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本編
2月 ② side Luca 1
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ここは…。
どうやってここまで来たのかよく覚えていなかった。
つい数時間前、ボクは失恋した。
叶わない想いだってことは分かっていた。
ボクの好きな人はあの子に出会ってから変わったから。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
今日はボクの誕生日で、やっと16歳になったんだ。
先輩が16歳以上しか抱かないって公言してたから、この日が来るのをずっと待っていた。
「先輩、ボク、今日誕生日で16歳になったんです。だからボク……先輩がーー」
「ごめん……。もう誰も抱かない………好きでもない奴を抱いたりする気はない」
そう言うと先輩は去っていった。
ボクは、告白すらさせて貰えなかった。
そこからどうやって此処に来たのか覚えてない。
制服のまま飛び出してしまった。
もちろん、外出許可なんて下りてない。
出してないんだから。
見慣れた街をトボトボ歩く。
平日だからスーツ姿の人が多い。
その流れを逆らって進むと、外出の度に寄るカフェにたどり着いた。
お店に入る人。出ていく人。
中で楽しそうに飲食を楽しむ人。
ドアに伸ばしていた手を引っ込めて後退る。
人にぶつかって、今度は人の流れに乗って歩き出す。
涙は出なかった。
「君、どうしたの?」
「おい、ナンパかよ。……って、コイツ、もしかしてオメガか?」
「マジでオメガ?すっげぇ可愛いし、なんかいい匂いもする。発情期なんじゃね?」
「発情期ならこんなとこいねぇべ」
「でも俺たちみたいなベータでもフェロモンわかんだからもうすぐなのかもな」
「じゃあ、俺たちで助けてやんないとな」
「うっわっ、エロオヤジかよ」
「ほら、横取りされる前に連れてこうぜ」
「だな」
頭の上で声がする。
肩に手が乗った?
背中にも手が当たって押されて足が動く。
しばらく歩いていると不意に止まった。
「此処でいっか」
視界にラブホの看板が見えた。
そうか……するんだ。
また背中を押され、一歩足が出た。
「おい、そいつをどうする気だ」
「っ……」
今度は背後から声が聞こえた。
すごく怒ってる?
「聞いてんだろ。どうするつもりだ?」
「はぁ?お前、このオメガの彼氏か?」
「違う」
「なら、関係ないだろ」
「関係なくはない。そいつは俺の弟の友達だ」
「くっ」
ボクの肩と背中から手がなくなった。
「瑠可?……おい、瑠可?……ちっ」
ボクの名を呼ぶ声がする。
温かい手がボクの手首を掴んで引っ張った。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
「……ああ……そうだ……うん、頼んだ」
ここはどこだろう?
ホテル?
そうか……。
「おいっ、何脱いでんだよ」
「するんでしょ。いいよ。ゴム持ってないならなしでもいいよ。ボク、もうすぐ発情期だけど、赤ちゃんできても責任取れとか言わないかーー」
「やんねーよ」
フワリと上着を肩に掛けられた。
森林の中にいるような、なんだかすごく落ち着くいい匂い。
「ボク、魅力ない?」
「そうじゃない」
「ボク、初めてじゃないよ。いろんな人たちとたくさんしてるし、みんな上手いって、気持ちいーって言ってくれるよ?」
「そうじゃない。そういうつもりで連れて来たわけじゃない」
「じゃあーー」
コンコン
ノック音がした。
「ちょっと待ってろ」
男は離れてノック音がしたドアを開けて何か話してすぐ戻ってきた。
「ほら、これ飲め」
「これ……」
「抑制剤だ。近いんだろ?匂いが落ち着いたら寮まで送る」
「やだっ」
差し出された錠剤を叩き落とした。
男は怒ることはなかったけど何も言わなかった。
視線が刺さる。
「も、もう、ボクを抱いてくれないなら、アンタなんか必要ない」
「ダメだ」
立ち上がろうとしたボクをいとも簡単にベットに戻す男を睨む。
「なんで邪魔するの?ボクは今めちゃくちゃにされたいんだ。気持ち良くなくてもいいんだ。痛い方がいい。たくさんして嫌なこと全部忘れたいんだ。だから、それをしてくれないアンタは要らないっ」
一気に捲し立てるボクに男は息を吐いた。
「……そうだな。俺はお前を抱かない。だってお前、本当はアルファ怖いだろ?」
「っ…」
「……ん。だから抱かない……けど、抱きしめてやるよ。お前の気が済むまで」
必死に震えを押さえるボクを、目の前の男ー如月楓ーは丸ごと抱きしめてきた。
「なっーー」
「はいはい、落ち着け」
赤ちゃんをあやす様に背中をポンポンされる。
怖いはずのアルファの匂いが優しく肺を満たし、心地よい振動が心を激しく揺さぶる。
「やだ、止めてよ……やめっ……」
「うん……やめない」
「やめ……ふ、ふっ…ふっ、ふぇぇ」
目から溢れた水滴を男の着ている服の肩口付近が吸って濡れる。
ボクはその服の裾を両手で固く握って、あの時出ることのなかった涙を流した。
__________________
長くなったので2つに分けました。
後半に続く。
どうやってここまで来たのかよく覚えていなかった。
つい数時間前、ボクは失恋した。
叶わない想いだってことは分かっていた。
ボクの好きな人はあの子に出会ってから変わったから。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
今日はボクの誕生日で、やっと16歳になったんだ。
先輩が16歳以上しか抱かないって公言してたから、この日が来るのをずっと待っていた。
「先輩、ボク、今日誕生日で16歳になったんです。だからボク……先輩がーー」
「ごめん……。もう誰も抱かない………好きでもない奴を抱いたりする気はない」
そう言うと先輩は去っていった。
ボクは、告白すらさせて貰えなかった。
そこからどうやって此処に来たのか覚えてない。
制服のまま飛び出してしまった。
もちろん、外出許可なんて下りてない。
出してないんだから。
見慣れた街をトボトボ歩く。
平日だからスーツ姿の人が多い。
その流れを逆らって進むと、外出の度に寄るカフェにたどり着いた。
お店に入る人。出ていく人。
中で楽しそうに飲食を楽しむ人。
ドアに伸ばしていた手を引っ込めて後退る。
人にぶつかって、今度は人の流れに乗って歩き出す。
涙は出なかった。
「君、どうしたの?」
「おい、ナンパかよ。……って、コイツ、もしかしてオメガか?」
「マジでオメガ?すっげぇ可愛いし、なんかいい匂いもする。発情期なんじゃね?」
「発情期ならこんなとこいねぇべ」
「でも俺たちみたいなベータでもフェロモンわかんだからもうすぐなのかもな」
「じゃあ、俺たちで助けてやんないとな」
「うっわっ、エロオヤジかよ」
「ほら、横取りされる前に連れてこうぜ」
「だな」
頭の上で声がする。
肩に手が乗った?
背中にも手が当たって押されて足が動く。
しばらく歩いていると不意に止まった。
「此処でいっか」
視界にラブホの看板が見えた。
そうか……するんだ。
また背中を押され、一歩足が出た。
「おい、そいつをどうする気だ」
「っ……」
今度は背後から声が聞こえた。
すごく怒ってる?
「聞いてんだろ。どうするつもりだ?」
「はぁ?お前、このオメガの彼氏か?」
「違う」
「なら、関係ないだろ」
「関係なくはない。そいつは俺の弟の友達だ」
「くっ」
ボクの肩と背中から手がなくなった。
「瑠可?……おい、瑠可?……ちっ」
ボクの名を呼ぶ声がする。
温かい手がボクの手首を掴んで引っ張った。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
「……ああ……そうだ……うん、頼んだ」
ここはどこだろう?
ホテル?
そうか……。
「おいっ、何脱いでんだよ」
「するんでしょ。いいよ。ゴム持ってないならなしでもいいよ。ボク、もうすぐ発情期だけど、赤ちゃんできても責任取れとか言わないかーー」
「やんねーよ」
フワリと上着を肩に掛けられた。
森林の中にいるような、なんだかすごく落ち着くいい匂い。
「ボク、魅力ない?」
「そうじゃない」
「ボク、初めてじゃないよ。いろんな人たちとたくさんしてるし、みんな上手いって、気持ちいーって言ってくれるよ?」
「そうじゃない。そういうつもりで連れて来たわけじゃない」
「じゃあーー」
コンコン
ノック音がした。
「ちょっと待ってろ」
男は離れてノック音がしたドアを開けて何か話してすぐ戻ってきた。
「ほら、これ飲め」
「これ……」
「抑制剤だ。近いんだろ?匂いが落ち着いたら寮まで送る」
「やだっ」
差し出された錠剤を叩き落とした。
男は怒ることはなかったけど何も言わなかった。
視線が刺さる。
「も、もう、ボクを抱いてくれないなら、アンタなんか必要ない」
「ダメだ」
立ち上がろうとしたボクをいとも簡単にベットに戻す男を睨む。
「なんで邪魔するの?ボクは今めちゃくちゃにされたいんだ。気持ち良くなくてもいいんだ。痛い方がいい。たくさんして嫌なこと全部忘れたいんだ。だから、それをしてくれないアンタは要らないっ」
一気に捲し立てるボクに男は息を吐いた。
「……そうだな。俺はお前を抱かない。だってお前、本当はアルファ怖いだろ?」
「っ…」
「……ん。だから抱かない……けど、抱きしめてやるよ。お前の気が済むまで」
必死に震えを押さえるボクを、目の前の男ー如月楓ーは丸ごと抱きしめてきた。
「なっーー」
「はいはい、落ち着け」
赤ちゃんをあやす様に背中をポンポンされる。
怖いはずのアルファの匂いが優しく肺を満たし、心地よい振動が心を激しく揺さぶる。
「やだ、止めてよ……やめっ……」
「うん……やめない」
「やめ……ふ、ふっ…ふっ、ふぇぇ」
目から溢れた水滴を男の着ている服の肩口付近が吸って濡れる。
ボクはその服の裾を両手で固く握って、あの時出ることのなかった涙を流した。
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長くなったので2つに分けました。
後半に続く。
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