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同居:21日目 12/12(日)
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今日の俺はご機嫌でバイト先のカフェのカウンターに立っている。
おかげで来店客の女とオメガの男からメッセージアプリのIDが書かれたメモを渡された。
気に入った子のメモ以外は見えないところで破って捨てた。
禁欲生活もあと10日ほどで終わるから、連絡だけでも取っておこうかと考えてメモをポケットにしまった。
「昨日は遅刻ギリギリで心配だったけど、今日はちゃんと来たな」
「あー昨日はすみませんでした」
店長は仕事さえちゃんとしてくれればいいよと、あまり深く詮索してこない人だからこういう時はとても助かる。
でも、相談を持ち掛ければちゃんとのってくれる。
そういう人だから、俺もここで長く続いているのかもしれないな。
でも最近、俺に対する口調や扱いが雑に感じるのは何故だろう?
なんて考えたりしている。
昨日の夜は、久しぶりーーといっても4日振りだか真琴さんの手料理を食べた。
メニューはナポリタンで、赤と黄色のパプリカが入っていて本当に美味かった。
今日は唐揚げをお願いした。
真琴さんの唐揚げななら、毎日食べても多分胃もたれはしないだろう。
ニマニマしながらテーブルを拭いて戻ると、いつの間にか出勤していたのか沙也がジト目で俺を見ていた。
「立花くん、頬緩みすぎじゃない。緊張感なさすぎー」
ちょっとキモーい、とディスられた気がするが、俺は気にしない。
休憩から上がってフロアに出ると、騒がしい集団が目に入った。
何事だと思ったら、その集団の1人が俺を見つけて手を振ってきた。
「紫陽」
なんだ悟か。
近寄ると悟は女子5人侍らせていた。
その他に男も2人いた。
「いらっしゃいませー」
「お前さっき"なんだ悟か"みたいな顔しただろ」
「正解」
「おい。まあいいや。この子達、この前合コンした子なんだけど、紫陽に会いたいっていうから連れてきた」
「なら、高いやつ注文をお願いします」
悟を適当にあしらって客が帰って空いた席を整えてカウンターに戻った。
悟が連れてきた子が何人かカウンターにいる俺に声を掛けにきた。適当に話を合わせて、客が来たら席に戻すを繰り返してちょっと疲れた。
それから少しして、「俺らカラオケ行くわー」と悟たちがやっと出て行った。
ホッとして悟たちが散らかしたテーブルを片付けると、スマホがあった。
あの中の誰かが忘れたものらしいが…。
「あーあった!良かったぁー」
集団の中の1人、たぶんあの中では一番可愛い子が店に戻ってきた。
このスマホはこの子の忘れ物らしい。
「はい、どーそ」
「ありがとう」
スマホを差し出すと俺の手ごと受け取って、俺を引っ張った。
「ちょっ」
「やっぱり、紫陽くん、アルファだね。マナ、オメガだからすぐ分かっちゃった」
「あーそーなんすか」
「なんか不機嫌?」
不躾に匂い嗅がれていい顔するやついないと思うんだが、この子は嫌な顔されたことないのだろう。
「まあ、初対面で匂い嗅がれたらそうなりますね」
俺は彼女から距離を置く。
この子から漂うフェロモンはちょっとヤバいやつだ。
「ふぅん。まあいいよ、許してあげる。あっ、今度の金曜日の合コン、マナも参加するから紫陽くん来てね。お願い」
手を合わせて首を傾げてお願いポーズをして、その子は出て行った。
テーブルを整えてカウンターに戻ると、半目になった沙也が迎えてくれた。
「なーにあの子。立花くんの新しい彼女?」
「んなわけない、第一、今日初対面で名前も知らない」
「でもあの子オメガでしょ?確実に立花くん狙ってるよ」
「俺もそー思う」
「それにあの子のフェロモン、ちょっとヤバいよ。沙也でも分かるもん」
珍しく沙也がマトモなことを言った。
俺の感はあながち間違いではなかったようだ。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
18時でバイトを終え、真っ直ぐ家に帰ると、唐揚げのいい香りが俺を出迎えた。
「ただいまー」と玄関で大きめに言うと、リビングダイニングのドアが開いて真琴さんが出迎えてくれた。
「おかえりなさい、紫陽くん。お仕事、お疲れ様です」
結婚ホヤホヤの新妻が言いそうなことを少し頬を赤らめながら言う真琴さんに俺の心臓はドキドキした。
「真琴さん、お風呂って」
「沸いてるよ。先に入る?」
「そうさせてもらっていいですか。なんか汗臭いの気になって」
「じゃあ、30分後には食べれるようにしておくね」
俺は念入りに身体を洗った。
あのオメガの匂いがまだ残っている気がしたからだ。
沙也が言うように、あの子の匂いはヤバい気がする。
何か紛い物が混じっているような危険な香りで、鼻の奥にこびりついてるような不快感がずっと纏わりつく。
安心する香りで上書きしたい。
俺は風呂から上がるとご飯の前に真琴さんに声を掛けた。
「ちょっとハグさせてください」
おかげで来店客の女とオメガの男からメッセージアプリのIDが書かれたメモを渡された。
気に入った子のメモ以外は見えないところで破って捨てた。
禁欲生活もあと10日ほどで終わるから、連絡だけでも取っておこうかと考えてメモをポケットにしまった。
「昨日は遅刻ギリギリで心配だったけど、今日はちゃんと来たな」
「あー昨日はすみませんでした」
店長は仕事さえちゃんとしてくれればいいよと、あまり深く詮索してこない人だからこういう時はとても助かる。
でも、相談を持ち掛ければちゃんとのってくれる。
そういう人だから、俺もここで長く続いているのかもしれないな。
でも最近、俺に対する口調や扱いが雑に感じるのは何故だろう?
なんて考えたりしている。
昨日の夜は、久しぶりーーといっても4日振りだか真琴さんの手料理を食べた。
メニューはナポリタンで、赤と黄色のパプリカが入っていて本当に美味かった。
今日は唐揚げをお願いした。
真琴さんの唐揚げななら、毎日食べても多分胃もたれはしないだろう。
ニマニマしながらテーブルを拭いて戻ると、いつの間にか出勤していたのか沙也がジト目で俺を見ていた。
「立花くん、頬緩みすぎじゃない。緊張感なさすぎー」
ちょっとキモーい、とディスられた気がするが、俺は気にしない。
休憩から上がってフロアに出ると、騒がしい集団が目に入った。
何事だと思ったら、その集団の1人が俺を見つけて手を振ってきた。
「紫陽」
なんだ悟か。
近寄ると悟は女子5人侍らせていた。
その他に男も2人いた。
「いらっしゃいませー」
「お前さっき"なんだ悟か"みたいな顔しただろ」
「正解」
「おい。まあいいや。この子達、この前合コンした子なんだけど、紫陽に会いたいっていうから連れてきた」
「なら、高いやつ注文をお願いします」
悟を適当にあしらって客が帰って空いた席を整えてカウンターに戻った。
悟が連れてきた子が何人かカウンターにいる俺に声を掛けにきた。適当に話を合わせて、客が来たら席に戻すを繰り返してちょっと疲れた。
それから少しして、「俺らカラオケ行くわー」と悟たちがやっと出て行った。
ホッとして悟たちが散らかしたテーブルを片付けると、スマホがあった。
あの中の誰かが忘れたものらしいが…。
「あーあった!良かったぁー」
集団の中の1人、たぶんあの中では一番可愛い子が店に戻ってきた。
このスマホはこの子の忘れ物らしい。
「はい、どーそ」
「ありがとう」
スマホを差し出すと俺の手ごと受け取って、俺を引っ張った。
「ちょっ」
「やっぱり、紫陽くん、アルファだね。マナ、オメガだからすぐ分かっちゃった」
「あーそーなんすか」
「なんか不機嫌?」
不躾に匂い嗅がれていい顔するやついないと思うんだが、この子は嫌な顔されたことないのだろう。
「まあ、初対面で匂い嗅がれたらそうなりますね」
俺は彼女から距離を置く。
この子から漂うフェロモンはちょっとヤバいやつだ。
「ふぅん。まあいいよ、許してあげる。あっ、今度の金曜日の合コン、マナも参加するから紫陽くん来てね。お願い」
手を合わせて首を傾げてお願いポーズをして、その子は出て行った。
テーブルを整えてカウンターに戻ると、半目になった沙也が迎えてくれた。
「なーにあの子。立花くんの新しい彼女?」
「んなわけない、第一、今日初対面で名前も知らない」
「でもあの子オメガでしょ?確実に立花くん狙ってるよ」
「俺もそー思う」
「それにあの子のフェロモン、ちょっとヤバいよ。沙也でも分かるもん」
珍しく沙也がマトモなことを言った。
俺の感はあながち間違いではなかったようだ。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
18時でバイトを終え、真っ直ぐ家に帰ると、唐揚げのいい香りが俺を出迎えた。
「ただいまー」と玄関で大きめに言うと、リビングダイニングのドアが開いて真琴さんが出迎えてくれた。
「おかえりなさい、紫陽くん。お仕事、お疲れ様です」
結婚ホヤホヤの新妻が言いそうなことを少し頬を赤らめながら言う真琴さんに俺の心臓はドキドキした。
「真琴さん、お風呂って」
「沸いてるよ。先に入る?」
「そうさせてもらっていいですか。なんか汗臭いの気になって」
「じゃあ、30分後には食べれるようにしておくね」
俺は念入りに身体を洗った。
あのオメガの匂いがまだ残っている気がしたからだ。
沙也が言うように、あの子の匂いはヤバい気がする。
何か紛い物が混じっているような危険な香りで、鼻の奥にこびりついてるような不快感がずっと纏わりつく。
安心する香りで上書きしたい。
俺は風呂から上がるとご飯の前に真琴さんに声を掛けた。
「ちょっとハグさせてください」
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