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十発目 嵐の夜

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 ここは王都の宿だ。俺たちに用意されたのはこの小さな部屋だけ。部屋に小さなベッドがポツンと置かれている。外は凄まじいまで豪雨だ。今晩はここで過ごす他あるまい。俺とメイドのアリサのふたりで。何でこのようなことになったか?時間を過去に戻して振り返るとしよう。

 食材などを買い出しに俺とアリサは王都に向けてともに馬に乗り向かった。我が邸宅は王都を見下ろすように丘の上に建っている。食材もろもろが無くなってきたのでアリサが馬で買い出しに出ると言い出した。途中の山道で山賊のような連中に襲われる可能性もなくはない。というわけで俺も同行することに決まった。とはいえ本音は屋敷の中ではアインスとエレンの姉妹に絶えずつきまとわれ落ち着かないためそこから解放されたいというのがあった。

 ミルヒから必要なもののリストを渡され俺たちは王都へ向けて馬を走らせた。途中アリサはほとんど口を聞いてくれなかった。彼女なりに溜まっているものがあるのだろう。俺は途中、木々の間から降り注ぐ日差しや羽ばたく虫たちを眺めながら馬を走らせた。

 ミルヒから頼まれた食材や調味料や花の種などは市場で大方、入手することが出来た。


「もうちょっと寄り道してもいいかな?」

「ええ、お好きに」

 婦人服店で俺はミルヒ、アインス、エレンに似合う服を選ぶ。アリサの助言に従って。このためにアリサに同行してもらったのだ。

「ところでアリサ、お前に似合う服も買ってあげようと思うんだが」

「私にはいいですよ。どうぞお気遣いなく」

 アリサは伏し目がちに答える。

「あら、お嬢さん。試着してみる?」

 全身を装飾品で派手に飾り厚化粧の店のおばちゃんが出てくる。今日はアリサはいつものメイド服ではなく外行きの服を着ているため恋人か何かだと思ったのだろう。

「あら、やっぱり似合うじゃない」

 試着を終えたアリサにおばちゃんが声をかける。紫のワンピースがアリサのスラリとした身体を引き立たせている。

「うん、それも買って帰ろう」
「あ、ありがとうございます」

 アリサはうつむき気味に礼を言う。婦人服店を出て帰路につこうとしたところ空模様が急激に変わる。灰色の雲が空一面を支配し神様が風邪を引いてくしゃみでもしたかのように辺り一面に雷雨が降り注ぐ。俺たちは仕方なく目についた宿に逃げ込んだ。

「この雨を避けるためにお客様が殺到しましてね。どの部屋も埋まっておりまして。ご用意できるお部屋といえば単身のお客様用の小さなお部屋となりますがお二人様には窮屈かと」

 ちょび髭の宿の番頭は言う。

「それでも構わないから用意してもらえますか」
「かしこまりました」

 それで通されたのこの部屋だ。簡潔なベッド一台に机と椅子があるだけの確かに単身向けの質素な部屋だ。とりあえず天気が良くなるまでの避難所とするか。

 窓の外は相変わらず豪雨が降り続けており神様はなかなか機嫌を直してくれそうにない。馬たちは宿に備え付けの厩舎に入れてある。俺は椅子に腰かけ机に頬杖をついて外を眺めている。アリサはベッドに腰かけて所在なさげにしている。

「なかなか止みそうにないなあ」
「ええ」
「ここで一晩明かすことになるかもなあ」
「シュヴァンツ様とですか・・・」
「嫌?」
「いえ、そんな・・・」

 ここは宿の中にある食堂。レストラン並みとはいえないが宿泊客に料理や酒が振る舞われる。テーブルに座った俺の前ではアリサがジョッキに入ったワインをぐびぐびと飲んでいる。お前もどうだとすすめたの俺だがアリサははじめは遠慮がちだったもののだんだんと酔いが回るにつれ手が止まらなくなりつつある。

「ったく!何れあんな田舎の町娘の姉妹なんか引っ掛けたんれすかー!あのふたりマナーも作法もあったものじゃない!奥様の植えたお花を勝手に抜いちゃうし、泥だらけの脚で屋敷の中をうろつくし!掃除するのあたしなんれすよー!」
 
 アインスとエレンのことか。アリサは日頃の鬱憤を酔った勢いで俺にぶちまける。

「シュヴァンツ様が鼻の下伸ばして甘やかすからいけないんれすよー!」
「わかったよ。俺からも注意しとくから。もうちょっと飲み過ぎじゃないか。部屋に戻って休もう」 

 アリサに肩を貸し立たせるとそのまま部屋まで連れて帰る。部屋に戻りドアを閉めた途端アリサは俺に口づけしそのままベッドに押し倒す。

「シュヴァンツ様、駄目じゃないですか。妻帯者だというのに・・・」

「言ってることとやってることが逆じゃない?・・・んぐっ・・・」

 アリサはそう言う俺の口を唇で塞ぐ。抵抗する間もなく舌が挿入してきて俺の口腔内をかき回す。アリサが口を離すと唾液の糸が引く。アリサは寝ている俺を下に仁王立ちになりその白い素脚の先で俺の股間をもて遊ぶ。

「あっあっ」
 
 思わず変な声が漏れる。アリサはそんな俺を見て不敵な笑みを浮かべている。酔っぱらってすっかり人格が変わってしまったたようだ。いや、これが彼女の本質なのか。アリサはその白い脚のつま先を俺の顔面には突きつけこう言った。
 
「舐めて」



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