魔法使いと眠れるオメガ

むー

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【番外編】沙也のお話 4

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「おやすみ、沙也」

頭に柔らかい何かが触れた気がする……。


❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

アラームに目を覚ますとベッドの上だった。

「あ…れれ……?」

お風呂に入ってる店長を待っていたはずだったのに眠ってしまったらしい。
しかもベッドに運んでもらってしまった。
起き上がってキョロキョロ見渡すが、ベッド以外の家具がなかった。

「あ……店長の匂いがする」

薄掛けの布団からケーキのような甘い匂いがする。
沙也も専門学校でケーキ作っているけど体にこんな匂いはつかない。

「そういえば、カフェのお菓子も店長が作ってるんだった」

カフェのケーキは閉店まで残っていることがなく、ほとんどが試食でしか食べたことがない。
店長のケーキは甘さがしつこくなくて、甘い物が得意じゃない人もコーヒーと一緒なら1個ペロリと食べれるらしい。
特にクリスマスシーズンのブッシュ・ド・ノエルは毎年少しだけアレンジを加えている。
これだけは沙也も休みの日に態々食べに行ったこともあり、沙也もこんなケーキ作ってみたいと頑張っている。
布団の匂いをクンクンと嗅いでいたら「グゥ」とお腹が鳴った。

隣の部屋に移動すると、テーブルの上にボトルがあった。
近寄るとボトルの下にメモと鍵を見つけた。

『冷蔵庫に飯があるから温めてコーヒーで食べろ』

ボトルの蓋を開けるとフワッとコーヒーの匂いがした。
冷蔵庫にはラップを掛けられたフレンチトーストがあった。


「わっ、美味しい!」

フレンチトーストにはチーズとハムが挟まれていて、その塩気が甘さ控えめのフレンチトーストとよく合い美味しい。
コーヒーは沙也が好きなチョコみたいな香りのする豆で淹れたやつだ。
テレビを見ながらそれらご飯を食べて、ベッドに戻ってゴロゴロ過ごしていたらあっという間に時間が過ぎた。


❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

「おっはよーございまーす」
「沙也くん、おはよう」
「おはようございます」

バタバタとカフェのカウンターに入ると早番のベテランさんと、4月からバイトで入ったヒロくんがいた。

「珍しいね、沙也くんがギリギリなんて」
「あー、ちょっと寝坊しました」

店長のベッドでゴロゴロしてたらうっかり二度寝しちゃったなんて言えない。
思い出したら顔が熱くなった。
ただ寝てただけなのに。

「じゃあ、僕上がるね」
「「お疲れ様です」」

ここから2時間はフロアーとヒロくんと2人で対応だ。
ヒロくんは髪の毛がモサモサしてて黒縁眼鏡をしているが実はイケメンだ。
問題児のアカリくんは恋人らしいが、たぶん2人は番だ。
そんな関係が羨ましくて昨日の合コン頑張ったのに。

「いらっしゃ……なんだ立花くんか」
「はぁ、なんだよ。今日は俺客なのに」
「い、いらっしゃいませ」

沙也に気遣ってヒロくんが声をかける。

「いらっしゃいませ、真琴さん」
「沙也さん。こんにちは」

立花くんを無視して隣の真琴さんに挨拶すると、ニッコリ笑顔で挨拶を返してくれた。
実は真琴さんに密かに憧れている。
最初はオメガなのに全然華がなくて眼中にもなかったけど、立花くんと付き合うようになってからどんどん華が出てきた。
それまで気付かなかった振る舞いも素敵で、真琴さんは今の沙也の目標だ。
だから、真琴さんにだけたっぷりサービスした。
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