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番外編 瑠可/楓
番外編 Luka-4
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あの日から、楓兄からの連絡が来なくなった。
ボクは早く謝ろうと思うのに、どうしていいのか分からなくて連絡できないでいる。
当たり前になっていた日常がひとつ無くなって、ボクの中にポッカリ穴ができたみたい。
その穴を塞ぐように篠崎さんからの連絡が増えた。
おはよう
おやすみ
今日、こんなことがあったんだ
今度、ここに行かない?
そんなささやかで温かいメッセージが届く。
おはようございます
おやすみなさい
今日はこんなことあったんです
今度、行ってみたいです
楽しいと返す言葉とは裏腹に、ボクの心は満たされなかった。
そうしているうちに、次の約束をした。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
「瑠可くんの学校はもうすぐ夏休みか。いいなぁ、僕も学生に戻りたい」
「うちの学園、偏差値高めだから、勉強大変なんですよぉ」
「ああ、ごめんごめん」
だいぶ砕けた会話ができるようになった。
篠崎さんは物知りでたくさん話をしてくれる。
とても楽しい。
今度、勉強見てくれるって言ってくれた。
楓兄はお勧めできないって言われたけど、篠崎さんに会ったこともないくせに、なんでそんなこと言ったのか分からない。
なんかちょっと腹が立った。
「瑠可くん」
「こんなタイミングであれなんだけど。告白の返事、もらえないかな?」
そうだ。
告白の返事。
ずっとこのままじゃいけない。
『それでも瑠可がソイツを選ぶのなら、大事にしてもらえ』
胸がツキンって棘が刺さったみたいに痛い。
ボクのこの態度が楓兄を傷付けたんだ。
このままでは篠崎さんも傷付けてしまう。
もう、誰も傷付けたくないな。
「篠崎さん。あの……ボクを大事にしてくれますか?」
「もちろんだよ。……えっ、瑠可くん、それって……」
ボクは決めた。
「はい、よろしくお願いします」
「ありがとう。ずっと大事にする。約束するよ」
ボクの手を取り満面の笑顔を向ける篠崎さんにニッコリ笑顔を返した。
ボクは篠崎さんを選んだ。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
夏休みに入ってすぐ、篠崎さんと会う約束をした。
恋人として初めてのデートだ。
この前、別れ際にキスをした。
ちょんって触れるだけのキス。
緊張で少し震えた。
「瑠可はそれでいいの?」
終業式の前日。
結季くんに篠崎さんとお付き合いをすることになったと報告したら、そう言われた。
「なんで?ほらカッコいいでしょ?ちょっと年上だけど優しくてボクのことを大事にしてくれるって言ってくれたの」
スマホで撮ったツーショット写真を見せるけど、結季くんの表情は固い。
「楓兄は?」
「なっ、なんで楓兄がここに出てくるの?」
「だって、瑠可は楓兄のことが好きなんだと思ってたから。楓兄も瑠可のことを同じように想ってるって」
「そんなわけない!楓兄はボクのことなんて弟としか見てないんだから」
思わず叫んだら、結季くんがビックリして目をまん丸にして固まった。
そうだ、あの好きは家族みたいに好きって気持ちだったんだ。
ボクは勘違いしそうになったんだ。
楓兄も、ボクのことを好きっていうのも弟みたいなものなんだ。
きっと、勘違いしてるんだ…。
「瑠可…」
「え…結季くん?」
結季くんに抱きしめられた。
「オレが言うのもアレだけど、オレ、瑠可のことすごく大切だから、番うのはちゃんと考えてから決めて…。瑠可のことを一番大事にしてくれて、瑠可が心の底から安心する人と番って欲しいって、オレは思ってる」
結季くんはそう言うと、背中をポンポンしてくれる。
楓兄もよくしてくれたそれは、楓兄とは強さが違うけどボクを安心させてくれた。
「ありがと……。結季くん、ボク大丈夫だよ。篠崎さん、ちゃんと大事にしてくれるって言ってくれたから……」
それで、その時が来たら番うよ。
そう言いたかったのに、涙が止まらなくて言葉にできなかった。
ボクは早く謝ろうと思うのに、どうしていいのか分からなくて連絡できないでいる。
当たり前になっていた日常がひとつ無くなって、ボクの中にポッカリ穴ができたみたい。
その穴を塞ぐように篠崎さんからの連絡が増えた。
おはよう
おやすみ
今日、こんなことがあったんだ
今度、ここに行かない?
そんなささやかで温かいメッセージが届く。
おはようございます
おやすみなさい
今日はこんなことあったんです
今度、行ってみたいです
楽しいと返す言葉とは裏腹に、ボクの心は満たされなかった。
そうしているうちに、次の約束をした。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
「瑠可くんの学校はもうすぐ夏休みか。いいなぁ、僕も学生に戻りたい」
「うちの学園、偏差値高めだから、勉強大変なんですよぉ」
「ああ、ごめんごめん」
だいぶ砕けた会話ができるようになった。
篠崎さんは物知りでたくさん話をしてくれる。
とても楽しい。
今度、勉強見てくれるって言ってくれた。
楓兄はお勧めできないって言われたけど、篠崎さんに会ったこともないくせに、なんでそんなこと言ったのか分からない。
なんかちょっと腹が立った。
「瑠可くん」
「こんなタイミングであれなんだけど。告白の返事、もらえないかな?」
そうだ。
告白の返事。
ずっとこのままじゃいけない。
『それでも瑠可がソイツを選ぶのなら、大事にしてもらえ』
胸がツキンって棘が刺さったみたいに痛い。
ボクのこの態度が楓兄を傷付けたんだ。
このままでは篠崎さんも傷付けてしまう。
もう、誰も傷付けたくないな。
「篠崎さん。あの……ボクを大事にしてくれますか?」
「もちろんだよ。……えっ、瑠可くん、それって……」
ボクは決めた。
「はい、よろしくお願いします」
「ありがとう。ずっと大事にする。約束するよ」
ボクの手を取り満面の笑顔を向ける篠崎さんにニッコリ笑顔を返した。
ボクは篠崎さんを選んだ。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
夏休みに入ってすぐ、篠崎さんと会う約束をした。
恋人として初めてのデートだ。
この前、別れ際にキスをした。
ちょんって触れるだけのキス。
緊張で少し震えた。
「瑠可はそれでいいの?」
終業式の前日。
結季くんに篠崎さんとお付き合いをすることになったと報告したら、そう言われた。
「なんで?ほらカッコいいでしょ?ちょっと年上だけど優しくてボクのことを大事にしてくれるって言ってくれたの」
スマホで撮ったツーショット写真を見せるけど、結季くんの表情は固い。
「楓兄は?」
「なっ、なんで楓兄がここに出てくるの?」
「だって、瑠可は楓兄のことが好きなんだと思ってたから。楓兄も瑠可のことを同じように想ってるって」
「そんなわけない!楓兄はボクのことなんて弟としか見てないんだから」
思わず叫んだら、結季くんがビックリして目をまん丸にして固まった。
そうだ、あの好きは家族みたいに好きって気持ちだったんだ。
ボクは勘違いしそうになったんだ。
楓兄も、ボクのことを好きっていうのも弟みたいなものなんだ。
きっと、勘違いしてるんだ…。
「瑠可…」
「え…結季くん?」
結季くんに抱きしめられた。
「オレが言うのもアレだけど、オレ、瑠可のことすごく大切だから、番うのはちゃんと考えてから決めて…。瑠可のことを一番大事にしてくれて、瑠可が心の底から安心する人と番って欲しいって、オレは思ってる」
結季くんはそう言うと、背中をポンポンしてくれる。
楓兄もよくしてくれたそれは、楓兄とは強さが違うけどボクを安心させてくれた。
「ありがと……。結季くん、ボク大丈夫だよ。篠崎さん、ちゃんと大事にしてくれるって言ってくれたから……」
それで、その時が来たら番うよ。
そう言いたかったのに、涙が止まらなくて言葉にできなかった。
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