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旦那様の家族との対面と初夜 R18

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向かったサロンでは、侯爵家の当主ご夫妻と、バルトル様とは15歳離れた弟のサルエル様が寛がれていた。

私は慌ててカーテシーをする。

「お初にお目に掛かります。この度、バルトル様にお助けいただきました、エリサと申します。」

そのままの姿勢で、許可がおりるまで待とうとすれば、ふわりと薔薇が薫った後で、背中がほわっと温かくなった。

「エリサさん、わたくしたちはもう家族なのだから、そんな他人行儀な挨拶は要らないわ。」

優しげな声に顔を上げれば、バルトル様のお母様が私の傍らに立って、私の背中を優しく撫でてくださっていた。

「エリサさんが男爵令嬢だったとしても、シュレイザー様の公爵家できちんとした立ち居振舞いや知識を身につけていたことは知っている。
何も心配せず、嫁いできなさい。」

バルトル様のお父様も優しく声を掛けてくださった。

「兄上が羨ましいです。初恋の女せ…ムググ、ムグッ」
「サルエル、その件は…」

バルトル様は弟のサルエル様の口を大きな手で塞ぎながら何かを話し、サルエル様は頭をガクガクとされている。

「バルトル様……」

私が止めようとバルトル様の左腕に縋り付くようにすると、

「エリサ危ない!」
「ふげっ」
「コラ! 急に手を離すヤツがあるか!」

何故か私はバルトル様に抱き締められ、
サルエル様はよろつかれ、
バルトル様はお父上から口頭でガツンと注意されていた。

実家の父や弟妹たちを思い出して、つい笑ってしまった。

「エリサさん、明日は一緒に庭園でブランチをいただきましょうね。」

夫人からの優しいお誘いに、私は笑顔で了承の返事をした。






バルトル様にエスコートされて、大きなベッドのある寝室へ戻る。

「なんで……初夜が……」

バルトル様はブツブツと何やら呟いている。

「バルトル様?」
「いや、何でもない。」

ベッドへは二人で上がり、私は枕を背に座ったまま、バルトルに抱き締められた。

顔を、バルトルの胸に押し付けられるように抱き締められると、不意に頭の上から話し声が聞こえてきた。

「大丈夫。俺はできる。…………なんて関係ない。やっとエリサを俺のモノにできるんだ。二人にとって初夜は今夜だけだ。素敵な夜にしようと誓っただろう、バルトル…」
「バルトル様?」
「いや何でもない。エリサ、二人の初夜だ。楽しもう。
さぁ、君の美しい身体を俺に見せてくれ。」
「…………はい。」

バルトルは、嬉しそうな微笑みを見せながら、一つ一つ私の胸のボタンを外しはじめた。



「ん…ふぅ、アッ……んんぅっ……はぁ…………」

突如始まったこの男女の交わりに、私はただ流されるままだ。

でも本当ならば娼館で、相手の素性もわからない人と同じようなことになっていたのだ。
相手が知っている人だから、まだマシ…いいえ、どうなの? 知っているからこそ恥ずかしいとも言えるわ。

私が言葉にもならないような音しか発せられないのに引き換え、バルトル様はよく喋る。

そういうものなのか、私にそういう情報は全く入って来ないからわからない。

公爵家で侍女をしていた時は全く結婚願望がなく、そういう話が始まると休憩室を出ていた。

実家の母からは、
「そういう時には逆らわずに、相手に任せてやり過ごせば終わる。」
と言われていた。
その結果が私の弟妹たち。貧乏なのに私の下に四人いるのだ。

で、現在。

「んッ…ぁっぁあっ…は…やんっ……はぁ……」

「エリサは本当にかわいい。俺が触れた時の反応も、善がってくれる声さえ俺を煽る。
はぁ…好きだ、エリサ。エリサエリサエリサぁ!」
「ひゃっ…ハァ……んッくぅ…はっ……ばっ…ばる、と、ぅっ…」

すると、バルトル様が徐ろに私の膝を割り、間に頬を寄せるようにして視界から消えた。

「え……」

次の瞬間、にゅるっとした感触に、頭の先から足の先まで電流が走る。

「な……」

もう、そこからは刺激が強過ぎた。

「はぁ…む…ん~、あっぁあっはぁんっ」

強い刺激に膝を閉じたいけれど、内腿を開くバルトル様の力の方が強い。
それに、私への強い刺激は止むことなく続き、

「……ぁんっ…は…んんん~!!」

急に体に力が入ったと思ったら、手足を投げ出すように弛緩した。

「エリサ…上手だったよ。」

バルトル様はそう言うと、私の頬や首に汗で貼り付いた髪を耳に掛けてくれ、舌だけで交わるキスをした。

それから後のことは、はっきり言って記憶がない。


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