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【 第5章 ”彼”の怒りを鎮める方法 】
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しおりを挟むそもそも、イヴァンがここまでリーリエに執着するのは、1年ほど前に行われた交流会にたまたまやって来ていたリーリエに一目惚れしてからだった。
基本的に、武力で成り上がったイヴァンを周辺国の者たちは良く思っていない。先王を反逆の後に殺し、晒し上げて手に入れた今の皇帝の座。そのせいか、交流会ではイヴァンの傍にやってくる人物はいなかった。
それでも良かったのだ、イヴァンが今日ここにきたのはうまい酒と肉を喰らい、なにか因縁を付けてきた国があるのであれば火種を作って好きに暴れることが出来るからだ。ちょうど部下の兵士たちも、国を手に入れた後は暇している。刺激的な日々を手に入れるためになにかきっかけが欲しい、それがイヴァンの考えだった。
「お酒が好きなの?」
そんな中、怖いもの知らずなのか、イヴァンに話しかけにくる令嬢がいた。
最初は無視して過ごしていたイヴァンだったが、彼女は怯えもせずに隣に座り、なぜか同じだけの酒を飲んでくる。酒豪なのだろうか?イヴァンも相当な酒を飲んでいるのにも関わらず、彼女は同じだけ飲んでも顔色を変えることはなく、時々イヴァンのグラスが空になると新たに酒を注いできた。
今まで、そんな女はいなかった。イヴァンに近づいてくるのは大抵猫なで声をあげる女ばかりで、基本的には金や権力が目当てな女であり、寝所に連れていきその後満足したのであれば女の望みを叶えてやるし、粗相をしたならその場で殺してしまうのが普通だった。
だがしかし、この女はどうしてこんなにも静かにただ座って酒を飲んでいるのだろう?
時折、目が合うと微笑み返してくるが、基本的には酒を飲んでのんびりと人々の動きを目で追って過ごしているばかりである。隣に座って何もしてこない女は、彼女が初めてだった。
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