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王子ダヴィの懇願

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「まだダヴィがこの国の唯一の王子だった頃…私達は出会いました。
それからの腐れ縁なのですよ。」
「あぁ。お互い、生まれ持った呪が重くて…冒険者ギルドのキャンプには、四季が巡る度に参加させられて……
それらの症状が呪によるものだとわかるまでに両手で足りない回数は参加したな。」
「えぇ。薬草についての知識も、魔獣や魔法についての知識も、野営料理も、全部そこで教わった。」

二人は頷き合う。

「成人頃の十八を迎えた頃だ。学園での学びを終える頃には呪により世間一般の《普通》の生活ができない体になって、そこからは疎遠になりました。」
「私は闇堕ち状態となり、光の元では暮らせなくなり…」
「私は味わうことも、泣き笑いといった感情も出せなくなり、素手で素肌に触れれば相手に怪我をさせてしまうようになり、心を閉ざしたのです。」

二人そろって俯いてしまう。

「しかし、まさか神子が現れるなど! しかも、これだけ強力な呪が、解呪される日が来ようとは!!」

ダヴィさんの言葉に大きく頷くソーマに、右手を握られた。

「ソーマ、私を思い出してくれてありがとう。
そして神子のケイ殿。数日とは言え、私を解呪してくれて、ありがとう。」

ダヴィさんも僕の左手を両手に包み、頭を下げた。

とりあえず、ぎゅうぎゅうになりながらも三人で並んで座ることで落ち着いた。
けれど、今度は僕にとって放っておけない言葉が気にかかってしまう。

「ダヴィさ…いや、ダーヴィレン第一王子殿下、」
「ダヴィで構わない。」
「はい。では、ダヴィさん。あの、解呪が数日と言うのは?」

すると、少しだけ言い辛そうにしてから、ダヴィさんは口を開いた。

「あぁ。あの日、ケイ殿に確かに解呪していただき、私は以来日中の活動ができるようになった。
でも、それは三日間だけだった。四日目からは再び、夜の方が目が冴える日々に逆戻りだ。
すると今朝、私はこの革袋を握った状態で、目覚めた。
この革袋の中の匂いを嗅ぐと、その瞬間は少しだけ解呪して活動できるのだ。
だから、この匂いがなくならないうちに、またケイ殿と風呂に入らねばならないと思ったのだ。」

──やっぱり、あの時は挿入していないからだろうか。

「ケイ殿!」

ダヴィさんは僕に正面から向き直ると、僕の左手を自らの額に擦り付けながら懇願する。

「お願いです。どうか私と、再びあの岩風呂に浸かっていただけませんか? できたら毎日!!」

「毎日…?」

「はい。父王に言われました。私の解呪が済めば、私を次の王に任命したいと。」

「次の王……」

僕は、ダヴィさんに対して即答できなかった。


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