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【 第4章 毒の雨が降る国で 】

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「任務が終わったのか?」
「あぁ、厄介な野生動物たちがいたが、目的の女の家には火を付けられたよ。家探しした際に女の姿が見えなかったのが気になるが、まぁ、あの焦げた家の中じゃ、別の女の死体を置いていても気づかないだろうよ」
「はは。それじゃ、任務完了か」

そんな門番と兵士たちとの会話に少しだけ嫌な予感がするジャスミン。少し前に夢の中に現れた隣国の神であるレーニャ様は、ジャスミンの小屋が火の海になると話していなかっただろうか。

ジャスミンはハッとして、自分の顔を隠すようにフードを被る。幸い、ジャスミンの容姿は目立ったものではなく、髪色や瞳の色もザハール国ではよく見る色のはずだ。…もし、先ほど本当の名前を名乗っていたら?ジャスミンの背中に冷や汗が流れるのだった。


「あぁ、それにしても欲しい女のために本当に狂っているよな、うちの皇帝は。この後は戦争になるんだろ?それなのに国内がこれじゃ、なぁ…。俺たちも帰りたくなかったぜ」
「まぁ、軍部には幸い治療薬があるみたいだし、毒に倒れても軍の家族であれば薬を無償でもらえる。問題は、何の力も持たない平民たちだ」
「まったくだ。…よし、書類に記入終わったぞ。通っていいか?」
「いいぞ、今門を開けてやる」

そう言って門番が離れた頃、さっきまで話をしていた男がジャスミンの存在に気付いたようだった。


「ん?お前…この国に入るつもりなのか?今は辞めとけよ、この国じゃ力を持たない奴から死んでいくだけだ」
「はい、…忠告ありがとうございます」

フードを深くかぶったまま、そう返事をするジャスミン。しかし、そんな様子を不審に思っていたのか、男はぐいっと近づいてきてジャスミンのフードを取る。


「若い女だな。お前、名前は?」
「…あ、あの…この国に恋人がいて…どうしても中に入りたくて」

このままじゃ、怪しまれて素性がバレてもおかしくない。そう考えたジャスミンは賭けにでることにした。疑われる前に、こちらから先に手を打てばいい。ジャスミンは自分の胸元から以前ティモンが譲ってくれたロザリオを取り出す。そこにはいくつかの宝石が煌めいており、売ると相当な額になるはずだった。

ジャスミンは後ろに控える他の兵士たちには聞こえないように、話しかけてきた男に近づいて小さな声で語りかけた。


「これをお譲りしますので、どうか手を貸してはくれませんか?」
「ふぅん」

そう言った男はジャスミンの体をぐっと引き寄せた後、胸元のロザリオをジャスミンの服の中に戻すようにしながらわざとらしく胸に触れてくる。


「まぁ、色々と支払ってもらえるなら、俺は構わないけどね」
「え、あ…ちが…」
「暴れるんじゃねぇぞ」

男はいつの間にかナイフを取り出しており、ジャスミンの体を掴むようにして馬に乗る。その際、門番の男と目が合ったが、兵士の行動を咎めることはなかった。


「下ろしてください!」
「はは、女の1人旅ってことはお前もワケありなんだろう?ここらで一度、痛い目を見た方が勉強になるってわけだ」

すると、ジャスミンと男のやりとりを聞いていたのか、後ろの兵士たちも嬉しそうに声をかけてくる。


「はは、隊長1人で楽しまないでくださいね」
「あぁいいぞ、俺が満足したらお前らにも回してやるからな」

そんな会話にショックを受けるジャスミンだったが、逃げようとしても力では勝てず、どうすることも出来ないまま運ばれてしまう。そのうち、動き回るジャスミンを厄介に思ったのか強く腹を殴られ、ジャスミンはそのまま気絶してしまったのだった。


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