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◆ 第6章
33. 堅物秘書が社長で上司の夫に恋するまで
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支倉建設本社ビルの一階には、コンビニエンスストアの隣に社員が利用しやすいカフェが併設されている。こちらもコンビニエンスストアと同じく通りに面した外の入り口からも入店できるが、会社のエントランスからも直接入店できるため、一日を通して社員の利用客が多い。
しかし今日はランチタイムにも関わらず珍しく空いていたので、七海は仲良しの同期二人とカフェで昼食をとることになった。
「七海ちゃん。もしかして妊娠してる……?」
「えっ? う、っ……ごほ、げほっ……!」
ボックス席の向かいに座ったほのかが衝撃的な問いかけをしてきたので、思わず盛大にむせ込む。手のひらで胸をトントンと叩いて飲み込みかけていたパスタを喉の奥に落とすと、小百合が差し出してくれたグラスの水を一気に飲み干した。
「だっていつもより食べるのゆっくりだし、元気ないんだもん」
動揺が落ち着くのを待ってからそう告げてくるほのかに、ナフキンで口元を拭いながら反対の手を左右に振る。それは完全に、彼女の勘違いである。
「ち、違うってば……。ただちょっと、食欲がないだけ」
「産婦人科、紹介しようか?」
「だから違うってばぁ」
ほのかだけではなく既に妊娠と出産を経験している小百合にまでいじられ、つい大きめの声をあげてしまう。そんな七海の様子を見たほのかと小百合が「嘘うそ、冗談だって」「からかってごめんね」と謝罪してきた。
「社長の溺愛ぶり見てたから、もしかして! と思ったんだけどなぁ」
「そんなにすごいの? 支倉社長」
「すごいよ~。結婚した直後よりは落ち着いたけど、それでも七海ちゃん大好き! 目の中に入れても痛くないぐらい可愛い! って全身で主張してる感じがする」
「あらぁ、職場でいちゃついてるのね」
「いちゃついてません」
「だからてっきり、おめでたかなのかと」
「違います。三日前までちゃんとアレだったもの」
「なんだ、残念」
七海の否定の言葉に、小百合がつまらなさそうな声で、けれど表情はやけに楽しそうにそう呟く。七海をからかってくるのはその隣に座るほのかも同じで、会話が止まるとニコニコと笑顔を浮かべた彼女もじっと七海の顔を覗き込んできた。
「赤ちゃんじゃないなら、なんでそんなに元気ないのー?」
「別に元気がないわけじゃないんだけど……」
元気がないつもりはない。友人たちとのランチや会話も、仕事に対する意識も、家に帰ってからの将斗とのやりとりも、普段通りにしているつもり。七海としては、ちゃんとしているつもりなのだ。気持ちの上では。
だが他人から見るとあまり元気がないように見えることにも、薄々感づいている。もちろんどこかに怪我をしたり、病気になったり、具合が悪いということではない。
ただ戸惑っている。――悩んでいるのだ。
将斗に告げられた『恋心』と『愛情』と『決意』。偽りだと思っていたものが実はすべて本当だったという偽装溺愛婚の真実。いつまでも待つ、いつになっても構わないから、自分の想いを受け入れてほしいという将斗の願い。
――それを知った七海の心の中に生まれた感情。どう表現していいのかわからない、困惑と悩みの種。
その種が自分の知らない間に芽を出し、根を張り、茎と葉を伸ばし、七海の胸の中でどんどん大きく成長している。不安と困惑が、複雑に入り組んだ樹海のように七海の心を支配している。
この感情をどうすればいいのか――受け入れればいいのか、切り落とせばいいのか、上手く判断ができずここ最近ずっと悩んでいる。
小さな種から芽吹いた悩みがこんなにも急激に成長したのは、すべて将斗のせいだった。彼の明るい笑顔と優しい声が太陽のように七海に降り注ぎ、彼の淫らな指先が七海の心と身体を濡らしていく。光と水を得て膨らんだ戸惑いの芽はあっという間に成長し、もう軽い気持ちで摘み取れるような大きさではなくなっている。
「ほのかと小百合は、上司を好きになったことある?」
そんな感情を持て余す七海だが、きっと一人で悩んでいても迷宮の中を彷徨うだけ。だから親しい友人たちに、この樹海を抜け出る方法を尋ねてみる。
「あるわけないでしょ。私、大学のときから付き合ってる人と社会人一年目で結婚したのよ。上司と恋愛してたら大問題だわ」
「そ、そういえばそうだね……。小百合はないか」
小百合は就職して一年目のときに以前から交際していた男性と授かり結婚し、現在はフルタイムで働きながら仕事と二児の子育てを両立している。小百合のパワフルな姿にいつも元気をもらっている七海だが、今回に関しては七海の参考にはならなかった。
「私もないかなぁ。っていうか、社内恋愛がだめかもしれない」
「へえ、そーなんだ? 意外」
「誰かに見られてるかも、って思ったら気になって仕事にも恋愛にも集中できないもん。完全に分けたいと思っちゃう」
ほのかの台詞に七海だけではなく小百合も「なるほど」と納得する。
どちらかというと惚れっぽくて恋愛をしていないと生きていけないタイプのように見えるほのかだが、ゆるふわ系の見た目に反して、考え方は意外にも堅実で現実的だ。仕事とプライベートを分離することでメリハリをつけているらしい彼女の回答も、残念ながら今の七海の道しるべにはならない。
「七海ちゃんは難しいよね。家でも仕事でもずーっと一緒だもん」
「……うん」
そうなのだ。察しのいいほのかと小百合にはすべてお見通しらしいので素直に頷いて、自分の悩みの種が将斗との関係であると白状する。
それから最近ゆっくりと話せていなかった二人にここ数か月の出来事をかいつまんで説明すると、二人が呆れような表情で七海を凝視してきた。
「七海ちゃんは、支倉社長を好きになるのが嫌?」
ふと尋ねられたほのかの的確な問いかけに、身体がギクリと飛び跳ねる。一瞬、言葉も失った。
「……嫌、ってわけじゃない……と思うんだけど」
「けど?」
「わからない、の……ずっと『上司』だったから」
胸の中にあるモヤモヤを少しずつ言葉として紡いでいく。
将斗に嘘や偽りではなく本心で『好きだ』と伝えられ、『離婚するつもりはない』『俺を好きになってほしい』と言われた。
もちろんその気持ちは嬉しい。だが自分が感じている正直な気持ちを言葉にすると『嬉しい、私も』でも『ごめんなさい、嫌です』でもない。七海の感情を正確に表現するならば『わからない』が最も正解に近い。
「相手は社長で御曹司だし、秘書の仕事もそれなりに忙しいし、社長本人も手がかかるし。でも尊敬してるところもあって、すごいなって憧れる瞬間もあって……。結局、私の中での社長は『上司』だったから……どうしていいのか、分からないの」
将斗のことが嫌いなわけではない。むしろ人としては尊敬している。
だが恋愛感情を持ったことはなく、親でも兄弟でもないがごく近しい身内のような存在だと認識していた。けれど住む世界が決定的に違う人であることも理解している。
「特別な感情を持てるような人じゃ……私が好きになっていい相手じゃなかったの。だから今まで、あんまり深く考えたことなくて」
「結婚までしたのに?」
「そうだけど……でもそれはあくまで『契約』の結婚で」
もちろん支倉建設の社長を相手に親しみ全開で身内面するつもりはなかった。だが結婚しても、身体を繋げても、彼の両親に歓迎されても、周りが自分たちを夫婦だと認めても、七海の中には常に『契約』の二文字が横たわり、一年後の『先』があるとは全く思っていなかった。いつか終わりがあるものだとばかり思っていたのだ。
そんな七海の内心を聞いたほのかと小百合が、二人揃って微笑ましさと苦笑いを織り交ぜたような笑みを浮かべた。
「七海はそう思ってたんだ。でもさ、そんなわけないじゃない?」
「あんなに好き好きアピールしてるのに気づかないって、逆にすごいよね」
「だって本当に『アピール』だと思ってたんだもん……!」
二人は「そんな馬鹿な~」と笑うが、七海は本当に『愛妻アピール』だと思っていた。契約書を交わしたわけではないが、最初に取り決めた約束が『そう』だったのだから、途中から事実だと言われてもすぐには受け入れられない。蓋を開ければ『最初から真実だった』と言われ、なおさら混乱するばかりだ。
「佐久係長のときにはなかった悩みだねぇ」
店員が食後のお皿を下げてくれた後のテーブルに突っ伏していると、ほのかがくすくすと笑い出した。
一年前までは普通に交際していたはずなのにやけに懐かしい名前を出された気がして顔だけ上げると、ほのかが満面の笑みを浮かべていた。なぜか彼女も、隣で頬杖をついて七海を眺める小百合も、嬉しそうだ。
「でもなんか、佐久係長のときより『恋する乙女』って感じするよ?」
「確かにねぇ」
「そう……?」
「うん。いっぱい悩んで、いっぱい考えて……でもゆっくり少しずつ支倉社長に恋していってる感じがして、佐久係長と付き合ってたときより自然だと思うんだ」
ほのかの唇が紡いだ『自然』というワードに反応して身体を起こすと、顔を見合わせた二人が「ねー」と楽しそうに笑い出した。まったくタイプが違う二人だが、意外と波長が合うらしい。それはもちろん、七海にも言えることだけれど。
どうやら二人は、七海がここ最近ずっと悩んでようやく導き出した『もしかしたら自分も将斗を好きなのかもしれない』という答えに、とうの昔に辿り着いていたらしい。
七海としては二人に『上司を好きになったことある?』と問いかけるだけでも違和感を覚えるような感情だったが、二人はその気持ちを大事にして、まだまだ悩んで考えろという。
種が芽吹いて生まれた感情を大切に育ててみたらいい、と――むくむくと増え続ける『恋心』と向き合っている今の七海の姿の方が、以前よりもずっと自然だと言うのだ。
「それに最近の七海ちゃん、ちょっと色っぽいもんね」
「ど、どこが……?」
「全体的に。表情とか、身体とか、メイクとか?」
「え……メイクは変わってないけど?」
「あ、そうだ。七海にいいものあげるよ。ほのかにも」
まだまだ七海をからかいたがったほのかだが、そこで小百合が話題を切り替えてくれた。カフェテーブルの下に置いたバスケットからバッグを取り出した小百合が、中に入っていた二つの紙袋を七海とほのかに一つずつ渡してくれる。
「お姉さんの新商品?」
「そう」
綾川小百合は一番上の姉が化粧品やメイク用品を製造・販売する会社に勤め、真ん中の姉はファッションやインテリア雑誌を扱う出版社で編集の仕事をしているという美人三姉妹の末っ子だ。
流行に敏感な真ん中の姉が、上の姉が勤める会社の新商品の情報を知りたがる流れから、小百合の元にもよく新商品のデモ製品が回ってくるらしい。
しかし新商品の色違いを全種類与えられても困るらしく、こうして余った商品や試供品を七海とほのかにも分け与えてくれる。お金を払うと言っても「要らないわよ」と返されるのでありがたく頂戴している二人だが、紙袋の中身を見た七海は少しだけ驚いてしまった。
(キスしたくなるつやぷる唇に……)
今回の新商品はリップスティックだった。買うと数千円はする人気シリーズの最新作は、水分と保湿成分が多く含まれていることから、塗れば唇がつやつやでぷるぷるになるらしい。秋冬には丁度良さそうなので、色さえ肌に合えば使い勝手がいいかもしれない。
「わー! ありがと小百合ちゃん! 実はリップ忘れちゃって、午後からどうしようか困ってたんだ~」
「そう? じゃあ丁度よかった」
パッケージのプラスチックケースからぱこっと中身を外しているほのかの向かいで、『そのうち使ってみよう』と考えながら自分のバッグへしまおうとする。
が、その動きを斜め向かいから伸びてきた小百合の手にガッと掴まれ、阻止される。
え、なに……? と驚いて顔を上げてみると、ほのかと小百合が極悪人のような悪い笑みを浮かべていた。
さっき言っていた『自然で』は、どこへ行ったというの。
* * *
「社長、こちら下げてもよろしいですか?」
午後の業務開始と同時に社長室へ入室して、彼の食事の後片付けをする。
「ああ、悪いな。食いっぱなしにして」
「いいえ。こちらこそ、確認を怠ってしまい申し訳ございませんでした」
「悪いのは向こうの秘書だろ。柏木は悪くない」
いつもは社員と同じ社員食堂を使うか、会社の周辺に自ら足を運んで好きなものを食べることが多い将斗だが、今日は珍しくお弁当だった。
とはいえそれでも一食数千円はする高級弁当なのだが、今日のランチの時間に出来たての食事ができなかったのは半分七海のせいである。
将斗が今日、社長室でひとり高級弁当を食べる羽目になったのは、取引先の役員秘書が接待の日時を盛大に間違えたためだ。
本来であれば昨晩、支倉建設本社にほど近い料亭で酒と食事を楽しみつつ、懇親会を催す予定だった。しかし先方の秘書がその日時を今日だと勘違いしたせいで、昨晩の約束を思いきりすっぽかされたのである。
予定は一旦白紙に戻すことになったが、今日の昼休みの直前になって突然、例の秘書が『お詫びの品だ』と言って約束の料亭の高級弁当を持って来社してきた。しかも昨日は七海も同席する予定だったのに、持ってきた詫びの高級弁当はなぜか将斗の分だけだった。
もちろん追加を要求するつもりはないし、七海も将斗も怒ってはいない。ただ心配になるほどそそっかしい秘書だとは思う。無論もらった弁当を捨てる訳にもいかないので、結局、将斗が一人社長室で食べることになったのだが。
「柏木」
「はい?」
使い捨てなのにやけに立派な弁当箱を片付けていると、プレジデントチェアの背もたれから背中を浮かせて立ち上がった将斗が、そのまま七海の傍へ近づいてきた。名前を呼ばれたので返答しながら顔を上げると、すぐ傍に将斗の顔があると気がつく。
思わずびくっと身体が跳ねて硬直する。つい先ほどまで上司である将斗を好きだのなんだのと友人たちと会話していたせいか、変に動揺して緊張してしまう。
七海の内心を知ってか知らずか、至近距離で目が合った将斗が不思議そうに首を傾げた。
「どうした?」
「え……?」
「午前より可愛くなってる」
社長であり上司であり夫である将斗から不意打ちで褒められ、七海の身体が一層固まる。
サバンナのど真ん中でライオンと遭遇してしまった草食動物の気分だ。目が合っただけなのに、瞬間的に『あ、これはだめなやつだ』と直感する。
「ああ、唇だな。いつもより色もツヤもいい」
将斗が七海の頬を大きな手で包み込み、親指の腹で唇をゆっくりと撫で始める。それが獲物を品定めする猛獣のようにも、七海を口説いて可愛がろうとする溺愛夫のようにも見えて、ただただ混乱する。
(な、なんで気づくの……!?)
不思議で仕方がない。どうして将斗は、七海の変化に敏感に気がつくのだろう。小百合にもらったリップはそこまで色は濃くないし、うるうるつやつやと言っても油を塗りたくっているわけではないのに。
普通なら気にも留めないか、気づいてもリップクリームを塗り直したのだろうと思う程度の微々たる変化なのに、七海の変化を敏感に察知して完全に把握してしまう将斗を『すごい』を通り越して『こわい』とすら思ってしまう。
「急に色っぽくなるのは止めてくれ。仕事に集中できないだろ」
「!」
そう呟いたかと思うと、伸びてきてた手に後頭部を支えられてそっと唇を重ねられる。しかも突然の口づけはただの触れ合いではなく、唇の上をぺろっと舐められるという恥ずかしすぎるキスだ。
職場で、しかも仕事中にキスをされたことなど今まで一度もなく、動揺のあまり咄嗟に身体を縮こめて将斗を回避してしまう。しゃがみ込んで下に逃げたので将斗の手からは逃れられたが、驚きと焦りのあまり防御姿勢から立ち上がれない。
身体が熱くなっている。驚きと恥ずかしさから顔を上げられない。
「今はこれだけにしとく。続きは家に帰ってからのお楽しみだな」
「し、しませんっ……!」
動揺で声が震えると、将斗の大きな手が七海の頭をぽんぽんと撫でる。その触れ合いにおそるおそる顔を上げてみると、舌の先を出した将斗がにやりと不敵な笑みを浮かべていた。
「最近の七海はどんどん可愛くなるから、全然安心できないな。また誰かに盗られるんじゃないかと思うと、秘書室に戻すのも気が引ける」
「……っ」
七海をからかう意地悪な笑顔を見て、突然のキスがせっかく塗ったリップを舐め取るためのものだと気がついた。七海としては大きな変化ではないと思うのに、そうまでして七海が『キスしたくなる唇』になるのを止めたいらしい。
――将斗の独占欲と愛情表現は、妻を恋の奈落に突き落とす凶暴な罠のようにしか思えない。
しかし今日はランチタイムにも関わらず珍しく空いていたので、七海は仲良しの同期二人とカフェで昼食をとることになった。
「七海ちゃん。もしかして妊娠してる……?」
「えっ? う、っ……ごほ、げほっ……!」
ボックス席の向かいに座ったほのかが衝撃的な問いかけをしてきたので、思わず盛大にむせ込む。手のひらで胸をトントンと叩いて飲み込みかけていたパスタを喉の奥に落とすと、小百合が差し出してくれたグラスの水を一気に飲み干した。
「だっていつもより食べるのゆっくりだし、元気ないんだもん」
動揺が落ち着くのを待ってからそう告げてくるほのかに、ナフキンで口元を拭いながら反対の手を左右に振る。それは完全に、彼女の勘違いである。
「ち、違うってば……。ただちょっと、食欲がないだけ」
「産婦人科、紹介しようか?」
「だから違うってばぁ」
ほのかだけではなく既に妊娠と出産を経験している小百合にまでいじられ、つい大きめの声をあげてしまう。そんな七海の様子を見たほのかと小百合が「嘘うそ、冗談だって」「からかってごめんね」と謝罪してきた。
「社長の溺愛ぶり見てたから、もしかして! と思ったんだけどなぁ」
「そんなにすごいの? 支倉社長」
「すごいよ~。結婚した直後よりは落ち着いたけど、それでも七海ちゃん大好き! 目の中に入れても痛くないぐらい可愛い! って全身で主張してる感じがする」
「あらぁ、職場でいちゃついてるのね」
「いちゃついてません」
「だからてっきり、おめでたかなのかと」
「違います。三日前までちゃんとアレだったもの」
「なんだ、残念」
七海の否定の言葉に、小百合がつまらなさそうな声で、けれど表情はやけに楽しそうにそう呟く。七海をからかってくるのはその隣に座るほのかも同じで、会話が止まるとニコニコと笑顔を浮かべた彼女もじっと七海の顔を覗き込んできた。
「赤ちゃんじゃないなら、なんでそんなに元気ないのー?」
「別に元気がないわけじゃないんだけど……」
元気がないつもりはない。友人たちとのランチや会話も、仕事に対する意識も、家に帰ってからの将斗とのやりとりも、普段通りにしているつもり。七海としては、ちゃんとしているつもりなのだ。気持ちの上では。
だが他人から見るとあまり元気がないように見えることにも、薄々感づいている。もちろんどこかに怪我をしたり、病気になったり、具合が悪いということではない。
ただ戸惑っている。――悩んでいるのだ。
将斗に告げられた『恋心』と『愛情』と『決意』。偽りだと思っていたものが実はすべて本当だったという偽装溺愛婚の真実。いつまでも待つ、いつになっても構わないから、自分の想いを受け入れてほしいという将斗の願い。
――それを知った七海の心の中に生まれた感情。どう表現していいのかわからない、困惑と悩みの種。
その種が自分の知らない間に芽を出し、根を張り、茎と葉を伸ばし、七海の胸の中でどんどん大きく成長している。不安と困惑が、複雑に入り組んだ樹海のように七海の心を支配している。
この感情をどうすればいいのか――受け入れればいいのか、切り落とせばいいのか、上手く判断ができずここ最近ずっと悩んでいる。
小さな種から芽吹いた悩みがこんなにも急激に成長したのは、すべて将斗のせいだった。彼の明るい笑顔と優しい声が太陽のように七海に降り注ぎ、彼の淫らな指先が七海の心と身体を濡らしていく。光と水を得て膨らんだ戸惑いの芽はあっという間に成長し、もう軽い気持ちで摘み取れるような大きさではなくなっている。
「ほのかと小百合は、上司を好きになったことある?」
そんな感情を持て余す七海だが、きっと一人で悩んでいても迷宮の中を彷徨うだけ。だから親しい友人たちに、この樹海を抜け出る方法を尋ねてみる。
「あるわけないでしょ。私、大学のときから付き合ってる人と社会人一年目で結婚したのよ。上司と恋愛してたら大問題だわ」
「そ、そういえばそうだね……。小百合はないか」
小百合は就職して一年目のときに以前から交際していた男性と授かり結婚し、現在はフルタイムで働きながら仕事と二児の子育てを両立している。小百合のパワフルな姿にいつも元気をもらっている七海だが、今回に関しては七海の参考にはならなかった。
「私もないかなぁ。っていうか、社内恋愛がだめかもしれない」
「へえ、そーなんだ? 意外」
「誰かに見られてるかも、って思ったら気になって仕事にも恋愛にも集中できないもん。完全に分けたいと思っちゃう」
ほのかの台詞に七海だけではなく小百合も「なるほど」と納得する。
どちらかというと惚れっぽくて恋愛をしていないと生きていけないタイプのように見えるほのかだが、ゆるふわ系の見た目に反して、考え方は意外にも堅実で現実的だ。仕事とプライベートを分離することでメリハリをつけているらしい彼女の回答も、残念ながら今の七海の道しるべにはならない。
「七海ちゃんは難しいよね。家でも仕事でもずーっと一緒だもん」
「……うん」
そうなのだ。察しのいいほのかと小百合にはすべてお見通しらしいので素直に頷いて、自分の悩みの種が将斗との関係であると白状する。
それから最近ゆっくりと話せていなかった二人にここ数か月の出来事をかいつまんで説明すると、二人が呆れような表情で七海を凝視してきた。
「七海ちゃんは、支倉社長を好きになるのが嫌?」
ふと尋ねられたほのかの的確な問いかけに、身体がギクリと飛び跳ねる。一瞬、言葉も失った。
「……嫌、ってわけじゃない……と思うんだけど」
「けど?」
「わからない、の……ずっと『上司』だったから」
胸の中にあるモヤモヤを少しずつ言葉として紡いでいく。
将斗に嘘や偽りではなく本心で『好きだ』と伝えられ、『離婚するつもりはない』『俺を好きになってほしい』と言われた。
もちろんその気持ちは嬉しい。だが自分が感じている正直な気持ちを言葉にすると『嬉しい、私も』でも『ごめんなさい、嫌です』でもない。七海の感情を正確に表現するならば『わからない』が最も正解に近い。
「相手は社長で御曹司だし、秘書の仕事もそれなりに忙しいし、社長本人も手がかかるし。でも尊敬してるところもあって、すごいなって憧れる瞬間もあって……。結局、私の中での社長は『上司』だったから……どうしていいのか、分からないの」
将斗のことが嫌いなわけではない。むしろ人としては尊敬している。
だが恋愛感情を持ったことはなく、親でも兄弟でもないがごく近しい身内のような存在だと認識していた。けれど住む世界が決定的に違う人であることも理解している。
「特別な感情を持てるような人じゃ……私が好きになっていい相手じゃなかったの。だから今まで、あんまり深く考えたことなくて」
「結婚までしたのに?」
「そうだけど……でもそれはあくまで『契約』の結婚で」
もちろん支倉建設の社長を相手に親しみ全開で身内面するつもりはなかった。だが結婚しても、身体を繋げても、彼の両親に歓迎されても、周りが自分たちを夫婦だと認めても、七海の中には常に『契約』の二文字が横たわり、一年後の『先』があるとは全く思っていなかった。いつか終わりがあるものだとばかり思っていたのだ。
そんな七海の内心を聞いたほのかと小百合が、二人揃って微笑ましさと苦笑いを織り交ぜたような笑みを浮かべた。
「七海はそう思ってたんだ。でもさ、そんなわけないじゃない?」
「あんなに好き好きアピールしてるのに気づかないって、逆にすごいよね」
「だって本当に『アピール』だと思ってたんだもん……!」
二人は「そんな馬鹿な~」と笑うが、七海は本当に『愛妻アピール』だと思っていた。契約書を交わしたわけではないが、最初に取り決めた約束が『そう』だったのだから、途中から事実だと言われてもすぐには受け入れられない。蓋を開ければ『最初から真実だった』と言われ、なおさら混乱するばかりだ。
「佐久係長のときにはなかった悩みだねぇ」
店員が食後のお皿を下げてくれた後のテーブルに突っ伏していると、ほのかがくすくすと笑い出した。
一年前までは普通に交際していたはずなのにやけに懐かしい名前を出された気がして顔だけ上げると、ほのかが満面の笑みを浮かべていた。なぜか彼女も、隣で頬杖をついて七海を眺める小百合も、嬉しそうだ。
「でもなんか、佐久係長のときより『恋する乙女』って感じするよ?」
「確かにねぇ」
「そう……?」
「うん。いっぱい悩んで、いっぱい考えて……でもゆっくり少しずつ支倉社長に恋していってる感じがして、佐久係長と付き合ってたときより自然だと思うんだ」
ほのかの唇が紡いだ『自然』というワードに反応して身体を起こすと、顔を見合わせた二人が「ねー」と楽しそうに笑い出した。まったくタイプが違う二人だが、意外と波長が合うらしい。それはもちろん、七海にも言えることだけれど。
どうやら二人は、七海がここ最近ずっと悩んでようやく導き出した『もしかしたら自分も将斗を好きなのかもしれない』という答えに、とうの昔に辿り着いていたらしい。
七海としては二人に『上司を好きになったことある?』と問いかけるだけでも違和感を覚えるような感情だったが、二人はその気持ちを大事にして、まだまだ悩んで考えろという。
種が芽吹いて生まれた感情を大切に育ててみたらいい、と――むくむくと増え続ける『恋心』と向き合っている今の七海の姿の方が、以前よりもずっと自然だと言うのだ。
「それに最近の七海ちゃん、ちょっと色っぽいもんね」
「ど、どこが……?」
「全体的に。表情とか、身体とか、メイクとか?」
「え……メイクは変わってないけど?」
「あ、そうだ。七海にいいものあげるよ。ほのかにも」
まだまだ七海をからかいたがったほのかだが、そこで小百合が話題を切り替えてくれた。カフェテーブルの下に置いたバスケットからバッグを取り出した小百合が、中に入っていた二つの紙袋を七海とほのかに一つずつ渡してくれる。
「お姉さんの新商品?」
「そう」
綾川小百合は一番上の姉が化粧品やメイク用品を製造・販売する会社に勤め、真ん中の姉はファッションやインテリア雑誌を扱う出版社で編集の仕事をしているという美人三姉妹の末っ子だ。
流行に敏感な真ん中の姉が、上の姉が勤める会社の新商品の情報を知りたがる流れから、小百合の元にもよく新商品のデモ製品が回ってくるらしい。
しかし新商品の色違いを全種類与えられても困るらしく、こうして余った商品や試供品を七海とほのかにも分け与えてくれる。お金を払うと言っても「要らないわよ」と返されるのでありがたく頂戴している二人だが、紙袋の中身を見た七海は少しだけ驚いてしまった。
(キスしたくなるつやぷる唇に……)
今回の新商品はリップスティックだった。買うと数千円はする人気シリーズの最新作は、水分と保湿成分が多く含まれていることから、塗れば唇がつやつやでぷるぷるになるらしい。秋冬には丁度良さそうなので、色さえ肌に合えば使い勝手がいいかもしれない。
「わー! ありがと小百合ちゃん! 実はリップ忘れちゃって、午後からどうしようか困ってたんだ~」
「そう? じゃあ丁度よかった」
パッケージのプラスチックケースからぱこっと中身を外しているほのかの向かいで、『そのうち使ってみよう』と考えながら自分のバッグへしまおうとする。
が、その動きを斜め向かいから伸びてきた小百合の手にガッと掴まれ、阻止される。
え、なに……? と驚いて顔を上げてみると、ほのかと小百合が極悪人のような悪い笑みを浮かべていた。
さっき言っていた『自然で』は、どこへ行ったというの。
* * *
「社長、こちら下げてもよろしいですか?」
午後の業務開始と同時に社長室へ入室して、彼の食事の後片付けをする。
「ああ、悪いな。食いっぱなしにして」
「いいえ。こちらこそ、確認を怠ってしまい申し訳ございませんでした」
「悪いのは向こうの秘書だろ。柏木は悪くない」
いつもは社員と同じ社員食堂を使うか、会社の周辺に自ら足を運んで好きなものを食べることが多い将斗だが、今日は珍しくお弁当だった。
とはいえそれでも一食数千円はする高級弁当なのだが、今日のランチの時間に出来たての食事ができなかったのは半分七海のせいである。
将斗が今日、社長室でひとり高級弁当を食べる羽目になったのは、取引先の役員秘書が接待の日時を盛大に間違えたためだ。
本来であれば昨晩、支倉建設本社にほど近い料亭で酒と食事を楽しみつつ、懇親会を催す予定だった。しかし先方の秘書がその日時を今日だと勘違いしたせいで、昨晩の約束を思いきりすっぽかされたのである。
予定は一旦白紙に戻すことになったが、今日の昼休みの直前になって突然、例の秘書が『お詫びの品だ』と言って約束の料亭の高級弁当を持って来社してきた。しかも昨日は七海も同席する予定だったのに、持ってきた詫びの高級弁当はなぜか将斗の分だけだった。
もちろん追加を要求するつもりはないし、七海も将斗も怒ってはいない。ただ心配になるほどそそっかしい秘書だとは思う。無論もらった弁当を捨てる訳にもいかないので、結局、将斗が一人社長室で食べることになったのだが。
「柏木」
「はい?」
使い捨てなのにやけに立派な弁当箱を片付けていると、プレジデントチェアの背もたれから背中を浮かせて立ち上がった将斗が、そのまま七海の傍へ近づいてきた。名前を呼ばれたので返答しながら顔を上げると、すぐ傍に将斗の顔があると気がつく。
思わずびくっと身体が跳ねて硬直する。つい先ほどまで上司である将斗を好きだのなんだのと友人たちと会話していたせいか、変に動揺して緊張してしまう。
七海の内心を知ってか知らずか、至近距離で目が合った将斗が不思議そうに首を傾げた。
「どうした?」
「え……?」
「午前より可愛くなってる」
社長であり上司であり夫である将斗から不意打ちで褒められ、七海の身体が一層固まる。
サバンナのど真ん中でライオンと遭遇してしまった草食動物の気分だ。目が合っただけなのに、瞬間的に『あ、これはだめなやつだ』と直感する。
「ああ、唇だな。いつもより色もツヤもいい」
将斗が七海の頬を大きな手で包み込み、親指の腹で唇をゆっくりと撫で始める。それが獲物を品定めする猛獣のようにも、七海を口説いて可愛がろうとする溺愛夫のようにも見えて、ただただ混乱する。
(な、なんで気づくの……!?)
不思議で仕方がない。どうして将斗は、七海の変化に敏感に気がつくのだろう。小百合にもらったリップはそこまで色は濃くないし、うるうるつやつやと言っても油を塗りたくっているわけではないのに。
普通なら気にも留めないか、気づいてもリップクリームを塗り直したのだろうと思う程度の微々たる変化なのに、七海の変化を敏感に察知して完全に把握してしまう将斗を『すごい』を通り越して『こわい』とすら思ってしまう。
「急に色っぽくなるのは止めてくれ。仕事に集中できないだろ」
「!」
そう呟いたかと思うと、伸びてきてた手に後頭部を支えられてそっと唇を重ねられる。しかも突然の口づけはただの触れ合いではなく、唇の上をぺろっと舐められるという恥ずかしすぎるキスだ。
職場で、しかも仕事中にキスをされたことなど今まで一度もなく、動揺のあまり咄嗟に身体を縮こめて将斗を回避してしまう。しゃがみ込んで下に逃げたので将斗の手からは逃れられたが、驚きと焦りのあまり防御姿勢から立ち上がれない。
身体が熱くなっている。驚きと恥ずかしさから顔を上げられない。
「今はこれだけにしとく。続きは家に帰ってからのお楽しみだな」
「し、しませんっ……!」
動揺で声が震えると、将斗の大きな手が七海の頭をぽんぽんと撫でる。その触れ合いにおそるおそる顔を上げてみると、舌の先を出した将斗がにやりと不敵な笑みを浮かべていた。
「最近の七海はどんどん可愛くなるから、全然安心できないな。また誰かに盗られるんじゃないかと思うと、秘書室に戻すのも気が引ける」
「……っ」
七海をからかう意地悪な笑顔を見て、突然のキスがせっかく塗ったリップを舐め取るためのものだと気がついた。七海としては大きな変化ではないと思うのに、そうまでして七海が『キスしたくなる唇』になるのを止めたいらしい。
――将斗の独占欲と愛情表現は、妻を恋の奈落に突き落とす凶暴な罠のようにしか思えない。
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