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元治元年

京の都目指してレッツゴー!(参)

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『雫ー!宿場町が見えてきたぞ。どうするんじゃ?』
(宿場町?)

 あ、そっか。幕末にはあったよね、宿場町。街道の途中とかに。

(今の空はどんな具合?)
『もう夕暮れじゃ。今から関所に行けば間に合うぞ』
(じゃあ行こう)
『理由を聞いても良いか?』
(野宿をしたくないのもあるし、夜中に街の近くうろついて、不審人物として捕まりたくないからかな?そんなことになったらせっかくこっそりきたのに、意味がないじゃない)
『お主の言う通りじゃな。夜に森をうろついているのを奉行なんかに見つけられたら捕まること間違いないのう』

 こうして二人はどこぞの宿場町で一泊することになった。




(ようやく切り抜けた………)
『双方、お疲れ様じゃな』
(確かに、自分が"関所通過の審査がものすごくやりにくい奴"って自覚はあるけど……。太陽は今どこよ?)
『そろそろ地平線に沈みそうなのじゃ』

 ほむろ情報によると、太陽は沈みつつあると。長かった関所での手続きをようやく終え、ヘロヘロになりながら私は宿場町に足を踏み入れる。

 いやあ、大変だったよ。目が見えないから居場所をつかむのが大変だった。風読みの術なんか発動しっぱなしだったよ。

 それに役人の前で妖術なんて使えるはずもなく、荷物から通行手形を取り出すのにもエラい苦労した。

 あと、耳も聞こえないから役人たちとのコミュニケーションが特に大変だった。

 向こうが何を言ってきても理解ができない。目が見えないから唇を読むこともできない。つまりオワタ状態。

 状況は逐一ほむろから教えてもらっていたが、役人たちは猛烈にあたふたしていたらしい。

 まあ、目も耳も不自由な人間が関所に来たらドン引きのテンパりですよね。だって何しても通じないんだもん。

 ほむろから役人たちが話している内容は聞いていたが、 もし反応を返したら「あれ、こいつ黒猫と会話してる?」って変に勘ぐられるかもしれないから無反応を突き通した。

 最終的にはどうしようもなくなったらしく、手形はあるから通していっか、みたいなノリで関所は通してくれたけど。

 役人さん、すいませんね。

(まさか宿屋でもこの問答をやらなきゃいけないの?)
『仕方がないことじゃ。妾もできる限り助けるから』
(いーやーだー!!)
『駄々を捏ねるでない。早くゆくぞ。街の中で野宿をする気か?』 

 結局私は宿屋でも散々手間取って、部屋に上がった時はすでに酉の時に入ろうとしていた(午後5時)。関所に入ってから2時間が経過している。

 もう早く死にたーい!!!
(※自殺願望ではありません。真人間に戻りたい願望です)
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