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同居:7日目 11/28(日)
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前日に引き続き、俺は健康的な目覚めを迎えた。
今日の朝食も和食だ。
あの玉子焼きがまた食べれるかもしれないとワクワクしながら手早く着替えて顔を洗いに行った。
「おはよーございまーす」
「おはようございます」
ダイニングテーブルには昨晩の残りのおでんと玉子焼きがあった。
「真琴さん、何か手伝うことありますか?」
「え…と、じゃあ、お味噌汁よそってもらえるかな」
「了解っす」
キッチンに回ると真琴さんは小さなおにぎりを握っていた。
「紫陽くんはおにぎりの具、何が好き?」
「んー、ベタなんですけど、鮭とかツナマヨかな。でも、梅干しの酸っぱいはちょっと……真琴さんは?」
「僕も鮭好きだよ。でも、海苔だけ巻いた塩おむすびとかも好きなんだ」
「それ分かります」
真琴さんは小さなおにぎりを2個と一回り大きなおにぎりを3個握った。
「いただきます」
「海苔はお好みで巻いて食べてね」
おにぎりは鮭と塩おむすび。
俺は鮭2個と塩1個、真琴さんは鮭と塩1個ずつだ。
一目でわかるように鮭にはてっぺんに具が乗ってる。
なめこの味噌汁を一口飲んで口の中を潤してからおにぎりに齧り付く。
絶妙な握り加減のおにぎりは口の中でご飯が解ける。
「美味い。おにぎり握るのも上手なんですね」
「いや、普通だよ」
「そんなことないです」
「うーん、だとしたら、お弁当用によく作ってるからかな」
意外な発言におにぎりを食べる手が止まった。
「真琴さん、お弁当作ってたんですか?」
「ああ、うん。ほら、僕、量食べないから、この方が経済的に良いんだよね」
「いつの間に……」
「最近はレンチンで少量のご飯炊けるから朝食の準備の合間にやってるんだ」
まったく気付かなかった。
話を聞くと、真琴さんは同居前は朝ごはんを食べていなかったらしい。
食べてもおにぎり作ったあまりのご飯くらい。たぶん、粒レベルの量だ。
「コーヒー飲むとなんかいいかなってなるんだよね」
「それ胃に悪いやつ」
「はは…そう、かな」
真琴さんは俺に合わせてご飯食べてくれたんだ。量は少ないけど。
「紫陽くん、今日はバイト?」
「今日は休みです。うちのカフェ、オフィス街にあるから土日は基本暇なんで、出勤しても隔週なんです」
「紫陽くん、カフェで働いてるんだ。なんかモテてそうだね」
「あー否定はしません」
「ふふっ、素直でよろしい」
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
「ううっ、さ、寒いね」
真琴さんはダッフルコートに顔を埋める勢いで肩を窄めて震えている。
その姿はウサギみたいだ。
お互い予定がないということで、近隣周辺を散策することにした。
1ヶ月間だけとはいえ、自分が住んでる周辺のことが分からないのは何かあった時に困る。
実は、俺も駅までの道のりにあるコンビニとマンションの前にある酒屋くらいしか知らない。
真琴さんもスーパーや薬局くらいしか知らないらしい。
「駅ビル、こんなにデカかったんですね…」
「……うん。僕もまだまだ都心のこと舐めてたよ…」
都心の中心に行くには便利なとこだということは駅を利用していて理解していたはずなのに、駅ビルは盲点だった…。
気づけば3時間ほどグルグル回っていた。
流石に疲れたので駅前の路地に入ったところで見つけた純喫茶風の喫茶店に入った。
オシャレだが若者が入りそうなお店じゃないこともあって、6割ほどしか席は埋まってなかった。
まだランチタイムでもあったからご飯も食べることにした。
「しゃ、写真以上のボリュームだね…」
ランチタイム限定のグラタンセットの量に真琴さんは頬を引き攣らせた。
俺はナポリタンセット。
こっちもかなりのボリュームだが、俺には楽勝だ。
「真琴さん、残すなら俺食べるんで言ってくださいね」
俺は別途用意してもらった小皿に一口分のナポリタンを巻き付けて載せて、真琴さんの前に置いた。
ちなみに俺の一口分だから、真琴さんには二口か三口分くらいかな。
「えっ、紫陽くん、これ…」
「折角だからシェアしましょう。あ、グラタンは真琴さんが残したやつそのまま引き取るんで」
俺はナポリタンに取り掛かった。
程よいトマトの酸味とパスタがモチモチで美味い。
量も申し分ないから、また食べに来よう。
ズルズル食べながら真琴さんの様子を覗き見ると、状況を飲み込めなかったのか30秒くらいポカンとした後、フッと口角を上げて小さく笑うと手を合わせて「いただきます」と俺がよそったナポリタンを食べた。
「これ美味しいね」
「具もTHE喫茶店って感じが良いっすよね………でも、俺ーー」
「………俺?」
「真琴さん、手が止まってる。グラタンも出来立てが一番美味いんだから食べて」
「あ、はい」
ウッカリグラタン皿を触れてしまったのか「熱っ」となる真琴さんを横目に一心不乱にナポリタンを食う。
あの時、俺何を口走ろうとした?
『真琴さんの作るナポリタンの方が好きですよ』
今日の朝食も和食だ。
あの玉子焼きがまた食べれるかもしれないとワクワクしながら手早く着替えて顔を洗いに行った。
「おはよーございまーす」
「おはようございます」
ダイニングテーブルには昨晩の残りのおでんと玉子焼きがあった。
「真琴さん、何か手伝うことありますか?」
「え…と、じゃあ、お味噌汁よそってもらえるかな」
「了解っす」
キッチンに回ると真琴さんは小さなおにぎりを握っていた。
「紫陽くんはおにぎりの具、何が好き?」
「んー、ベタなんですけど、鮭とかツナマヨかな。でも、梅干しの酸っぱいはちょっと……真琴さんは?」
「僕も鮭好きだよ。でも、海苔だけ巻いた塩おむすびとかも好きなんだ」
「それ分かります」
真琴さんは小さなおにぎりを2個と一回り大きなおにぎりを3個握った。
「いただきます」
「海苔はお好みで巻いて食べてね」
おにぎりは鮭と塩おむすび。
俺は鮭2個と塩1個、真琴さんは鮭と塩1個ずつだ。
一目でわかるように鮭にはてっぺんに具が乗ってる。
なめこの味噌汁を一口飲んで口の中を潤してからおにぎりに齧り付く。
絶妙な握り加減のおにぎりは口の中でご飯が解ける。
「美味い。おにぎり握るのも上手なんですね」
「いや、普通だよ」
「そんなことないです」
「うーん、だとしたら、お弁当用によく作ってるからかな」
意外な発言におにぎりを食べる手が止まった。
「真琴さん、お弁当作ってたんですか?」
「ああ、うん。ほら、僕、量食べないから、この方が経済的に良いんだよね」
「いつの間に……」
「最近はレンチンで少量のご飯炊けるから朝食の準備の合間にやってるんだ」
まったく気付かなかった。
話を聞くと、真琴さんは同居前は朝ごはんを食べていなかったらしい。
食べてもおにぎり作ったあまりのご飯くらい。たぶん、粒レベルの量だ。
「コーヒー飲むとなんかいいかなってなるんだよね」
「それ胃に悪いやつ」
「はは…そう、かな」
真琴さんは俺に合わせてご飯食べてくれたんだ。量は少ないけど。
「紫陽くん、今日はバイト?」
「今日は休みです。うちのカフェ、オフィス街にあるから土日は基本暇なんで、出勤しても隔週なんです」
「紫陽くん、カフェで働いてるんだ。なんかモテてそうだね」
「あー否定はしません」
「ふふっ、素直でよろしい」
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
「ううっ、さ、寒いね」
真琴さんはダッフルコートに顔を埋める勢いで肩を窄めて震えている。
その姿はウサギみたいだ。
お互い予定がないということで、近隣周辺を散策することにした。
1ヶ月間だけとはいえ、自分が住んでる周辺のことが分からないのは何かあった時に困る。
実は、俺も駅までの道のりにあるコンビニとマンションの前にある酒屋くらいしか知らない。
真琴さんもスーパーや薬局くらいしか知らないらしい。
「駅ビル、こんなにデカかったんですね…」
「……うん。僕もまだまだ都心のこと舐めてたよ…」
都心の中心に行くには便利なとこだということは駅を利用していて理解していたはずなのに、駅ビルは盲点だった…。
気づけば3時間ほどグルグル回っていた。
流石に疲れたので駅前の路地に入ったところで見つけた純喫茶風の喫茶店に入った。
オシャレだが若者が入りそうなお店じゃないこともあって、6割ほどしか席は埋まってなかった。
まだランチタイムでもあったからご飯も食べることにした。
「しゃ、写真以上のボリュームだね…」
ランチタイム限定のグラタンセットの量に真琴さんは頬を引き攣らせた。
俺はナポリタンセット。
こっちもかなりのボリュームだが、俺には楽勝だ。
「真琴さん、残すなら俺食べるんで言ってくださいね」
俺は別途用意してもらった小皿に一口分のナポリタンを巻き付けて載せて、真琴さんの前に置いた。
ちなみに俺の一口分だから、真琴さんには二口か三口分くらいかな。
「えっ、紫陽くん、これ…」
「折角だからシェアしましょう。あ、グラタンは真琴さんが残したやつそのまま引き取るんで」
俺はナポリタンに取り掛かった。
程よいトマトの酸味とパスタがモチモチで美味い。
量も申し分ないから、また食べに来よう。
ズルズル食べながら真琴さんの様子を覗き見ると、状況を飲み込めなかったのか30秒くらいポカンとした後、フッと口角を上げて小さく笑うと手を合わせて「いただきます」と俺がよそったナポリタンを食べた。
「これ美味しいね」
「具もTHE喫茶店って感じが良いっすよね………でも、俺ーー」
「………俺?」
「真琴さん、手が止まってる。グラタンも出来立てが一番美味いんだから食べて」
「あ、はい」
ウッカリグラタン皿を触れてしまったのか「熱っ」となる真琴さんを横目に一心不乱にナポリタンを食う。
あの時、俺何を口走ろうとした?
『真琴さんの作るナポリタンの方が好きですよ』
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