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本編
12月 ① side Keito
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先月の頭。
皇貴にある報告をした。
「如月結季の過去ですが、如月家に引き取られる以前のことは分かりませんでした」
「……そうか」
「申し訳ありません」
「お前が謝ることじゃないだろ。謝るならむしろ俺の方だ。悪かったなこんなこと頼んで」
「……いえ」
深々と頭を下げる私に、逆に皇貴が頭を下げ謝罪した。
お互い頭を下げることで私の顔を見られることがなくて良かったと思った。
私は父ほどのポーカーフェイスを保つことがまだできない。
嘘をついたからだ。
父から如月結季について報告を受けた時、口止めをされた。
そもそも、父がこの情報をどのように入手したのかは分からない。
探偵を雇っただけで得ることはできないことから、父にしかできない方法で情報を得たのだろう。
アルファの父はとても優秀だ。
頭脳も身体的にも他のアルファより秀でている父は、特別なアルファなのかもしれない。
息子の頼み事とはいえ協力してくれたのは、父の直感で必要と感じたからだろう。
実際、私に口止めをさせた情報は、現段階では皇貴に伝えるべきてはないと感じた。
その上で、私は行動を起こした。
今まで制限することがなかった、学園祭でオメガの生徒の写真を撮ること、それをSNS等に上げることを全面的に禁止した。
過去を遡って、制限することがなかったため写真を上げられたオメガの生徒が外出時に見知らぬ男たちに襲われたことが度々あったそうだ。
中には強制的に発情されられたうえ、アルファに項を噛まれ望まない番契約を結ばれた生徒もいたと聞く。
単に、この学園に通うオメガが優秀だからだ。
カーストの最下層と云われるオメガだとしても、アルファの子供を産む能力が高く、アルファと肩を並べるほどの頭脳を持っているのであれば喉から手が出る程欲しがる人間は多い。
だとしても、道具とでしか見られず、不要になれば捨てられるのがオメガだ。
それもあり、ここ数年でオメガの生徒に対する外出規則が厳しくなった。
3年間、帰省以外の外出が出来なかった生徒も少なからずいたほどだ。
そうやって守ろうとしても、一度写真が流出してしまっては意味がない。
特にオメガとして目覚めてしまった結季は、バースを問わず人を惹きつける。
そんな彼を、彼の過去に関わる人間の目に留まる訳にはいかない。
今回の学園祭は直前に決めたことにも関わらず、徹底することができた。
今のところ、写真の流出は少なく、その中に結季の写真はなかった。
初日に結季が絡まれることはあったが、皇貴のおかげて事なきを得た。
ひとつ気になることはあったが、概ね成功したと言って良いだろう。
正直、結季については皇貴が彼の番になってくれれば解決する話だと思っているのだが、2人とも自分の気持ちに鈍感すぎるところがある。
結季は仕方がないとしても、皇貴にはいい加減目覚めて欲しい。
「はああぁぁぁぁ」
自分しかいない生徒会室で生まれて初めてだろう盛大なため息を吐いて、手元の書類に改めて目を通す。
表題に“報告書"と書かれたその書類は、生徒会役員が纏めた学園祭についてものだ。
何度も目を通したそれに、今一度目を通す。
ある一点がどうしても引っかかる。
1年のオメガの生徒が、怪我をしたというのだ。
とはいえ、どの生徒も小さな切り傷ひとつで軽傷だが、その傷口はどれも鋭利な刃物が当てられたように見えると報告書に記載されていた。
だが、来場者の手荷物検査では、そのような刃物を所持していた者は居なかったともあった。
生徒に痛みも感じさせることなく傷を付けることに何の意味があったのだろうか?
そして…
「何故、一年のオメガの生徒だけなんだ?」
嫌な予感で心臓の音がドクドク耳に響く。
父に相談するべきかもしれない。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
「そうか……やっと見つけた………」
皇貴にある報告をした。
「如月結季の過去ですが、如月家に引き取られる以前のことは分かりませんでした」
「……そうか」
「申し訳ありません」
「お前が謝ることじゃないだろ。謝るならむしろ俺の方だ。悪かったなこんなこと頼んで」
「……いえ」
深々と頭を下げる私に、逆に皇貴が頭を下げ謝罪した。
お互い頭を下げることで私の顔を見られることがなくて良かったと思った。
私は父ほどのポーカーフェイスを保つことがまだできない。
嘘をついたからだ。
父から如月結季について報告を受けた時、口止めをされた。
そもそも、父がこの情報をどのように入手したのかは分からない。
探偵を雇っただけで得ることはできないことから、父にしかできない方法で情報を得たのだろう。
アルファの父はとても優秀だ。
頭脳も身体的にも他のアルファより秀でている父は、特別なアルファなのかもしれない。
息子の頼み事とはいえ協力してくれたのは、父の直感で必要と感じたからだろう。
実際、私に口止めをさせた情報は、現段階では皇貴に伝えるべきてはないと感じた。
その上で、私は行動を起こした。
今まで制限することがなかった、学園祭でオメガの生徒の写真を撮ること、それをSNS等に上げることを全面的に禁止した。
過去を遡って、制限することがなかったため写真を上げられたオメガの生徒が外出時に見知らぬ男たちに襲われたことが度々あったそうだ。
中には強制的に発情されられたうえ、アルファに項を噛まれ望まない番契約を結ばれた生徒もいたと聞く。
単に、この学園に通うオメガが優秀だからだ。
カーストの最下層と云われるオメガだとしても、アルファの子供を産む能力が高く、アルファと肩を並べるほどの頭脳を持っているのであれば喉から手が出る程欲しがる人間は多い。
だとしても、道具とでしか見られず、不要になれば捨てられるのがオメガだ。
それもあり、ここ数年でオメガの生徒に対する外出規則が厳しくなった。
3年間、帰省以外の外出が出来なかった生徒も少なからずいたほどだ。
そうやって守ろうとしても、一度写真が流出してしまっては意味がない。
特にオメガとして目覚めてしまった結季は、バースを問わず人を惹きつける。
そんな彼を、彼の過去に関わる人間の目に留まる訳にはいかない。
今回の学園祭は直前に決めたことにも関わらず、徹底することができた。
今のところ、写真の流出は少なく、その中に結季の写真はなかった。
初日に結季が絡まれることはあったが、皇貴のおかげて事なきを得た。
ひとつ気になることはあったが、概ね成功したと言って良いだろう。
正直、結季については皇貴が彼の番になってくれれば解決する話だと思っているのだが、2人とも自分の気持ちに鈍感すぎるところがある。
結季は仕方がないとしても、皇貴にはいい加減目覚めて欲しい。
「はああぁぁぁぁ」
自分しかいない生徒会室で生まれて初めてだろう盛大なため息を吐いて、手元の書類に改めて目を通す。
表題に“報告書"と書かれたその書類は、生徒会役員が纏めた学園祭についてものだ。
何度も目を通したそれに、今一度目を通す。
ある一点がどうしても引っかかる。
1年のオメガの生徒が、怪我をしたというのだ。
とはいえ、どの生徒も小さな切り傷ひとつで軽傷だが、その傷口はどれも鋭利な刃物が当てられたように見えると報告書に記載されていた。
だが、来場者の手荷物検査では、そのような刃物を所持していた者は居なかったともあった。
生徒に痛みも感じさせることなく傷を付けることに何の意味があったのだろうか?
そして…
「何故、一年のオメガの生徒だけなんだ?」
嫌な予感で心臓の音がドクドク耳に響く。
父に相談するべきかもしれない。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
「そうか……やっと見つけた………」
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