至高のオメガとガラスの靴

むー

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葡萄味の

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「アカリ、ヒロ」

蒼さんの声に振り返る。

「ここはお父さんたちに任せて行きなさい」

そう言った蒼さんと百合ちゃんは嬉しそうに微笑んでいた。

「はい。眼鏡」

ポンと僕の右肩に手を乗せたお父さんが拾った眼鏡を渡してくれた。

「アカリちゃん、カッコ良かったわよ」

ポンとアカリちゃんの右肩に手を乗せたお母さんにアカリちゃんはニッと笑顔で返した。

僕たちの肩に乗せた手はそのまま背中に移動し、そっと押された。

「「行きなさい」」
「「うん!」」

どちらともなく手を繋ぎ会場を飛び出した。

❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

会場を出てからはアカリちゃんに手を引かれて進んだ。
どこに向かっていいか分からない僕とは反対に、アカリちゃんは行先を知っていて迷いがない。

「アカリちゃん、どこ行くの?」
「そりゃ決まってるでしょ。ふっふっふー」

渡り廊下を抜け本館に進み、そのままエレベーターに乗り込む。
アカリちゃんは胸ポケットからカードを取り出し、センサーにかざすとエレベーターのドアは閉まり動き出した。
着いた先は上層階の宿泊エリアだった。
たぶん、スイートルームのエリア。

アカリちゃんはカードの部屋番号を確認して、該当の部屋の前で電子キーにカードを翳した。

「えっ?えっ?どういうこと?」
「おとーさんが用意してくれたに決まってるでしょ」

ウィンクをして悪そうな笑顔を浮かべるアカリちゃんに手を引かれ部屋の中に入ると、ビックリするくらい広い部屋だった。

「うわぁ、ベッドおっきーい!あっ、フルーツあるー。わー夕焼け綺麗だよーヒロ!」
「あ、うん」

アカリちゃんは、摘んだフルーツを口に入れモグモグしながら窓から見える景色を眺める。
僕もアカリちゃんの隣りで景色を眺める。
このホテルは山の上だから、下を見るとオレンジ色に染まった山の麓の街が見えた。
ちょうど明かりがポツポツと灯り始めていた。

「ホントだ。すっごく綺麗だね」
「ねぇ、後で部屋暗くして星空見ようよ!」
「この部屋だけ暗くしても見えるかなぁ?」
「もーヒロは夢がないなー。やってみなきゃ分かんないじゃん」

チュッ

「ふわぁっっ」

口を尖らせて抗議するアカリちゃんが可愛いくて、思わずキスをしてしまった。
不意打ちのキスに顔を真っ赤にして動揺するアカリちゃんにつられて僕の顔も赤くなる。
ふと、フワリと唇から香りがしてペロっと舐める。

「あ、葡萄の味がする」
「そりゃそうだよ。今葡萄食べたんだから」
「そっか…」
「そう」
「美味しいね」

ふふふふと顔を寄せ合って笑い、「んー」と口を尖らせたアカリちゃんの唇にもう一度キスをする。
さっきより深く。
さっきより長く。
絡む舌から葡萄の味がどんどん薄くなっていくけど、僕の髪をかき混ぜるアカリちゃんの手が気持ちよくて、もっともっとと強請ってしまう。

「んふっ……あ…んっ?」
「い゛っっ」

甘い雰囲気から一転、勢いよく耳を引っ張られ痛みのあまりちょっと涙出た。

「コレって……」

親指の腹でピアスの形をなぞるように僕の耳朶を触れ、マジマジと見られる。

「どう…かな?」
「思った通りだ……すごく似合ってる」

目を合わせてニンマリと満足そうに笑い、またピアスに目線を戻す。

「でも、ちょっと血が出てる。さっきの時?」
「うーん、どうだろう。家を出る前に付け替えた時もちょっと出たから…」
「穴、いつ開けたの?」
「月曜日」
「……って、まだぜんぜん安定してないじゃん。変えちゃダメだよ」
「でも…」
「んもぉー………」

本気で叱られシュンとする僕の首に、アカリちゃんは腕を回してキュッと抱きしめる。

「どうしよう……嬉しすぎて泣きそう…」

ズズッと鼻を啜る音が聞こえる。

「アカ、リ、ちゃーー」

きゅるきゅるきゅるるるる~

「………ぷっ、あはっ、あははっ」

僕のお腹は空気も読まず盛大に鳴った。
空腹を主張するお腹に、今度は僕が泣きそうになった。

「もーアカリちゃん、笑いすぎ!」
「あははっ、お腹痛ーい!」


__________________

安心してお腹が空いたのかもしれませんね。

ヒロとアカリの関係はこのくらいが一番好きです。
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