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本編
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しおりを挟む「……んぅっ」
──ヤバッ、寝てた…
目が覚めると僕は1人、お嬢様の部屋のふかふかソファに転がっていた。
どうやら、お嬢様からイードへ戻る途中で眠ってしまっていたようだった。
「ふんっううううーーー! はぁ…」
伸びのち脱力してから立ち上がる。
念の為猫足の椅子があるドレッサーへ近付くと、見覚えのある黒髪黒目の小柄な男が佇んでいた。僕だ。
黒髪黒目は嫌でも前世を思い出させる上、この世界でも良かったと思ったことはない。
前髪で瞳を隠すようにして、再び鏡を見ると、
──え…コレ……
首筋に昨日の《印》を見つけ、頬が自然と熱くなってしまう。
──ハイド様…
瞼を下ろし、この《印》を受けた時のことを思い出せば、自然と笑みがこぼれた。
お嬢様の部屋をノックして開けてみるけれど、枕元の小さな灯りのみで中は無人…いや、存在感なく眠り続けるお嬢様のみだ。
昨日のキャルルの読みは当たっていた。
お嬢様は昏々と眠り続けたまま、目を覚まさないそうだ。
僕はできるだけ音がしないように寝室の扉を閉めると、廊下へ続く扉も閉め、廊下で任務中の既婚の護衛騎士に一礼すると、ハイド様の私室へと向かった。
時間としては陽が傾きかけた頃。
ノックして名乗ると、開いた扉から腕がニュッと伸びて中へ引き込まれ、あっと言う間に抱き締められた。
僕を包む熱と匂いに安心する。
ハイド様だ。
僕はされるがままに抱き締められ続けながら、
「朝は、申し訳ありませんでした。その、仕事の時間になってしまいまして…」
と言うと、
「仕事なら仕方あるまい。けれど……」
チュッ
額にキスが落ちて来た。
「私のイードだろう?」
真っ直ぐに僕を見下ろすハイド様は、懇願するように僕を見つめる。
僕も、ハイド様を見つめ返して言う。
「はい。僕イードは、ハイド様のイードです。」
それから、しがみつくようにしながら背伸びをして、ハイド様の顎先へ、唇を触れさせた。
唇が離れると、ハイド様が耳元に囁く。
「今から、本当にイードを私のものにしても良いだろうか。」
「……はい。」
僕の答えと同時に、ハイド様は僕を抱き上げて長椅子へ押し倒し、足の上に跨る。
これから始まるもろもろに、僕はたぶん緊張で顔が引きつっていると思う。
ハイド様は、僕から視線を逸らさないままだ。
少し充血したギラギラとした瞳。宝石のように綺麗な瞳なのに、僕は体が固まったように動けなくなった。
シャツのボタンを3つ外したところで袖口のボタンを外し、シャツを脱ぎ捨てるハイド様の上半身は、筋肉の隆起1つとっても綺麗で見惚れてしまうほど。
対して僕はと卑下するも、ハイド様は微笑んで、
「安心して良い。優しくする。」
それから僕の頬を撫で、顎を掬うと、甘い表情のハイド様が降りてきて、僕の唇と重なった。
チュッ…
小さなリップ音、唇と唇の軽い触れ合い。
一度顔を離したハイド様は、少し引きつらせつつ口角を上げると、
「緊張してきた。」
と自嘲気味に笑う。
「やっとイードと繋がれる。実は仕事中もそればかり考えていた。」
興奮気味の早口の口調に合わせて、僕の太腿と接しているハイド様のイチモツも、幾枚もの布越しながら怒張が始まりつつあるのを感じ取れる程になっている。
「さぁ、かわいい声を聞かせて。」
ハイド様は言うと、再び降りてきて僕と唇を重ねた。
チュッ…ちゅうっチュッ…はむっ…
数回の触れるだけのキスののち、ぱくりと唇を食べられてしまう。
驚くと、少し開いた唇の隙間からハイド様の舌が入ってきて、舌と舌が絡みつく。
…気持ち良さに溺れる。
絡み合う舌と唾液の交わる音は、僕の耳に内側から音を伝える。
僕も興奮してきて、僕に覆い被さるハイド様の背中へ手を伸ばした。
それに合わせるようにハイド様は僕のシャツに手を掛ける。
シャツのボタンが飛ぶ音ののち、ハイド様の大きな手が僕の素肌の胸を撫でた。
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