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異世界 シャーシード国
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しおりを挟む孤児院の中へ戻った僕達は、バザーの準備を頑張った。
リンは、大きなパネルを何枚も仕上げては乾燥がてら孤児院の壁に飾った。
それからポスターを何枚も描き、貴族の特権で貴族御用達の商会へ何枚も貼らせて貰った。
僕はその間に繕い物と刺繍に精を出す。
この国には男しか居ないので、全員が全員シャツにズボン。
まぁ、デザインはいろいろだけれども。
なので、僕はひたすら襟にワンポイントの刺繍をした。
そして…当日。
バザーは大盛況だった。
開始前から大行列ができており、ゴリマッチョシスターことゼーさんは大興奮だった。
僕は、午前中の数時間を襟元に刺繍するために使った。
夫の左襟と妻の右襟に対の刺繍をしたり、異世界語のイニシャルを刺繍したり、家紋だったり……
待っててもらう間にいろいろこの国のことを教えてもらう。
特に、シーシャが亡くなったあとのことだ。
この世界の中で、メス─女─がいる国はとても少ないらしい。
オス─男─同士だと魔術の作用もあって子が授かりにくいため、とにかくヤりまくるらしい。
けれど、メスが相手の場合は子ができやすいらしく、奴隷のようにただ子を産むための道具として過ごすうちに、生まれにくい存在となったそうな。
いろいろあるんだなぁ。
それから、この国の王について。
この国では順番に公爵家から嫁いで行くそうだ。
…ってコトは、リンって公爵家?
うわぁ、昨日はリンのお母様にペコリ程度の挨拶しかしていない。
ヤバ! それって社会人としてどうなんだよぉ。
……で、バザーは終わった。
バザーの最中、リンの家の家紋付きの馬車が城へ向かったのは見た。
聞けば無事に城内へ入ったそうで、公爵家の馬車は無事に公爵家へと帰って行ったそうだ。
僕はゼーさんや子どもたちに別れを告げると、城を目指した。
今日店番をしながら、修復不可能なボロボロのドレスシャツでリボンをたくさん作った。
リボンの端には花の刺繍をしたのだが、それを城内で売る商人を装えば、城内へ入り易いだろうと考えたのだ。
城内は、王太子の婚約者を迎えたワリに静かだった。
僕は、王太后様のところへ通された。
王太后様の居室に進むと、僕は跪き、リボンを掲げ持つようにして首を垂れた。
王太后様の側付きが寄ってきてリボンを検分すると、やっと、
「面を上げ~!」
号令がかかり、顔を上げた。
すると、王太后様は言った。
「あぁ、本当に!召喚されたのねぇ。」
「え……?」
「あぁ。わたしもそうなんだ。わたしも、日本の、ごく平凡なサラリーマンをしていたよ。
それが急に異世界転移してしま…いや、させられてしまってね……」
「僕と同じ……?」
王太后様は頷いた。
「この国の王家はね、王太子の期間は毎回、ダンネスの記憶を継ぐの。
それでその記憶に飲まれると、シーシャの記憶を少し受け継いだ人間を、召喚して自分のものにしようとするの。」
「え……」
「記憶に飲まれず、ちゃんと自分を持っている人間は、きちんと婚約者と婚姻して皆素晴らしい王になっているのよ?
でも、そうじゃない者は…
私の代は王妃様が亡くなって、愛妾から繰り上がりの王妃になってしまったのだけど。
ねぇ、貴方、ダリンスの婚約者であるリンジェルドと一緒に、この国を治めてみない?」
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