3 / 5
婚姻式前日、昼から午後
しおりを挟む「んー…」
いつもと同じ時間に目が覚めたのに、いつもよりお陽様が高い位置にあった。
隣で寝かせてたハズのマークの姿は既にない。
ちょっと寂しかったけど、本来は婚姻するまで年頃の男女が同じ寝台に寝たらダメだもの。きっと先に出たんだわ。仕方ないわよね。
身支度をして部屋を出る。
食事室へ向かうと、兄達がランチの真っ只中だった。
「よぉ、ミーナ! 体調はどうなんだ?」
「おはよう、ミーナ。ミーナが僕だけの妹なのも、今日で最後だなんて、感慨深いよ。」
「おはよう。シー兄さま、リー兄さまも。」
頭脳派のシー兄さまは肉と野菜が山盛り、肉体派のリー兄さまは魚とフルーツが山盛り。
私はいつも見るだけでお腹いっぱいになってしまうので、時間をずらしていたんだけど…そうか、この時間だったのね。とは言えシー兄さまの言った通り、私が2人にとってただの妹で居られるのも今日までだから、2人の食べっぷりを見納めることにした。
「そういえばミーナ。僕は今日、朝の鍛錬の前にミーナの部屋からマークが出てくるところを見たよ。」
「は? ミーナと奴はまだ婚姻前だろうが! 許せねえ!」
リー兄さまは怒った様子で立ち上がり、立て掛けてあった剣を手に取る。
「マークはただ、心配して私についててくれただけよ。」
「だが!」
「リー兄ぃ!」
私は、リー兄さまと相撲でも取るみたいにガッツリと動きを止め…
「ミーナ…」
逆にしっかりと抱き締められてしまった。
「な…ちょっ…リーに…」
「あぁ…ミーナが《リー兄》なんて何年ぶりだろう。」
「んもう! 今日だけだからね!」
「わかったよぉぅ。オレのミーナぁ…」
少し鬱陶しい感じはあったけれど、今日で最後と思えばまぁいいか…と。
「兄さんばかりズルいです。僕も。」
「シー兄…きつい…」
「あぁ…やっぱり恋人なんかより兄妹が正解だった。」
「ん? シー兄さま、何て?」
「あぁ、こちらの話だ。それよりも、ぎゅー!!」
「ずるいぞ! オレもだ!」
そんなこんなで、兄妹水入らずの楽しいランチタイムとなった。
マークが訪ねてきたのは、その後、丁度お茶の時間だった。
婚姻式の会場である神殿へは、新郎新婦どちらも実家から向かうのが《しきたり》である。
だから婚姻式前日の日暮れ以降、マークとは神殿まで会えないため、今が婚姻前に最後に会えるタイミングとなる。
屋敷の中は兄達の目があるので、庭の四阿を選んでお茶にすることにした。
「お待たせ~!」
私の体調を心配しての訪問だと思ったので、できるだけ元気良くマークの前に跳んで出た。
すると、なぜかマークの目の下には濃い隈ができている。
「マーク、どうしたの?それ。」
「ん?」
──どうしよう…アンニュイなマークも色っぽくてステキだわ…
「いいえ!それよりも…」
「ん?」
「マーク!花婿がそんな顔してたら、私たちの不仲を疑われるわ。今からちょっとでも寝て!
ほら、私はもうこれだけピンピンしてる。もう何も心配はないのよ!」
私はマークの前で力こぶを作って見せる。
──あれれ? あんまり太さが変わってないかしら。
「ぷくくくっ…もうダメだ。アッハハハハ…」
マークに大笑いされた。
どうしてかしら。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
ただ、君のため。~love for Butler~
降谷みやび
恋愛
屈指の夏目財閥の令嬢・花音が恋をした相手。それは…
彼女に仕える執事、黒羽悠人。
しかし彼には決して知られてはならない影の顔があった。
花音の恋の行方は…
悠人の秘密とは…
幸せと、負の行きかう中で二人は何を感じ、誰を想い、どの道を選ぶのか…
二人の恋の行方は…光か…闇か…
キスの練習台
菅井群青
恋愛
「──ちょっとクチ貸せや」
「……ツラ貸せやじゃないの?」
幼馴染の腐れ縁から酒の席で突然の提案を受け、なぜかいい大人がキスの練習台になってしまうことになった。
どうやら歴代彼女にキスが下手という理由でフラれまくるというなんとも不憫な男と……キスは手を繋ぐのと一緒のようなモンだといい恋心をかくしている女の話。
※本編完結しました
※番外編完結しました(2019/06/19)
最悪なお見合いと、執念の再会
当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。
しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。
それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。
相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。
最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。
厚かましい妹の言掛りがウザ……酷いので、家族総出でお仕置きしてみた。
百谷シカ
恋愛
「はあ!? 自分が愛されてるとでも思ってるの? ディーン様は私を愛しているのよ!!」
私はオーベリソン伯爵令嬢カルロッテ・バーン。
婚約者のディーンことシーヴ伯爵とは、超絶うまくいっている。
「お姉様みたいに血筋しか取り柄のない女どもは所詮ちんけな政治の道具! 図に乗らないで!」
このムカムカする女は年子の妹エヴェリーナ。
2ヶ月前、ライル侯爵令息アルヴィン・クーパー卿と婚約してからというもの図に乗っている。
「ディーンと私はラブラブよ」
「はあ!? 頭がおかしいんじゃない? 結婚なんて諦めて修道院にでも入ったらぁ?」
「はあ?」
「〝はあ!?〟 それしか言えないわけ? 本当に救いようのない馬鹿ね!」
たしかに超絶美少女のエヴェリーナはその美貌でアルヴィン卿を射止めたけど……
「あの方の前では猫被ってるから」
私たち家族は頭を抱えた。
そして、私の婚約者ディーンはブチギレた。
「俺の愛しているのはカルロッテただひとりだ。むかつく!」
そこで私たちは計画を立てた。
エヴェリーナの本性をアルヴィン卿に晒してやるのだ……!
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
王女殿下の秘密の恋人である騎士と結婚することになりました
鳴哉
恋愛
王女殿下の侍女と
王女殿下の騎士 の話
短いので、サクッと読んでもらえると思います。
読みやすいように、3話に分けました。
毎日1回、予約投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる