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同居:13日目 12/4(土)
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今日の朝食は焼きおにぎりだ。
味付けは、味噌と醤油の2種類だ。
真琴さんはご飯のレパートリーが多い。
「真琴さん、今更ですけど料理上手ですよね」
「ありがとう。料理は子供の頃からやってたから、美味しいって言ってもらえるのは嬉しいな」
真琴さんは5歳の頃から包丁握っていたらしい。
俺なんて中学入るまで握ったこともない。
「母は料理が得意な人だったから、ノートにたくさんレシピを残してくれたんだ」
それを見ながら作ると父と兄たちが喜んで食べてくれるんだ、と嬉しそうに話す。
そのレシピノートには父親や兄達の好きなメニューもあって、お祝い事には必ず作っていたそうだ。
「ウチの母親なんて家事全般が苦手だから、生焼け生煮えはちょいちょいあったし、味付けは大味なんすよね。今はだいぶまともになったけど」
「ふふふっ、紫陽くんはお母さんの料理で何が好きなの?」
「ベタなんだけど、唐揚げかな。まあ、から揚げ粉まぶして揚げただけだから母の味とは言い難いし、生焼けで腹下したこともあるんですよね。はは」
腹下すって言った後に食事中に言う言葉じゃないって思ったけど、真琴さんは笑って聴いてくれた。
「真琴さんは?」
「えっ……ああ、そうだよね」
俺まずいこと言ったのか、真琴さんの顔が一瞬曇った。
「ま、まこーー」
「僕は……ない、かな…」
「あ…えっ…と」
「ごめんね、僕が話を振っておいて、僕にはないとかって。もう、この話はここでお終いにしよう」
真琴さんはニッコリ笑ってそう言った。
よく話を聞いていれば気づけたのかもしれない。真琴さんの話の違和感に。
「紫陽くん、晩ご飯何が食べたい?」
「あのっ、今日は一緒に作りませんか?といっても、俺料理しないから足手まといにしかならないけど」
「手伝ってくれるの?」
「え、あ、はい。俺でよければ」
勢い余って言ってしまったが、俺にできるんだろうか?
言ったそばから不安になってきたぞ。
「じゃあ、紫陽くんと一緒に作れそうなもの考えておくね」
そんな風に笑顔で言われたら今更出来ませんとは言い出せなくなった。
あと、昨夜のことも引っかかってるけど、今は訊かない方がいい気がした。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
俺は走った。
15時頃、真琴さんからメッセージが来て、晩ご飯の食材を一緒に買いに行かないかとお誘いがあった。
なので、18時に駅前で待ち合わせの約束をした。
今日は11-17時のシフトだから待ち合わせには余裕に着くはずだったのに、客に絡まれて時間通りに上がれなかった。
原因は、近くのホールで行われたママさん達の発表会の打ち上げをこのカフェでやったからだ。
マダムたちの年齢層の幅が広過ぎて何の発表かは不明だ。
んで、若いアルファの俺は見事にマダム達に絡まれた。
「お兄さんカッコいいわね~。モテるでしょ」
「お兄さんはアルファなの?やっぱりアルファはイケメンが多いわね」
「うちの娘と結婚する気ない?ちょーっと年上だけど」
「お兄さん、今度お姉さんとデートでもするぅ?……がははは」
なんか野太い声がしたような…?
マダムたちが絡むのは俺だから、上がるに上がれない。
「はい、みなさん、ここでお開きしましょう」
「「「はーい」」」
顔を引き攣らせながら耐えていたら、30歳前後のちょっと顔のいい優男の一言で会は終わった。
それでも20分オーバーだ。
店長がオーバーした分を残業代として給料に付けてくれるって言ってくれたから許したけど。
「真琴さんっ、はぁ、はぁ、お、遅くなりました」
「えっ、走ってきてくれたの。ゆっくりでよかったのに」
「今日も寒いのに、俺を待っていたせいで風邪引いたら大変ですから」
真琴さんの頬と耳は冷気に当たって真っ赤になっていた。
「ふふっ、マフラーがあるから大丈夫だよ。……あっ」
「えっ?」
「お仕事お疲れ様です」
真琴さんはどこまでも優しい。
キッチンで食材を切る真琴さんの隣で、シメジをむしる俺。
晩ご飯は豚肉のレタス鍋となった。
スーパーに一緒に行ったのは、俺に食材を選んでもらうためだった。
「お鍋の素ってはじめて使うけど、いろんな味があって時短になるから便利だね」
「真琴さんは出汁から作りそう」
「ふふっ、正解」
包丁を使うものは真琴さんが切って、包丁要らずのものは俺が千切った。
鍋焼きうどんでも使った土鍋に火が通りにくい具材を並べて、鍋の素を入れるとグツグツ言うまでコンロの前でビールで乾杯した。
「キッチンドラッカーも悪くないね」
作り置きのピクルスを食べながら、真琴さんは笑った。
流石に2人で鍋は食べきれなかったから、残りは翌日、雑炊にして食べることにした。
「今度、出汁から作った真琴さんの鍋食べさせて下さい」
「ふふっ、わかった。楽しみにしててね」
鍋を突きながら、そんな約束をした。
味付けは、味噌と醤油の2種類だ。
真琴さんはご飯のレパートリーが多い。
「真琴さん、今更ですけど料理上手ですよね」
「ありがとう。料理は子供の頃からやってたから、美味しいって言ってもらえるのは嬉しいな」
真琴さんは5歳の頃から包丁握っていたらしい。
俺なんて中学入るまで握ったこともない。
「母は料理が得意な人だったから、ノートにたくさんレシピを残してくれたんだ」
それを見ながら作ると父と兄たちが喜んで食べてくれるんだ、と嬉しそうに話す。
そのレシピノートには父親や兄達の好きなメニューもあって、お祝い事には必ず作っていたそうだ。
「ウチの母親なんて家事全般が苦手だから、生焼け生煮えはちょいちょいあったし、味付けは大味なんすよね。今はだいぶまともになったけど」
「ふふふっ、紫陽くんはお母さんの料理で何が好きなの?」
「ベタなんだけど、唐揚げかな。まあ、から揚げ粉まぶして揚げただけだから母の味とは言い難いし、生焼けで腹下したこともあるんですよね。はは」
腹下すって言った後に食事中に言う言葉じゃないって思ったけど、真琴さんは笑って聴いてくれた。
「真琴さんは?」
「えっ……ああ、そうだよね」
俺まずいこと言ったのか、真琴さんの顔が一瞬曇った。
「ま、まこーー」
「僕は……ない、かな…」
「あ…えっ…と」
「ごめんね、僕が話を振っておいて、僕にはないとかって。もう、この話はここでお終いにしよう」
真琴さんはニッコリ笑ってそう言った。
よく話を聞いていれば気づけたのかもしれない。真琴さんの話の違和感に。
「紫陽くん、晩ご飯何が食べたい?」
「あのっ、今日は一緒に作りませんか?といっても、俺料理しないから足手まといにしかならないけど」
「手伝ってくれるの?」
「え、あ、はい。俺でよければ」
勢い余って言ってしまったが、俺にできるんだろうか?
言ったそばから不安になってきたぞ。
「じゃあ、紫陽くんと一緒に作れそうなもの考えておくね」
そんな風に笑顔で言われたら今更出来ませんとは言い出せなくなった。
あと、昨夜のことも引っかかってるけど、今は訊かない方がいい気がした。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
俺は走った。
15時頃、真琴さんからメッセージが来て、晩ご飯の食材を一緒に買いに行かないかとお誘いがあった。
なので、18時に駅前で待ち合わせの約束をした。
今日は11-17時のシフトだから待ち合わせには余裕に着くはずだったのに、客に絡まれて時間通りに上がれなかった。
原因は、近くのホールで行われたママさん達の発表会の打ち上げをこのカフェでやったからだ。
マダムたちの年齢層の幅が広過ぎて何の発表かは不明だ。
んで、若いアルファの俺は見事にマダム達に絡まれた。
「お兄さんカッコいいわね~。モテるでしょ」
「お兄さんはアルファなの?やっぱりアルファはイケメンが多いわね」
「うちの娘と結婚する気ない?ちょーっと年上だけど」
「お兄さん、今度お姉さんとデートでもするぅ?……がははは」
なんか野太い声がしたような…?
マダムたちが絡むのは俺だから、上がるに上がれない。
「はい、みなさん、ここでお開きしましょう」
「「「はーい」」」
顔を引き攣らせながら耐えていたら、30歳前後のちょっと顔のいい優男の一言で会は終わった。
それでも20分オーバーだ。
店長がオーバーした分を残業代として給料に付けてくれるって言ってくれたから許したけど。
「真琴さんっ、はぁ、はぁ、お、遅くなりました」
「えっ、走ってきてくれたの。ゆっくりでよかったのに」
「今日も寒いのに、俺を待っていたせいで風邪引いたら大変ですから」
真琴さんの頬と耳は冷気に当たって真っ赤になっていた。
「ふふっ、マフラーがあるから大丈夫だよ。……あっ」
「えっ?」
「お仕事お疲れ様です」
真琴さんはどこまでも優しい。
キッチンで食材を切る真琴さんの隣で、シメジをむしる俺。
晩ご飯は豚肉のレタス鍋となった。
スーパーに一緒に行ったのは、俺に食材を選んでもらうためだった。
「お鍋の素ってはじめて使うけど、いろんな味があって時短になるから便利だね」
「真琴さんは出汁から作りそう」
「ふふっ、正解」
包丁を使うものは真琴さんが切って、包丁要らずのものは俺が千切った。
鍋焼きうどんでも使った土鍋に火が通りにくい具材を並べて、鍋の素を入れるとグツグツ言うまでコンロの前でビールで乾杯した。
「キッチンドラッカーも悪くないね」
作り置きのピクルスを食べながら、真琴さんは笑った。
流石に2人で鍋は食べきれなかったから、残りは翌日、雑炊にして食べることにした。
「今度、出汁から作った真琴さんの鍋食べさせて下さい」
「ふふっ、わかった。楽しみにしててね」
鍋を突きながら、そんな約束をした。
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