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元治2年/慶応元年
幕間:ある日の永倉さん
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原田さんの結婚報告から数日が経過したある日の夜。
「そもそも!あいつは荒くれ者だ!乱暴だ!飲んだくれだ!」
飲んだくれはあなたでしょうが。
「あいつ、かなりがさつだったんだぞ?昔腹かっさばいたことだってあったんだぞ?」
あーうん、そだねー。
「なのに妙に女にモテてやがったんだぜ!」
男じゃないからその気持ちはわからないな。
「剣術のために脱藩して、新選組やって、あいつだって脱藩もんなんだぞ?!俺とあいつはそんなに違わないと思わないか?」
剣術を極めるために脱藩するって時点ですでに違うと思うんだけど………。
「なのにあいつだけ先に所帯を持っちまいやがって!」
えーっと…………ご愁傷様?
「こうしてやけ酒でもしなけりゃやってけるか!」
うん。だからって私の部屋で飲んだくれられても困るんだけど。
今、私は自室の床に正座しながら、酒をちびちび飲んではぐちぐち言っている永倉さんの相手をしている。
夕飯のあと、部屋で作り終わらなかった分の薬を作っていたら、永倉さんがお酒の樽を持って突然部屋にやってきた。
「ちょっと呑ませてくれ」
そういって私の許可などそっちのけにやけ酒を始めたのが3時間ぐらい前で。
未だに愚痴ってるっていう。
原田さんの結婚がそんなにショックだったのかな?それとも永倉さんって、実は嫁さんが欲しいのかね?
「俺だって、左之が結婚したのはおめでたいと思うぜ?」
まあ、お二人は親しい友人ですからね。祝福はしてるのね。
「だけど!なんかこう………ムカつくんだよ!」
…………。
なんか、そういうのってあるよね。私も、美人の友人が彼氏できた時はおめでとう!って思ったと同時にイラッ!ときたものだ。
「あー………杯が空になっちまった。雫ちゃん、よかったらそこの酒を注いでくれねえか?」
私のすぐ近くに置いてある酒樽を指差して、永倉さんが言った。私は言われた通り酒樽を持ち、永倉さんの杯にお酒を注いだ。
注がれたお酒をじっと見ながら、永倉さんはなぜか沈黙した。
「なんか………いいな、こういうのって」
…?いいって、何が?
「今日は悪かったな、一方的に愚痴っちまって」
私が注いであげたお酒を一煽りで飲み干し、永倉さんが言う。
まあ、永倉さんの気持ちはわからなくもないような気がしないでもないので、私は首を静かに首を横に振る。
「いろいろごたごた言ったけど、俺はさ、多分左之が羨ましいだけなんだよな」
永倉さんの言葉は続く。
うん、ちょっとわかっちゃう、それ。
「嫁さんがいたら、こんな感じになんのかな?」
うーん………。江戸時代の夫婦って、こんな感じなの?旦那が帰ってきたら一緒に食事して酒に付き合ってやって、それだけなの?
平成の夫婦みたいに面倒じゃないのかな?
どうなんだろう?
「ありがとな、雫ちゃん。女の子に愚痴るとかかっこ悪いけど、ちょっと気が楽になった」
来た時と違ってすっきりした顔の永倉さんが、空になった酒樽を持って部屋を出る。
「じゃ、おやすみ、雫ちゃん。また明日な」
はい、おやすみなさい。
明日、二日酔いでまた来ないでくださいね。
「そもそも!あいつは荒くれ者だ!乱暴だ!飲んだくれだ!」
飲んだくれはあなたでしょうが。
「あいつ、かなりがさつだったんだぞ?昔腹かっさばいたことだってあったんだぞ?」
あーうん、そだねー。
「なのに妙に女にモテてやがったんだぜ!」
男じゃないからその気持ちはわからないな。
「剣術のために脱藩して、新選組やって、あいつだって脱藩もんなんだぞ?!俺とあいつはそんなに違わないと思わないか?」
剣術を極めるために脱藩するって時点ですでに違うと思うんだけど………。
「なのにあいつだけ先に所帯を持っちまいやがって!」
えーっと…………ご愁傷様?
「こうしてやけ酒でもしなけりゃやってけるか!」
うん。だからって私の部屋で飲んだくれられても困るんだけど。
今、私は自室の床に正座しながら、酒をちびちび飲んではぐちぐち言っている永倉さんの相手をしている。
夕飯のあと、部屋で作り終わらなかった分の薬を作っていたら、永倉さんがお酒の樽を持って突然部屋にやってきた。
「ちょっと呑ませてくれ」
そういって私の許可などそっちのけにやけ酒を始めたのが3時間ぐらい前で。
未だに愚痴ってるっていう。
原田さんの結婚がそんなにショックだったのかな?それとも永倉さんって、実は嫁さんが欲しいのかね?
「俺だって、左之が結婚したのはおめでたいと思うぜ?」
まあ、お二人は親しい友人ですからね。祝福はしてるのね。
「だけど!なんかこう………ムカつくんだよ!」
…………。
なんか、そういうのってあるよね。私も、美人の友人が彼氏できた時はおめでとう!って思ったと同時にイラッ!ときたものだ。
「あー………杯が空になっちまった。雫ちゃん、よかったらそこの酒を注いでくれねえか?」
私のすぐ近くに置いてある酒樽を指差して、永倉さんが言った。私は言われた通り酒樽を持ち、永倉さんの杯にお酒を注いだ。
注がれたお酒をじっと見ながら、永倉さんはなぜか沈黙した。
「なんか………いいな、こういうのって」
…?いいって、何が?
「今日は悪かったな、一方的に愚痴っちまって」
私が注いであげたお酒を一煽りで飲み干し、永倉さんが言う。
まあ、永倉さんの気持ちはわからなくもないような気がしないでもないので、私は首を静かに首を横に振る。
「いろいろごたごた言ったけど、俺はさ、多分左之が羨ましいだけなんだよな」
永倉さんの言葉は続く。
うん、ちょっとわかっちゃう、それ。
「嫁さんがいたら、こんな感じになんのかな?」
うーん………。江戸時代の夫婦って、こんな感じなの?旦那が帰ってきたら一緒に食事して酒に付き合ってやって、それだけなの?
平成の夫婦みたいに面倒じゃないのかな?
どうなんだろう?
「ありがとな、雫ちゃん。女の子に愚痴るとかかっこ悪いけど、ちょっと気が楽になった」
来た時と違ってすっきりした顔の永倉さんが、空になった酒樽を持って部屋を出る。
「じゃ、おやすみ、雫ちゃん。また明日な」
はい、おやすみなさい。
明日、二日酔いでまた来ないでくださいね。
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