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全部取っ払って
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学校をサボった日。
マサキとトーマに送られて家に帰ると、お父さんとお母さんが玄関で待っていた。
「「おかえり」」
2人は僕が学校をサボったことを知ってるはずなのに、何も言わず優しく出迎えてくれた。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
『朝晩ちゃんと消毒するんだぞ。あと、あんま触んな。ウッカリ触ったら消毒しとけ。あと、暫くは左を下にして寝んなよ』
他にもいろいろ言われた気がするけど、覚えきれなかった。
綿棒に消毒液を染み込ませて、ピアス周辺を優しく撫でる。
ピアスホールを開けて3日経った。
消毒中にピリッと痛みがあると思ったら、綿棒に少し血がついていた。
着替えの時、シャツを引っ掛けてしまったのかもしれない。
鏡に写るピアスを見る。
マサキが意図して選んだ訳ではないと思うけど赤い石が付いたピアスだ。
ヒロの色だと言ったアカリちゃん。
それはきっと……。
「はああぁぁぁぁ」
長いため息が出てしまう。
あれから3日経つのにまだ答えが出せていない。
アカリちゃんが好きなのは間違いない。
好きよりもっとだ。
逢えない日々が僕にそれを教えてくれた。
全部取っ払うことは、想像以上に難しい。
アカリちゃんのことを考えると必ず「ヒロ大好き」って言う満面の笑顔を思い出す。
僕も、と思っている。
毎日「おはよう」の挨拶の様に交わされたやり取りも、アカリちゃんが好きだからしてて、刷り込まれたものではない…はず。
なのに、アルファらしからぬポンコツな自分に自信が持てない。
三日間そんな調子だから、一個も取っ払えていない。
おかげで月火となかなか寝つけなくて、目の下にはうっすら隈もでき始めた。
今日もベットに潜り込み、オレンジ色の小さな明かりが点いた天井を見る。
そこに答えがあったら良いのに。
答えが見えなくて、苦しくて、ちょっとだけそう思ってしまう。
「アカリちゃん……」
ご飯何食べたかな?
今日は寒かったから僕の家はキムチ鍋にしたんだよ。
楽しいことあったかな?
トーマがクシャミしたら鼻ちょうちん出来たんだよ。
もう眠ったかな?
僕はまだ眠れない。
泣いたりしていないかな?
怒ったりしていないかな?
無理して笑ってないかな?
僕は今日もそんなことを考える。
昨日も一昨日もその前もずっと。
だからかな、子供の頃の夢ばかり見る。
たぶん、6歳の頃の僕たちの夢。
夢の中のアカリちゃんはずっと笑っていて、そんなアカリちゃんに僕もずっと笑っている。
なんで忘れていたんだろう。
アルファとオメガとか、
そんなしがらみを知る前の僕たちは、
ずっと傍にいて、
ずっと手を握りあって、
ずっと笑い合っていて、
素直な気持ちを伝え合っていた。
でも、夢の最後は怯えた顔で僕を見るアカリちゃんなんだ。
そこで飛び起きる。
あの顔をさせたのは僕だ。
僕の心の弱さがアカリちゃんを傷つけた。
マサキはこの気持ちを取っ払えって言ったけど、簡単に取っ払えない。
底なし沼のようにどこまでも沈んでしまう。
トーマもまだ時間はあるって言ったけど、僕には足りない。
それだけじゃ足りないくらいの時をずっと一緒にいたから。
僕には全然足りない。
それだけの愛情をアカリちゃんからもらったから。
なんで、あと2日しかないんだ……。
__________________
ヒロの気持ち、迷走してます。
書いてる私も迷走してます。
マサキとトーマに送られて家に帰ると、お父さんとお母さんが玄関で待っていた。
「「おかえり」」
2人は僕が学校をサボったことを知ってるはずなのに、何も言わず優しく出迎えてくれた。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
『朝晩ちゃんと消毒するんだぞ。あと、あんま触んな。ウッカリ触ったら消毒しとけ。あと、暫くは左を下にして寝んなよ』
他にもいろいろ言われた気がするけど、覚えきれなかった。
綿棒に消毒液を染み込ませて、ピアス周辺を優しく撫でる。
ピアスホールを開けて3日経った。
消毒中にピリッと痛みがあると思ったら、綿棒に少し血がついていた。
着替えの時、シャツを引っ掛けてしまったのかもしれない。
鏡に写るピアスを見る。
マサキが意図して選んだ訳ではないと思うけど赤い石が付いたピアスだ。
ヒロの色だと言ったアカリちゃん。
それはきっと……。
「はああぁぁぁぁ」
長いため息が出てしまう。
あれから3日経つのにまだ答えが出せていない。
アカリちゃんが好きなのは間違いない。
好きよりもっとだ。
逢えない日々が僕にそれを教えてくれた。
全部取っ払うことは、想像以上に難しい。
アカリちゃんのことを考えると必ず「ヒロ大好き」って言う満面の笑顔を思い出す。
僕も、と思っている。
毎日「おはよう」の挨拶の様に交わされたやり取りも、アカリちゃんが好きだからしてて、刷り込まれたものではない…はず。
なのに、アルファらしからぬポンコツな自分に自信が持てない。
三日間そんな調子だから、一個も取っ払えていない。
おかげで月火となかなか寝つけなくて、目の下にはうっすら隈もでき始めた。
今日もベットに潜り込み、オレンジ色の小さな明かりが点いた天井を見る。
そこに答えがあったら良いのに。
答えが見えなくて、苦しくて、ちょっとだけそう思ってしまう。
「アカリちゃん……」
ご飯何食べたかな?
今日は寒かったから僕の家はキムチ鍋にしたんだよ。
楽しいことあったかな?
トーマがクシャミしたら鼻ちょうちん出来たんだよ。
もう眠ったかな?
僕はまだ眠れない。
泣いたりしていないかな?
怒ったりしていないかな?
無理して笑ってないかな?
僕は今日もそんなことを考える。
昨日も一昨日もその前もずっと。
だからかな、子供の頃の夢ばかり見る。
たぶん、6歳の頃の僕たちの夢。
夢の中のアカリちゃんはずっと笑っていて、そんなアカリちゃんに僕もずっと笑っている。
なんで忘れていたんだろう。
アルファとオメガとか、
そんなしがらみを知る前の僕たちは、
ずっと傍にいて、
ずっと手を握りあって、
ずっと笑い合っていて、
素直な気持ちを伝え合っていた。
でも、夢の最後は怯えた顔で僕を見るアカリちゃんなんだ。
そこで飛び起きる。
あの顔をさせたのは僕だ。
僕の心の弱さがアカリちゃんを傷つけた。
マサキはこの気持ちを取っ払えって言ったけど、簡単に取っ払えない。
底なし沼のようにどこまでも沈んでしまう。
トーマもまだ時間はあるって言ったけど、僕には足りない。
それだけじゃ足りないくらいの時をずっと一緒にいたから。
僕には全然足りない。
それだけの愛情をアカリちゃんからもらったから。
なんで、あと2日しかないんだ……。
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ヒロの気持ち、迷走してます。
書いてる私も迷走してます。
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