25 / 119
文久3年
勤務先、ゲットだぜ!(参)
しおりを挟む
誤魔化しの術を使ってうまく朝食を食べ終えることができた。
味覚がないから味は全然わからなかったが、なんだかとても暖かくて優しい感じがした。
『おい、雫!康順が出て行ってしまうぞ!』
(ええ!?そりゃまずい!)
私は慌てて康順先生の方に手を伸ばす。食事を終えた時点で、風読みの術はもう発動しっぱなしです。
なぜ私が焦ったのかというと、それは康順先生に今伝えたいことがあるからだ。だって診察とか始まったら時間なさそうじゃん。
『康順が止まってくれたぞ』
風読みの術のおかげで、それは私にもわかった。
(よし!じゃあほむろ、昨日みたいに床に字を書いてくれる?ここで雇って欲しい、って)
『わかったのじゃ。他に何を書いてほしいことは?』
(じゃあ……薬の調合ならお手の物、とも書いておいて)
『了解じゃ』
ほむろが勝手場の方に行く気配を察知しながら、私は康順先生のいる方を向き、ほむろが去っていた方向を指差す。
いわゆる身振り手振りだが、昨日に名前を聞かれた時も、こうやって先生を勝手場に行かせているから多分伝わる。
空気が動く。目の前にいた気配が横に移動し始め、勝手場の方に向かっていく。どうやら無事に意図を伝えられたようだ。
私はこの場で待つことにした。
勝手場に行くこともできるが、間違ってほむろの書いたものを消してしまっては大変だ。
動植物や建物の気配は妖術で感知できるが、地面に書いてある文字の場所までは把握できないのです。
どのくらい待っただろう。体内時計でいうと20分ぐらい?康順先生とほむろが戻ってくる気配を感じた。
『康順が、ここで働きたいのか?と聞いておる』
私は頷く。ここが西洋医学の診療所なら、ぜひここで働きたい。私は西洋の薬学を学んでいたもので。
目が見えなくても妖術のサポートがあるからたいした問題はないですから!
もちろん伝えはしませんけど。
『君のように体の不自由な子には辛い。無理して働かなくても面倒は見てあげられる、と言っておる』
私は首を横に振る。なんとなくただ飯は嫌なのだ。保護してくれたことへのお礼も兼ねてるつもりだし。
それに、私はお金を稼ぎたいのだ。京の都へ行くために。
『本当にいいのか?だとさ』
再度頷く。
しばらくの間、ほむろからの念話は入ってこなかった。私に伝える言葉がないからだ。康順先生も悩んでいるのだろう。
『了承してくれたぞ!』
(!)
やった!働けるぞ!
ポケモンならぬ勤務先、ゲットだぜ!
『部屋に戻っていて欲しいらしいぞ。材料と製法はあとで部屋に届けてくれるらしい』
私はこけないように注意して立ち上がり、康順先生の方に向かってぺこりと頭を下げる。
先生!ありがとう!
味覚がないから味は全然わからなかったが、なんだかとても暖かくて優しい感じがした。
『おい、雫!康順が出て行ってしまうぞ!』
(ええ!?そりゃまずい!)
私は慌てて康順先生の方に手を伸ばす。食事を終えた時点で、風読みの術はもう発動しっぱなしです。
なぜ私が焦ったのかというと、それは康順先生に今伝えたいことがあるからだ。だって診察とか始まったら時間なさそうじゃん。
『康順が止まってくれたぞ』
風読みの術のおかげで、それは私にもわかった。
(よし!じゃあほむろ、昨日みたいに床に字を書いてくれる?ここで雇って欲しい、って)
『わかったのじゃ。他に何を書いてほしいことは?』
(じゃあ……薬の調合ならお手の物、とも書いておいて)
『了解じゃ』
ほむろが勝手場の方に行く気配を察知しながら、私は康順先生のいる方を向き、ほむろが去っていた方向を指差す。
いわゆる身振り手振りだが、昨日に名前を聞かれた時も、こうやって先生を勝手場に行かせているから多分伝わる。
空気が動く。目の前にいた気配が横に移動し始め、勝手場の方に向かっていく。どうやら無事に意図を伝えられたようだ。
私はこの場で待つことにした。
勝手場に行くこともできるが、間違ってほむろの書いたものを消してしまっては大変だ。
動植物や建物の気配は妖術で感知できるが、地面に書いてある文字の場所までは把握できないのです。
どのくらい待っただろう。体内時計でいうと20分ぐらい?康順先生とほむろが戻ってくる気配を感じた。
『康順が、ここで働きたいのか?と聞いておる』
私は頷く。ここが西洋医学の診療所なら、ぜひここで働きたい。私は西洋の薬学を学んでいたもので。
目が見えなくても妖術のサポートがあるからたいした問題はないですから!
もちろん伝えはしませんけど。
『君のように体の不自由な子には辛い。無理して働かなくても面倒は見てあげられる、と言っておる』
私は首を横に振る。なんとなくただ飯は嫌なのだ。保護してくれたことへのお礼も兼ねてるつもりだし。
それに、私はお金を稼ぎたいのだ。京の都へ行くために。
『本当にいいのか?だとさ』
再度頷く。
しばらくの間、ほむろからの念話は入ってこなかった。私に伝える言葉がないからだ。康順先生も悩んでいるのだろう。
『了承してくれたぞ!』
(!)
やった!働けるぞ!
ポケモンならぬ勤務先、ゲットだぜ!
『部屋に戻っていて欲しいらしいぞ。材料と製法はあとで部屋に届けてくれるらしい』
私はこけないように注意して立ち上がり、康順先生の方に向かってぺこりと頭を下げる。
先生!ありがとう!
0
お気に入りに追加
101
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
偽典尼子軍記
卦位
歴史・時代
何故に滅んだ。また滅ぶのか。やるしかない、機会を与えられたのだから。
戦国時代、出雲の国を本拠に山陰山陽十一カ国のうち、八カ国の守護を兼任し、当時の中国地方随一の大大名となった尼子家。しかしその栄華は長続きせず尼子義久の代で毛利家に滅ぼされる。その義久に生まれ変わったある男の物語
無職ニートの俺は気が付くと聯合艦隊司令長官になっていた
中七七三
ファンタジー
■■アルファポリス 第1回歴史・時代小説大賞 読者賞受賞■■
無職ニートで軍ヲタの俺が太平洋戦争時の聯合艦隊司令長官となっていた。
これは、別次元から来た女神のせいだった。
その次元では日本が勝利していたのだった。
女神は、神国日本が負けた歴史の世界が許せない。
なぜか、俺を真珠湾攻撃直前の時代に転移させ、聯合艦隊司令長官にした。
軍ヲタ知識で、歴史をどーにかできるのか?
日本勝たせるなんて、無理ゲーじゃねと思いつつ、このままでは自分が死ぬ。
ブーゲンビルで機上戦死か、戦争終わって、戦犯で死刑だ。
この運命を回避するため、必死の戦いが始まった。
参考文献は、各話の最後に掲載しています。完結後に纏めようかと思います。
使用している地図・画像は自作か、ライセンスで再利用可のものを検索し使用しています。
表紙イラストは、ヤングマガジンで賞をとった方が画いたものです。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
異世界日本軍と手を組んでアメリカ相手に奇跡の勝利❕
naosi
歴史・時代
大日本帝国海軍のほぼすべての戦力を出撃させ、挑んだレイテ沖海戦、それは日本最後の空母機動部隊を囮にアメリカ軍の輸送部隊を攻撃するというものだった。この海戦で主力艦艇のほぼすべてを失った。これにより、日本軍首脳部は本土決戦へと移っていく。日本艦隊を敗北させたアメリカ軍は本土攻撃の中継地点の為に硫黄島を攻略を開始した。しかし、アメリカ海兵隊が上陸を始めた時、支援と輸送船を護衛していたアメリカ第五艦隊が攻撃を受けった。それをしたのは、アメリカ軍が沈めたはずの艦艇ばかりの日本の連合艦隊だった。
この作品は個人的に日本がアメリカ軍に負けなかったらどうなっていたか、はたまた、別の世界から来た日本が敗北寸前の日本を救うと言う架空の戦記です。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる