14 / 119
文久3年
奈良の大仏無事ですかーーーーー!(弐)
しおりを挟む
(ほむろ――。あとどのくらいで街に着きそうなの?)
『もうすぐじゃ。お主の前方には夕暮れの町並みが広がっておるぞ。妾たちは、今街道沿いの丘におるからのう』
(それって、京の都?)
『違う。あれは大坂の街じゃ』
(大阪!?)
※この時代の表記はまだ"大坂"。
それは、天下の台所である大阪!?
(おいしいものがいっぱいあるのかな?)
『お主………食い意地が張ってるのう』
(ねえ、ほむろ。ちょっと大坂に滞在して、それから京の都に行ってもいい?)
『どうせ止めても滞在するのじゃろう?』
(もちろん!)
『自信満々に言うな!』
よし!これでしばらく大坂にいられる!
この時期って、大坂はまだ"天下の台所"って呼ばれてるはずだから、二十一世紀の大阪にはないような食べ物があるかもしれない。
(しかしどうやって金を稼ごう)
『そんなことを妾に聞くでない。妾は人間界で金を稼いだことなどないのじゃから。なんせ必要なものは里の者が貢いでくれたからのう』
(…………)
なんか今、無性にイラついた。
『な、なんじゃお主!よ、よさぬか!殺気立つな!』
(はぁ………でもどうやってお金を稼ごう。お金がないと何もできないよ)
『雫、雫』
(?)
『街道で誰か倒れておるぞ』
おや?行き倒れか?目が見えない私にはそこんとこの真偽は確かめられないけど。
(倒れてるのって、どんな人?)
『そうじゃのう……年若い細身の青年じゃ。頭には編笠をかぶっておって、紫系統の着物と袴を着ておる。服は良質のものじゃ。それと……薬箱をしょっておる』
(薬箱?)
服の質がいいってことは金がある人間かな?薬箱持ちだから、つまりその行き倒れ青年は薬売りの行商人か、あるいは医者ってこと?
(行商人と医者のどっちに見える?)
『医者じゃな。あれは行商人にしては荷物が少なすぎる。今のご時世、患者を探してあちこちをぶらつく医者は多いと聞く』
(よし、じゃあ助ける)
『む?なぜじゃ?』
(恩を売って、医療界で働き口を紹介してもらう。行商人にものを売るより、医療界で働いた方が儲かりそうだもん。薬学の知識ならこの時代の誰にも負けない自信があるし)
『………お主、なかなかひどいのう』
うん、自分でも言っておいて感じ悪いって自覚してる。
自分に得がなければ人助けはしない。今の私はそういう人間になってしまっているようだ。
素直に他人を心配できなくなってる自分が辛いぜ。これも一概に、"人への思いやりや優しさ"が失われているせいだろうけど。
(誰かさんの力のせいだよ)
『妾のせいだと言うのか!?あれは妾の力を吸収したお主が原因じゃ!』
(だから不可抗力だって!)
思わず、心の中で怒鳴ってしまった。
(私は九尾の狐の力なんて欲しかったわけじゃない!)
『もうすぐじゃ。お主の前方には夕暮れの町並みが広がっておるぞ。妾たちは、今街道沿いの丘におるからのう』
(それって、京の都?)
『違う。あれは大坂の街じゃ』
(大阪!?)
※この時代の表記はまだ"大坂"。
それは、天下の台所である大阪!?
(おいしいものがいっぱいあるのかな?)
『お主………食い意地が張ってるのう』
(ねえ、ほむろ。ちょっと大坂に滞在して、それから京の都に行ってもいい?)
『どうせ止めても滞在するのじゃろう?』
(もちろん!)
『自信満々に言うな!』
よし!これでしばらく大坂にいられる!
この時期って、大坂はまだ"天下の台所"って呼ばれてるはずだから、二十一世紀の大阪にはないような食べ物があるかもしれない。
(しかしどうやって金を稼ごう)
『そんなことを妾に聞くでない。妾は人間界で金を稼いだことなどないのじゃから。なんせ必要なものは里の者が貢いでくれたからのう』
(…………)
なんか今、無性にイラついた。
『な、なんじゃお主!よ、よさぬか!殺気立つな!』
(はぁ………でもどうやってお金を稼ごう。お金がないと何もできないよ)
『雫、雫』
(?)
『街道で誰か倒れておるぞ』
おや?行き倒れか?目が見えない私にはそこんとこの真偽は確かめられないけど。
(倒れてるのって、どんな人?)
『そうじゃのう……年若い細身の青年じゃ。頭には編笠をかぶっておって、紫系統の着物と袴を着ておる。服は良質のものじゃ。それと……薬箱をしょっておる』
(薬箱?)
服の質がいいってことは金がある人間かな?薬箱持ちだから、つまりその行き倒れ青年は薬売りの行商人か、あるいは医者ってこと?
(行商人と医者のどっちに見える?)
『医者じゃな。あれは行商人にしては荷物が少なすぎる。今のご時世、患者を探してあちこちをぶらつく医者は多いと聞く』
(よし、じゃあ助ける)
『む?なぜじゃ?』
(恩を売って、医療界で働き口を紹介してもらう。行商人にものを売るより、医療界で働いた方が儲かりそうだもん。薬学の知識ならこの時代の誰にも負けない自信があるし)
『………お主、なかなかひどいのう』
うん、自分でも言っておいて感じ悪いって自覚してる。
自分に得がなければ人助けはしない。今の私はそういう人間になってしまっているようだ。
素直に他人を心配できなくなってる自分が辛いぜ。これも一概に、"人への思いやりや優しさ"が失われているせいだろうけど。
(誰かさんの力のせいだよ)
『妾のせいだと言うのか!?あれは妾の力を吸収したお主が原因じゃ!』
(だから不可抗力だって!)
思わず、心の中で怒鳴ってしまった。
(私は九尾の狐の力なんて欲しかったわけじゃない!)
0
お気に入りに追加
101
あなたにおすすめの小説
土方歳三ら、西南戦争に参戦す
山家
歴史・時代
榎本艦隊北上せず。
それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。
生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。
また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。
そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。
土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。
そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。
(「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です)
僕のおつかい
麻竹
ファンタジー
魔女が世界を統べる世界。
東の大地ウェストブレイ。赤の魔女のお膝元であるこの森に、足早に森を抜けようとする一人の少年の姿があった。
少年の名はマクレーンといって黒い髪に黒い瞳、腰まである髪を後ろで一つに束ねた少年は、真っ赤なマントのフードを目深に被り、明るいこの森を早く抜けようと必死だった。
彼は、母親から頼まれた『おつかい』を無事にやり遂げるべく、今まさに旅に出たばかりであった。
そして、その旅の途中で森で倒れていた人を助けたのだが・・・・・・。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※一話約1000文字前後に修正しました。
他サイト様にも投稿しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
アルゴノートのおんがえし
朝食ダンゴ
ファンタジー
『完結済!』【続編製作中!】
『アルゴノート』
そう呼ばれる者達が台頭し始めたのは、半世紀以上前のことである。
元来アルゴノートとは、自然や古代遺跡、ダンジョンと呼ばれる迷宮で採集や狩猟を行う者達の総称である。
彼らを侵略戦争の尖兵として登用したロードルシアは、その勢力を急速に拡大。
二度に渡る大侵略を経て、ロードルシアは大陸に覇を唱える一大帝国となった。
かつて英雄として名を馳せたアルゴノート。その名が持つ価値は、いつしか劣化の一途辿ることになる。
時は、記念すべき帝国歴五十年の佳節。
アルゴノートは、今や荒くれ者の代名詞と成り下がっていた。
『アルゴノート』の少年セスは、ひょんなことから貴族令嬢シルキィの護衛任務を引き受けることに。
典型的な貴族の例に漏れず大のアルゴノート嫌いであるシルキィはセスを邪険に扱うが、そんな彼女をセスは命懸けで守る決意をする。
シルキィのメイド、ティアを伴い帝都を目指す一行は、その道中で国家を巻き込んだ陰謀に巻き込まれてしまう。
セスとシルキィに秘められた過去。
歴史の闇に葬られた亡国の怨恨。
容赦なく襲いかかる戦火。
ーー苦難に立ち向かえ。生きることは、戦いだ。
それぞれの運命が絡み合う本格派ファンタジー開幕。
苦難のなかには生きる人にこそ読んで頂きたい一作。
○表紙イラスト:119 様
※本作は他サイトにも投稿しております。
東京PMC’s
青空鰹
ファンタジー
唯一向いの家族である父親が失踪してしまった 大園 紫音 は天涯孤独の身になってしまい途方に明け暮れていた。
そんな彼の元に、父親の友人がやって来て 天野 と言う人の家を紹介してもらったのだが “PMCとして一緒に活動しなければ住まわせない”と言うので、彼は“僕にはもう行く宛がない” 天野と言う人の条件を了承して訓練所に行き、PMCライセンス を取得した一人の少年の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる