魔法使いと眠れるオメガ

むー

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同居終了:62日目 2/22(火)

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「はい。望月さん、態々すみません」
「いえ、此方が1週間分の抑制剤です。立花様の分もあります。此方は食事になります。冷蔵保存でお願いします」
「ありがとうございます。助かります」

昨日の朝、真琴さんのお父さんに真琴さんが発情期を迎えたことを伝えた。

「それで、真琴さんの持っている抑制剤が3日分しかなくて……」
『分かった。そちらに人を派遣して真琴を連れて帰ーー』
「ああのっ、真琴さんは俺に看させて下さい。傍にいたいんです。お願いします」
『……わかった。抑制剤は明日、望月に持って行かせるよ。食事もままならないと思うから、それも持たせるよ』
「ありがとうございます。助かります」

と、無事了承をいただいた。
バイト先も店長に連絡したら、遼平が代わると後ろで騒いで今週いっぱい休みをもらった。


そして、現在に至る。

「それと……立花様、こちらは社長からです」
「何ですか?……ぇ……」

紙袋の中身に固まった。

「使用されましたら、後日挨拶に来ていただきたいそうです。では、私はこれで失礼します」

望月さんは斜め45度の綺麗なお辞儀をして出て行った。


❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

「真琴さん、おはようございます。身体は大丈夫ですか?」
「紫陽くん、おはよう。うん、薬が効いてるからだいぶ楽だよ。でも、体がベタベタするからシャワー浴びたいかも」
「じゃあ、薬が効いてるうちに浴びてきて下さい。その間にこの辺片してご飯の支度しますから。……って言っても、ご飯はレンチンですけど、はは……」

紙袋は後ろに隠して、ご飯が入った袋だけを見せる。

「うん。そうさせてもらうね」
「はい。ごゆっくり~」

箪笥から着替えを取り出しバスルームに向かう真琴さんを確認すると、俺は紙袋をバッグにしまい大きくため息をついた。

「これをよこすってことは、公認ってことでいいんだよな…」

嬉しい反面、めちゃくちゃ恥ずかしい。
窓を開けて換気しながら冷気で顔を冷やす。
落ち着いたところで、ベッドの横に敷いていた布団を畳んで隅に寄せテーブルを置く。
この布団は昨日宅配で届いた。
その他にも別便で俺の着替えも届いた。
サイズがぴったりだから、手配したのはたぶん望月さんだ。
どこまでも抜かりない人で怖い。


「わぁ、こんなに食べれるかな……?」
「残したら俺が食べるんで大丈夫ですよ。デザートにゼリー食べましょう」
「ゼリー……」

あ、嬉しそうだ。
つか、この顔をするということは薬切れたな。
俺は急いで真琴さんにご飯を食べさせるとゼリーの前に薬を飲ませた。

「ゼリーわぁ……みかん食べたい……でも、桃も食べたい……」
「じゃあ、俺と半分こしましょう」
「半分こ……する!」

発情期の熱のせいで若干幼児帰りした真琴さんは俺の腕にしがみ付いて嬉しそうに笑うから、俺の胸はずっときゅんきゅんして辛い。

「はい、あーん」
「あーん。…ん、美味しいです」
「あーん」
「はい、あーん」
「んっ、美味しいね」

ゼリーを半分ずつ小皿に分けたのに、何故か食べさせ合ってる。
発情期の真琴さんの甘えっぷりは、俺の心臓を鷲掴みするどころか下半身も鷲掴みする勢いだ。
薬が早く効くことを願って、俺の理性総動員で真琴さんの対応をする。

「ごちそうさまでした」
「はい。じゃあ、布団入って休んでくださ………真琴さん?」
「………ぎゅってしてくれる?」

おっふっ…。
昨日からこの状態だ。
できるだけ4時間おきに薬を飲ませるようにしているが、薬の効果はきっちり4時間持続しないし、飲ませた薬もすぐに効果は出ない。
発情期中のオメガは身体中を駆け巡る熱のせいで何もしなくても体力を消耗する。
そのため、体力がない真琴さんはご飯を食べると割とすぐ眠ってしまう。
でも寝かしつけようとすると「ぎゅっとしくれる?」と甘えてきて寝付くまで離れない。
素面の時には見られない可愛すぎる一面は俺にとっては役得だが、下半身は辛い。

背中をポンポンしながら寝付くのを待つ。
さっきより匂いは薄くなっているから、薬が効いてきたようだ。
しがみつく腕の力も弱くなってきたから、あと10分も掛からず眠ってくれそうだ。

「……ん……しよぅくん…」
「ん?」
「しよぉくんの胸……ドキドキしてる。ふふふ、僕と一緒だね……ぁ、ちょっと早くなったぁ…」
「ーーっ!」

ポンポンする手が止まる。
俺の胸に頭をぐりぐり押し付け、鼻から息を吸い込んだ。

「しよぅくんの匂い……すき……だぁいすきぃ……」
「ーーっ!」
「…くぅ……くぅ……」

俺を置いてきぼりにして真琴さんは眠ってしまった。
またも生殺し状態だ。。。

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