるかもしれませんがこの人たちに酷いことしたのではなくって?」
「ありそうだな。心当たりないんですか?」
「それが...」
「どうせ、クリス様は私たちのことなんて覚えてませんよね。あんなことしてもこれっぽっちも覚えていない。」
「カナ様の言う通りです~!クリス様元気ないとき酷かったですけどあんなことまでしてたなんて!もうあんな脅しが使えるなんて4歳の脳じゃないですよね。」
「4歳...!?」
4歳。あまり覚えていない。が、僕が一番権力に酔っていた時かもしれない。国王ならこうするって自己判断でいろいろやってしまっていた時期。
「そういえば、なにかがあって僕。初めて国王に怒られたんです。」
「そのなにか絶対重要です!クリス様がちゃんと思い出すまで私、帰りませんから。カナ様とリア様の味方しますから!」
それはとても困るなぁ。
「アリア様。」
「お姫様は優しすぎるんだよな本当に。」
カナ様の鋭い目を見ても思い出せない。なにがあったか。
「心がどれほど凍ってたかがわかりますわね。お父様に初めて怒られた時のことくらい覚えていてもおかしくありませんわ。」
「しかも、このような事件にまで発展する重大なことだぞ。」
「...クリス王子。下向いて悩んでるのよくないと思いますよ。周りを見てちゃんと思い出したらどうです?」
悩むだけだった僕にセシルがセシールの眼鏡を掛けてきた。
「気分を変えて。スッキリしましたね?アリア姉様帰ってこないと僕も帰れないからさ。」
「脳より見ることが大切だと思いますよ。そのまま記憶をたどる。」
「思い出したくないとか関係ありませんわ。深く、思い出してくださいまし。」
カナとリアは仲良しだ。爵位が違うのにこんな計画を一緒に立てるなんて。
『私はそんなこと考えない。少し反省しなさい。クリス。法律を破ったからといってその場でとる措置ではない。』
『申し訳ございません。国王。』
『なぁ、クリス。お前はいつからそんなに冷たくなってしまったんだ?私のせいか?』
『いえ、僕の自己判断です。国王。』
『父としてお前に言うがいつか幸せになれる人がいたら必ず報告しろ。クリスがそれで幸せならどんな身分の人でも構わないよ。』
『わかりました。国王。』
怒られた内容は一語一句でてくる。
あ、そうだ。
全部思い出した。
「隠し子。」
「クリス様...!」
その言葉にリア様が肩を震わせる。
「僕が昔、隠し子を追放するか爵位を剥奪するか選ばせた家がありました。それがカナ様の家。そうですよね?」
「はい。そのせいで私とリアは引き裂かれたんです。」
「その件については申し訳ありませんでした。」
「本当にそう思ってますか?」
そう呟いたのはアリアだった。
「はい、もちろんですよ。」
「なら、私とどうにかしましょう!」
「どうにかって...?」
「なにをすればいいのかはわかりませんがどうにかしてリア様を元に戻すんです。伯爵としてカナ様と同じ立場に。」
「アリア様。。」
「リア、その人を信じるの?あなたを切り捨てるよう指示した人なのに。」
「大丈夫だよ。カナ。今のクリス様はきっとあの頃とは違う。こうして謝ってもくれた。」
「リア。。私はあなたがいなくて辛かったんだから...!!」
「だから、私に任せてください!クリス様が大変なことをしちゃっていたのならそれを抱えるのは婚約者として当然のことですからね。」
「アリア...!わかりました。改めて、その頃のことを謝罪します。そして、今から国王に掛け合ってきますね。」
「クリス様の今の気持ちを伝えればきっと届きます!だから、カナ様、リア様、サクさん。私たちを信じて後少し待っててくれますか?」
アリアはそう微笑んだ。
その笑顔はどんな憎悪も丸め込んでしまうような頼りがいのある笑顔で。
僕なんかよりよっぽど強い、愛しい笑顔だった。
「お願い致します。アリア様。」
「拐ってしまったこと、魔猫を放ったこと深く謝罪致します。カナと同じ立場に戻れたらどんな罰を受けても構いません。」
そう、カナ様とリア様はアリアに深く礼をした。
「これ、リア様への約束の印です!」
アリアはアリーナの眼鏡とゴムをほどき、リア様に持たせる。
「ほら、セシールも!仮面を剥ぐの!」
「僕?いや、いくらなんでもウィッグは気味が悪いよ?」
「約束の印になればいいから!ね?」
「...わかったよ。これなきゃ僕ら帰れないってことでしょ?」
そういって先程僕に掛けた眼鏡とウィッグを取った。
「これはカナ様に。触んなくていいですからね。」
「よし!じゃあ、行くよ!」
アリアはそうまた笑った。
「庶民の仮面を剥がすっていう建前の願いまで叶っちゃったね。」
「だね、カナ。本当に凄いなぁ。アリア様は。。」
本当にアリアは凄い。どんな人でも優しく包み込んでくれるから。僕みたいな人でも優しく守ってくれる。
「守るだなんていいながら守ってもらってるのは僕ですね。」
誰にも聞こえないように僕は呟いた。
そして、僕は過去の断罪のため、王城へと向かっていった。
僕が発信器を頼りにここへついたとき目の前の光景は衝撃的だった。
号泣するアリアにそれをなだめるリア様。呆れたような目のサクとこちらをずっと睨み付けてくるカナ様。
「それ以上アリアに触れないでください。」
そう僕は言った。が、しかし。
アリアはきっとこの人たちに泣かされたわけではない。
僕のどこかの勘がそう告げていた。
「なにか、ありましたか?アリア。」
だから、出来るだけ優しい口調で現状を把握することを優先した。
「うぅ。今は優しいのにい"い"い"!」
「これはあれですね。昔のクリス様がボロカスなことをアリア姉様が思い出したやつですね。」
「間違いありませんわ!クリス様、忘れてるかもしれませんがこの人たちに酷いことしたのではなくって?」
「ありそうだな。心当たりないんですか?」
「それが...」
「どうせ、クリス様は私たちのことなんて覚えてませんよね。あんなことしてもこれっぽっちも覚えていない。」
「カナ様の言う通りです~!クリス様元気ないとき酷かったですけどあんなことまでしてたなんて!もうあんな脅しが使えるなんて4歳の脳じゃないですよね。」
「4歳...!?」
4歳。あまり覚えていない。が、僕が一番権力に酔っていた時かもしれない。国王ならこうするって自己判断でいろいろやってしまっていた時期。
「そういえば、なにかがあって僕。初めて国王に怒られたんです。」
「そのなにか絶対重要です!クリス様がちゃんと思い出すまで私、帰りませんから。カナ様とリア様の味方しますから!」
それはとても困るなぁ。
「アリア様。」
「お姫様は優しすぎるんだよな本当に。」
カナ様の鋭い目を見ても思い出せない。なにがあったか。
「心がどれほど凍ってたかがわかりますわね。お父様に初めて怒られた時のことくらい覚えていてもおかしくありませんわ。」
「しかも、このような事件にまで発展する重大なことだぞ。」
「...クリス王子。下向いて悩んでるのよくないと思いますよ。周りを見てちゃんと思い出したらどうです?」
悩むだけだった僕にセシルがセシールの眼鏡を掛けてきた。
「気分を変えて。スッキリしましたね?アリア姉様帰ってこないと僕も帰れないからさ。」
「脳より見ることが大切だと思いますよ。そのまま記憶をたどる。」
「思い出したくないとか関係ありませんわ。深く、思い出してくださいまし。」
カナとリアは仲良しだ。爵位が違うのにこんな計画を一緒に立てるなんて。
『私はそんなこと考えない。少し反省しなさい。クリス。法律を破ったからといってその場でとる措置ではない。』
『申し訳ございません。国王。』
『なぁ、クリス。お前はいつからそんなに冷たくなってしまったんだ?私のせいか?』
『いえ、僕の自己判断です。国王。』
『父としてお前に言うがいつか幸せになれる人がいたら必ず報告しろ。クリスがそれで幸せならどんな身分の人でも構わないよ。』
『わかりました。国王。』
怒られた内容は一語一句でてくる。
あ、そうだ。
全部思い出した。
「隠し子。」
「クリス様...!」
その言葉にリア様が肩を震わせる。
「僕が昔、隠し子を追放するか爵位を剥奪するか選ばせた家がありました。それがカナ様の家。そうですよね?」
「はい。そのせいで私とリアは引き裂かれたんです。」
「その件については申し訳ありませんでした。」
「本当にそう思ってますか?」
そう呟いたのはアリアだった。
「はい、もちろんですよ。」
「なら、私とどうにかしましょう!」
「どうにかって...?」
「なにをすればいいのかはわかりませんがどうにかしてリア様を元に戻すんです。伯爵としてカナ様と同じ立場に。」
「アリア様。。」
「リア、その人を信じるの?あなたを切り捨てるよう指示した人なのに。」
「大丈夫だよ。カナ。今のクリス様はきっとあの頃とは違う。こうして謝ってもくれた。」
「リア。。私はあなたがいなくて辛かったんだから...!!」
「だから、私に任せてください!クリス様が大変なことをしちゃっていたのならそれを抱えるのは婚約者として当然のことですからね。」
「アリア...!わかりました。改めて、その頃のことを謝罪します。そして、今から国王に掛け合ってきますね。」
「クリス様の今の気持ちを伝えればきっと届きます!だから、カナ様、リア様、サクさん。私たちを信じて後少し待っててくれますか?」
アリアはそう微笑んだ。
その笑顔はどんな憎悪も丸め込んでしまうような頼りがいのある笑顔で。
僕なんかよりよっぽど強い、愛しい笑顔だった。
「お願い致します。アリア様。」
「拐ってしまったこと、魔猫を放ったこと深く謝罪致します。カナと同じ立場に戻れたらどんな罰を受けても構いません。」
そう、カナ様とリア様はアリアに深く礼をした。
「これ、リア様への約束の印です!」
アリアはアリーナの眼鏡とゴムをほどき、リア様に持たせる。
「ほら、セシールも!仮面を剥ぐの!」
「僕?いや、いくらなんでもウィッグは気味が悪いよ?」
「約束の印になればいいから!ね?」
「...わかったよ。これなきゃ僕ら帰れないってことでしょ?」
そういって先程僕に掛けた眼鏡とウィッグを取った。
「これはカナ様に。触んなくていいですからね。」
「よし!じゃあ、行くよ!」
アリアはそうまた笑った。
「庶民の仮面を剥がすっていう建前の願いまで叶っちゃったね。」
「だね、カナ。本当に凄いなぁ。アリア様は。。」
本当にアリアは凄い。どんな人でも優しく包み込んでくれるから。僕みたいな人でも優しく守ってくれる。
「守るだなんていいながら守ってもらってるのは僕ですね。」
誰にも聞こえないように僕は呟いた。
そして、僕は過去の断罪のため、王城へと向かっていった。
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