魔法使いと眠れるオメガ

むー

文字の大きさ
上 下
68 / 79

同居終了:101日目 3/31(木)

しおりを挟む
「真琴さん、荷物あとこれだけ?」
「うん、ありがとう」

久しぶりにここに帰ってきた。
元旦は立ち寄る程度にしかいなかった部屋は、1ヶ月しか住んでいなかったのにも関わらずすごく懐かしく感じる。

今日からまた真琴さんと一緒に暮らすことになる。


❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

番の挨拶に行った日。

「また一緒に暮らしたらどうだ」

真琴さんの爺さんから提案され、全員が茶を吹くほどの衝撃を受けた。

「望月」
「はい。真琴様のマンションの契約が来月末までですので、ちょうど良いと思います」
「2人はどうだ?」

そんな爺さんの一声で俺たちの再同居……否、同棲が決定した。
同棲にあたって、俺が卒業するまでのマンションの水道光熱費やら税金は爺さんが払ってくれた。


❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

新生活でたくさんの人が移動する時期。
引越しラッシュで俺たちが引っ越せたのは今日だ。

望月さんの手にかかればすぐ引っ越せただろうけど、その望月さんは珍しく立て込んでいて、真琴さんも仕事の都合がつかなくて、結局今日になった。
俺は事前に宅配便で荷物を送っておいたから、今日は真琴さんの荷物だけだ。
真琴さんは休日に荷造りをし、平日は連日残業をして、今日明日の有給休暇を取ったらしい。

「有休は余っていたから大丈夫だよ。4月にはまた付与されるしね」

そう言って笑う真琴さんの手伝いをした。

「紫陽くんはもう終わったの?」
「あー、俺は今必要な分だけだったのですぐ終わりましたよ」
「わー、いいなぁ」

家具は既に揃っているから、俺の荷物は今着る服、教材、私物くらいだ。
たまに実家に顔を出す予定だから、必要なものがあればそのタイミングで持って帰るなり送るなりすれば良い。
意外に俺は身軽だ。

部屋割りは、俺が大学を卒業するまでは以前と同じにした。

「真琴さん、ご飯どうします?」

荷解きしながら声を掛けると、真琴さんは手を止めうーんと考えた。

「あ、そうだ。宅配ピザにしよう」
「ピザ?」

俺は首を傾げる。
折角の同棲初日なんだから、食べに行ってもいいのに。

「ほら、前に一緒に住んだ初日がピザだったでしょ。だからピザがいいなぁ、って」
「あ……」

そんな些細な出来事を大事そうに話されると、なんかくすぐったい気持ちになる。

「だ、ダメかな…?」
「ダメじゃないです。ピザにしましょう」
「うん」

俺は傍で嬉しそうに笑う頬にそっとキスをした。
相変わらず顔を赤くする姿に愛しさが増す。
その身体を抱きしめると、もう俺にしか分からない香りが鼻腔をくすぐる。
押し倒したくなる。

「紫陽くん。ほら、早く終わらせよう」

グイッと肩を押され体が離れていった。
少し離れたことで作業する後ろ姿からチラッと見える俺が付けた跡が残る項は赤みを帯びていて、思わずニヤけてしまう。

「真琴さん」
「んー?」

振り返る頬はまだ薄らピンク色だった。

「明日も休みですよね。今日は一緒に……くっついて寝ましょう」
「ええっ!」

あ、顔が真っ赤になった。

「そんな顔されたら、今すぐしたくなっちゃうんですけど……」
「~~~~っ、ダメっ」
「えー、いいでしょ。ほとんど片付け終わったんだし」

口を尖らせて抗議するが真琴さんは頭をブンブンと横に振る。

「だ、ダメだよ……だって、ほら僕、汗臭いし…」

プツン

俺の中で何かが切れた。

ズカズカと大股で近寄って抱きしめた。

「ひゃっ」
「俺、この匂いも大好き」
「だ、ダメだっ……て……あ…」

首筋に顔を寄せて吸い付くと、白い肌がまた赤く色付く。
汗臭くなんてなく、吸い付いた肌は蕩けるくらい甘かった。

「無理。我慢できない」
「で、でも、この部屋なんの準備もーー」
「なら、俺の部屋に行きましょう」

そのまま抱き上げると少しの抵抗の後、抱き返してくれた。


それから3時間後。

届いたピザは俺の部屋で食べた。

そんな同棲初日。

____________________

次回最終回です。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版)

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

処理中です...