ボッチ英雄譚

3匹の子猫

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第52話

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 僕たちは王都に戻ってきました。

馬車を返却し、鳳凰のしらべのことを衛兵に説明し、彼女たちの身柄を預けました。

それからすぐに死竜草の花びらを納品する為にラルクさんの屋敷を訪れました。



「おお!よく戻ったな!!しかし、何故3パーティー一緒に戻ってきたのだ?」


ラルクさんの質問にフィヨルドさんが代表して答えました。


「ただいま戻りました。死竜の山で色々とあって、仲良くなりました。今回の依頼を無事に達成できたのもここにいるロンのお陰です!

彼はまだCランクでありながら、既に実力はSランクと変わりません。今回の依頼も始めに花びらを入手したのは彼です。

そして彼の助言を得ることで我々ドラゴンバスターと疾風迅雷は花びらを入手できたのです。」


「なんとも信じられんが、Sランク冒険者のドラゴンバスターが言うのだ!間違いないのであろう。

それでは花びらをもらおうか。」


「「「こちらになります。」」」


僕たちは、3パーティー同時に提出しました。



 すぐにラルクさんのお抱えの鑑定士が花びらを確認していき、問題ないと認定されました。


「ご苦労だった!依頼の成功はすぐにギルドに通達しておく。白金貨はロンでいいのだな?」


「はい!間違いありません。」


「ではまた何かあればよろしく頼むぞ!」


「「「はい!」」」



 僕たちが挨拶をして部屋を出ようとしていたその時、執事の男性が慌てた様子で部屋に駆け込んできました。


「ご主人様、大変でございます!!サファイア様が先ほど発作を起こされました!先生がもう時間がないと言っておられます。急いでサファイアのところへ!!」


「何!?だが、間に合ったのだ!今死竜草の花びらが届いたところだ!!これでサファイアは救われるのだ!!」


「誠であられますか!それならばすぐに薬師のレイモンド卿をお呼びします!」


「あー。急ぐんだ!!ここからは時間との勝負だ!」


「ラルク様、何やら大変そうですので、我々はこれで失礼致します!」


「あー。ご苦労であった!」


 今度こそ僕たちが部屋の外に出てこの場を去ろうとしていると、再び先ほどの執事が走ってきました。


「ご主人様、大変でございます!レイモンド卿の行方を調べましたところ、本日娘様の婚儀の為に王都を離れているようでございます!!」


「な、何だと!?では仕方ない!他の優秀な薬師を探せ!!事は一刻を争う!」



うー。僕なんて薬師の卵みたいな人間が口を出していいことではないのだろうけど…


「ラルクさん、少しよろしいでしょうか?」


「ん?ロンか?すまないが今は相手をする暇がない!用があるのならまたにしてくれんか?」


「僕は調合のスキルを持っています。必要な薬は何という薬なのでしょうか?」


「は?何を言ってるのだ?お前は戦闘職だろーが?」


「僕のジョブは特殊なもので、生産職も戦闘職もできるんです。現在調合のスキルはレベル10ですが、今の僕に作れるかは分かりませんが、お急ぎのようでしたので確認せずにはいられませんでした。」


「本当にお前は不思議な奴だな?だが、今は急ぎなのは間違いない!必要な薬は霊薬シクレーションだ!作れそうか?」


「先ほどお渡しした花びらをお貸しください。」


「どうするのだ?」


「薬草鑑定で調合に必要な情報を調べます。」



霊薬シクレーション
体の循環を整える霊薬。魔石病の薬として開発された。

死竜草の花びら3枚、ハトムギ草の実2つ、ドクダミ草の葉3枚をゆっくりと調合すればできる。調合時に魔力を込めれば込めるほど効果は高まる。


「サファイアさんは魔石病なのですか?死竜草の他にハトムギ草の実とドクダミ草の葉が必要なようですが、揃っていますか?」


「もちろんある!それが分かるということはお前の言ってることは本当のようだな!!幸い、死竜草の花びらは霊薬シクレーション3つ分はある。試しにロンが1つ作ってみてくれ!!」


「分かりました。」


 僕も急ぎだろうと慌てていたことから、この時調合に必要な道具を異空間収納から無意識に取り出していました。



「すいません!集中したいので僕を1人にしてもらえませんか?」


「あー勿論だ!頼んだぞ!!」



 部屋に1人になった僕は、ひとまず自分の持っていた余りの花びらを取り出しました。依頼は花びら3枚だったので余っていたものを先ほど納品する直前に箱から取り出しておいたのです。


ギルドで売れるかもと思ってたけど…人の命が懸かっているみたいだし、初めて作る薬…まして霊薬と呼ばれるほど難しいな薬です。練習も必要だと思ったのです。


早速作成を始めました。魔力を込めれば込めるほど効果が高まるとあったので、魔力を全力で込めながら作成しました。


しかし、結果はいまいちでした。


出来上がった霊薬を鑑定すると


霊薬シクレーション
ランク A
効果 体の循環を整える霊薬。魔石病の薬として開発された。
評価 H


と、一応は作れていますが、評価がHと最低評価でした。


今ので調合のレベルが11に上がったし、なんとなく改善点も分かりました。

魔力を全力で込め過ぎたことにより、魔力の放出量にムラが生じ、出来が荒くなってしまったのです。調合とは繊細な作業となるので、全ての材料に一定の魔力を平等に注ぎ込まなければいい薬は完成しないのです。



よし!次は本番だ!!絶対にいい薬を作るぞ!!!



 今度は魔力の込める力を8割程度に落とす代わりに魔力の循環を意識しながら調合をしました。結果は歴然でした!!


霊薬シクレーション
ランク A
効果 体の循環を整える霊薬。魔石病の薬として開発された。
評価 C


やった!これなら文句なしの出来です♪
早速、霊薬シクレーションをハイドさんに渡しましょう!!



「ラルクさん、お待たせしました!無事に完成しました。」


早速、霊薬シクレーションをハイドさんに手渡しました。


「そうか!!鑑定を急げ!!」


「大丈夫です!かなりよい薬です!!」


「そうか!ではサファイアのところへ急ぐぞ!!

念の為、ロンも一緒についてきてくれ!!!」


「僕もですか?」


「もし万が一薬が足りなかった時にはもう1つ作ってもらわねばならないかもしれないからな!!」


「分かりました。」


ラルクさんたちに連れられて到着した部屋には、僕とそう変わらないくらいの年齢の女の子がいました。彼女の顔も体も表面の殆どが真っ黒な魔石のように変質してしまい、その姿は無機質なまるで人形のようにすら見えるほどでした。


「先生!薬だ!!サファイアを救ってくれ!!!」


「ラルクさん…少し…ほんの少しだけ遅かった!!サファイアさんは先ほど激しい発作を起こし、体の殆どが魔石化してしまいました。

今の彼女では、その薬を飲むことすら叶わないでしょう。おそらくはあと1時間も生きられぬでしょう…」


「そんな!!何故だ?薬さえあれば助かるのではなかったのか?」


「薬がどんなに素晴らしいものでも、その効果が発揮出来なければどんな薬でも意味はないのです!!」


「そ、そんな……」


ラルクさんはその場で崩れ落ちてしまいました。


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