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番外編 瑠可/楓
番外編 Kaede-1
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瑠可と楓の話の、楓視点になります。
瑠可の視点の時の楓がどんなことを考えて行動していたのか、という話になります。
____________________
如月家にとって、オメガは特別な存在。
如月は嗅覚が鋭い一族で、その能力はオメガ性の方が高いからだ。
如月のオメガはオメガの子供を産みやすいことで有名だが、優秀なアルファを産むことでも有名だ。
故に、代々当主は能力の高いオメガが担うことになっている。
そして、その環境で育ったアルファは、オメガを大切にするように躾けられるため、番は特別な存在となる。
それが、如月に生まれた者のルール。
父は母と出会った時、「心が震えた」と言った。
母もそうだと言った。
それは【運命】だったのかもしれない。
俺にとっての【特別な存在】はまだ現れていない。
だから、まだ何もわからない。
心が震えるほどの想いも……。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
最初はただ要警戒人物とだけ思ってた。
夏休み最終日。
両親が寮に戻る弟を送るというから付き合った。
そこで会ったのは、弟のクラスメイトのオメガだった。
一見、可愛らしくて人懐こそうな子だが、初見から胡散臭かった。
三日月に細める瞳はどこか冷たく、一瞬、敵意を見せる。
警戒しておいた方がいい。
そんな奴だった。
それだけだった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
5つ下の弟とは血は繋がっていない。
俺が小学6年の時に、事故に巻き込まれて記憶をなくした結季を両親は引き取った。
両親は結季に自分たちを「叔父さん」「叔母さん」と呼ぶように言った。
いつか結季の取り巻く環境が改善されたら本当の両親の元に返すからだと言った。
でも、うちの子には変わらない。
結季はずっとお前の弟だ。
そう言われた。
だから、血の繋がりなんて関係なく結季は俺たちの大切な家族になった。
うちの一族は少し変わっている。
本家の当主はオメガで女性だ。
如月家のオメガは嗅覚が鋭く、特にフェロモンの匂いで相手の善悪を見分けることができる高い能力を持つ。
俺の父は如月の直系で、アルファだが嗅覚が鋭い。
俺もアフルァで父ほどではないが嗅覚が鋭い方だ。
だから、あの日に出会ったアイツ・瑠可を要注意人物と見なした。
その後、外で瑠可を見ることが増えた。
瑠可は従兄弟が経営するカフェの常連客だった。
「なあ、あいつ知ってる?」
そう聞くと、
「知ってるよ。見かける度に違うベータの男といて。相手はたぶんセフレだね。あ、俺、高校生はパスだけどね」
紫陽、お前の見立てと意見は聞いてない。
とか…
「可愛いからチェックしてたんですけど、なんか小悪魔っぽくて…。俺は天使みたいな子が好きっす」
遼平、お前の好みは聞いてない。
とか…
「沙也、あの子嫌ーい。沙也が目を付けてた子を盗ったんだもん」
沙也はもう少し身近な人間に目を向けるべきだと思うぞ。
そんな意見を元に1ヶ月ほど観察すると、確かに男が被ることはなかった。
カフェの中では楽しそうに笑っているのに、ふと見せる表情は少し寂しげだった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
次に対面したのは、12月の終業式。
両親と弟を迎えに行くと、玄関にいた。
弟を見送りに来た瑠可は、発情期の熱が残っていて少し濃いフェロモンを発していた。
その時に、他のオメガの発情期に当てられやすい体質だと知った。
更に次に対面したのは、冬休み明け。
父の代わりに弟を寮に送った時だ。
嬉しそうに出迎える姿と匂いからはもう敵意はなかった。
少し気になった。
1月はカフェで瑠可を見かけても1人でいることが多かった。
カフェで会って、カフェで別れる。
それ以外、瑠可はただぼーっと窓の外を眺めていた。
瑠可を見る俺の中から警戒はなくなって、ただ少し気になる奴になった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
瑠可に対する俺の気持ちが劇的に変化したのは、それから1ヶ月近く経った2月中旬。
従兄弟のカフェへからの帰り、何となしに気ままにぶらぶら歩いていた。
ふと何処かで嗅いだことのある匂いが俺の鼻が捉えた。
気になって、その匂いに導かれるように進むとラブホテルが立ち並ぶ通りに出た。
「な、にやってんだよ」
その先に見つけた人物に、苛立ち、舌打ちをして接近した。
瑠可の視点の時の楓がどんなことを考えて行動していたのか、という話になります。
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如月家にとって、オメガは特別な存在。
如月は嗅覚が鋭い一族で、その能力はオメガ性の方が高いからだ。
如月のオメガはオメガの子供を産みやすいことで有名だが、優秀なアルファを産むことでも有名だ。
故に、代々当主は能力の高いオメガが担うことになっている。
そして、その環境で育ったアルファは、オメガを大切にするように躾けられるため、番は特別な存在となる。
それが、如月に生まれた者のルール。
父は母と出会った時、「心が震えた」と言った。
母もそうだと言った。
それは【運命】だったのかもしれない。
俺にとっての【特別な存在】はまだ現れていない。
だから、まだ何もわからない。
心が震えるほどの想いも……。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
最初はただ要警戒人物とだけ思ってた。
夏休み最終日。
両親が寮に戻る弟を送るというから付き合った。
そこで会ったのは、弟のクラスメイトのオメガだった。
一見、可愛らしくて人懐こそうな子だが、初見から胡散臭かった。
三日月に細める瞳はどこか冷たく、一瞬、敵意を見せる。
警戒しておいた方がいい。
そんな奴だった。
それだけだった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
5つ下の弟とは血は繋がっていない。
俺が小学6年の時に、事故に巻き込まれて記憶をなくした結季を両親は引き取った。
両親は結季に自分たちを「叔父さん」「叔母さん」と呼ぶように言った。
いつか結季の取り巻く環境が改善されたら本当の両親の元に返すからだと言った。
でも、うちの子には変わらない。
結季はずっとお前の弟だ。
そう言われた。
だから、血の繋がりなんて関係なく結季は俺たちの大切な家族になった。
うちの一族は少し変わっている。
本家の当主はオメガで女性だ。
如月家のオメガは嗅覚が鋭く、特にフェロモンの匂いで相手の善悪を見分けることができる高い能力を持つ。
俺の父は如月の直系で、アルファだが嗅覚が鋭い。
俺もアフルァで父ほどではないが嗅覚が鋭い方だ。
だから、あの日に出会ったアイツ・瑠可を要注意人物と見なした。
その後、外で瑠可を見ることが増えた。
瑠可は従兄弟が経営するカフェの常連客だった。
「なあ、あいつ知ってる?」
そう聞くと、
「知ってるよ。見かける度に違うベータの男といて。相手はたぶんセフレだね。あ、俺、高校生はパスだけどね」
紫陽、お前の見立てと意見は聞いてない。
とか…
「可愛いからチェックしてたんですけど、なんか小悪魔っぽくて…。俺は天使みたいな子が好きっす」
遼平、お前の好みは聞いてない。
とか…
「沙也、あの子嫌ーい。沙也が目を付けてた子を盗ったんだもん」
沙也はもう少し身近な人間に目を向けるべきだと思うぞ。
そんな意見を元に1ヶ月ほど観察すると、確かに男が被ることはなかった。
カフェの中では楽しそうに笑っているのに、ふと見せる表情は少し寂しげだった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
次に対面したのは、12月の終業式。
両親と弟を迎えに行くと、玄関にいた。
弟を見送りに来た瑠可は、発情期の熱が残っていて少し濃いフェロモンを発していた。
その時に、他のオメガの発情期に当てられやすい体質だと知った。
更に次に対面したのは、冬休み明け。
父の代わりに弟を寮に送った時だ。
嬉しそうに出迎える姿と匂いからはもう敵意はなかった。
少し気になった。
1月はカフェで瑠可を見かけても1人でいることが多かった。
カフェで会って、カフェで別れる。
それ以外、瑠可はただぼーっと窓の外を眺めていた。
瑠可を見る俺の中から警戒はなくなって、ただ少し気になる奴になった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
瑠可に対する俺の気持ちが劇的に変化したのは、それから1ヶ月近く経った2月中旬。
従兄弟のカフェへからの帰り、何となしに気ままにぶらぶら歩いていた。
ふと何処かで嗅いだことのある匂いが俺の鼻が捉えた。
気になって、その匂いに導かれるように進むとラブホテルが立ち並ぶ通りに出た。
「な、にやってんだよ」
その先に見つけた人物に、苛立ち、舌打ちをして接近した。
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