上 下
123 / 159
第2部

2-55

しおりを挟む
頬っぺた痛い。
それ以上に足が焼けるように熱くて痛い。
みるみるうち腫れ上がった足首は紫に変色していた。
たぶん、今までで一番酷い捻り方をしてしまったんだろう。

この魔法の世界ならこんな捻挫も一瞬で治せる。
でも、今治してもらったらその魔法の反動でオレは大事な宴を欠席することになるだろう。
それだけはできない。

だから……。

淡雪くん、ごめん。
宴が終わるまで待って。

❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

コンコンコン

「歩夢先輩、準備できました?」
「アーユくーん、一緒に行こ」

イチゴくんに続いてキラピカくんとオオキミくんが部屋に入って来た。
昼間、パレードに参加した時とは違う違う衣装の3人は、照明を意識してか上から下までキラキラ王子様だ。

「うん。準備OKだ……わっ」
「歩夢先輩は歩いちゃダメです。会場までは僕が運びます」

「歩けるから」というオレの言葉は却下され、横抱きのまま一眼につかないルートで会場近くまで運ばれてしまった。


「みなの者、今日は我のため集まって感謝する。今宵は存分に楽しんでくれ」

王様のひと言で宴が開始した。
昼間は平民のために城下を一周するパレードだったが、夜は貴族のための宴だ。
オレはフロア奥に設置されたビュッフェ台の近くで食事を楽しみながら遠くから華やかな様子を眺めた。
ここは怪我をしたオレのために急遽設置してくれた場所で、近くにはいつでも休めるよう椅子も用意されている。
奥まった場所で目立たないおかげで誰も寄り付かないからすっげぇ楽でいい。

「何故、貴方がこんなところにいるのかしら?」

ローストビーフに舌鼓を打っているところにブリブリな声が聞こえて振り返る。

「ん?……んぐっ」

誰も見てないことをいいことに一気に詰め込んだオレは現れた相手に喉を詰まらせそうになった。
ドンドン胸を叩いて無理やり飲み込んでから振り返ると、教えてもらった作法でお辞儀した。

「ど、どうも……こ、こんばんわ……マリフェス様」

頭を上げると目の前で口元をセンスで隠しているお嬢様ーマリフェス様はグッと眉間に皺を寄せてオレを見た。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

完結・虐げられオメガ妃なので敵国に売られたら、激甘ボイスのイケメン王に溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

台風の目はどこだ

あこ
BL
とある学園で生徒会会長を務める本多政輝は、数年に一度起きる原因不明の体調不良により入院をする事に。 政輝の恋人が入院先に居座るのもいつものこと。 そんな入院生活中、二人がいない学園では嵐が吹き荒れていた。 ✔︎ いわゆる全寮制王道学園が舞台 ✔︎ 私の見果てぬ夢である『王道脇』を書こうとしたら、こうなりました(2019/05/11に書きました) ✔︎ 風紀委員会委員長×生徒会会長様 ✔︎ 恋人がいないと充電切れする委員長様 ✔︎ 時々原因不明の体調不良で入院する会長様 ✔︎ 会長様を見守るオカン気味な副会長様 ✔︎ アンチくんや他の役員はかけらほども出てきません。 ✔︎ ギャクになるといいなと思って書きました(目標にしましたが、叶いませんでした)

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て運命の相手を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ──────────── ※感想、いいね大歓迎です!!

っておい

シロ
BL
別に書いている小説、『エターナニル魔法学園特殊クラス』これに登場する人物の別伝になります。カテゴリーから色々察せると思いますが、あの子とあの人の出会いを書いたものです。こちらだけでも楽しめる内容になっております。 なぉ、登場人物の名前は・・・非常にわかりやすく繋がりがありますが、まだ歴史的要素はほとんどありません、皆無と言ってもいいです。 こちらのみでも楽しめます(大切なことなのでry)。

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

処理中です...