縦ロールができない

325号室の住人

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王妃教育

   3 (終)

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ラライラ 15歳・3


深夜のこと…
何かの気配に、私は目を覚ました。

シャノンが閉めてくれたはずの枕から1番遠い窓辺で、カーテンが揺れている。

トトンッ

その窓をじっと見つめていれば、テラスから誰かが侵入してきた気配がした。

私はルイがやって来たのだと思って、でも隣からはスヤスヤ時々ガーガーと、ルイの寝息が聞こえて来ている。
流石に賊の場合に王太子を盾にするのは世間体が悪いので、ベッドサイドにあった小さな燭台から蝋燭を外し、背後に隠しながら、1歩、また1歩と、ゆっくり窓の方へ近付いて行った……

………………のだが、

どうやら2人組だったようだ。
あっという間に前後を挟まれると、大きな力強い手に腕を引かれ後ろからは大きな手に口を塞がれて、丁度真ん中にあった窓からテラスへと出されてしまった。



外は大きな満月でとても明るかったけれど、何故か2人の男たちの姿が見え難かった。
とりあえず離してもらえ、私は自由に動くことができた。

「魔法…なの? もしかして、猫獣人の?」
「…………そうさ。俺たちはあのルイートの兄にあたる王子だ。」
「ただし、色合いは母の血が強く出て黒髪に褐色の肌をしてる。成人と同時に暗部に引き込まれ、今は影として仕事をしている。」

2人が頭巾を外すと、確かに黒髪に褐色の肌の彫りの深い良く似た男が2人、私の目の前に立っていた。
向かって右には、右目が碧眼、左目が金眼の男が。
向かって左には、右目が金眼、左目が碧眼の男だ。

異国の風を感じるイケメンに、私の心は踊る。
しかし、私にはどうしても確認しなければならないことがあるのだ。

「ねぇ。私…やっぱり殺されるの?」

すると、左目が金眼の男が答えた。
「いいや。」
右目が金眼の男が続ける。
「処分するべきは、ルイートだ。」
「お前もきっと知らないのだろうと思うが…」
「この世界は、剣と魔法の世界で人口のほとんどが猫獣人なんだ。」
「俺たちも、昨年まではこの人間の国の影をしていたのだがな。」
「猫獣人が治めるのは巨大な一国家なのだが、各地方を治める役人どもが度々話し合っては様々なことを決めていてな。
そこで先週決まったのが、《ろくでもないルイートに王位が回る前に、ルイートを処分してこの国を解体すること》なのだ。」

私が欠片も知らない壮大な話に、頭がクラクラしてくる。
でも私にはちゃんと伝えなければならないことがあった。

「あのっ! 私もその国に連れて行ってください!!」
「私も、王子の体内に薬を仕込んだら追い掛けます!」
「「わかった!」」

突如窓から顔を出したシャノンも同道し、私達は猫獣人の治める国へ行ことになったのでした。





ラライラ 〇〇歳

「お父さん、おかえりなさぁい!!」
「こら、こっそり帰ってきたんだから内緒にしておけ!」
「はぁい。」
「ただいま、ララ。」

チュッ



あれから、無事に猫獣人の国に入国して国民になった私。

実は国民と婚姻関係にある方が入国しやすいとかで、私は右目が金眼のシードと、シャノンは左目が金眼のセードと婚姻してから入国したのでした。

ちなみに、私がこの国の国民になるために出た国王様からの条件はただ1つ。

《猫らしく暮らすこと。》

なので入国からこっち、私は猫耳カチューシャを外すことなく…

「ひゃん! 子どもたちが起きてる時間はダメなのぉ。」
「でも、今年の分の子づくりができてない。半年の妊娠期間で一気に3人は産むシャノンとは違うんだ。こうして仕事の合間に帰って来ないと、間に合わないし…
何より俺がラライラを愛でたいんだ。」

チュッチュッ…
「あ…ぃやあ……」

シードは私に深いキスをしながら、フィンガースナップで魔法を発動させて5人の子どもを実家へ送り届けた。

「今日は夜まで休暇をもぎ取ったんだ。昼寝なんてさせないぜ。」
「いやぁ~ん!!」




こうして、《縦ロールができない》ことに悩んでいた悪役令嬢だった私・ラライラは、猫獣人の国でたくさんの子や孫に囲まれて、幸せに暮らしましたとさ。



      おしまい
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