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文久3年
奈良の大仏無事ですかーーーーー!(壱)
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『おい、何種類か薬草を見つけたぞ。風呂敷にしまうのを手伝っておくれ』
(はいはーい。えっと、"ほむろが持ってる薬草"を"ほむろの背中の風呂敷"に!)
『お!収納できだぞ!お主も妖術を使うのがうまくなってきたのう』
(そりゃあ何回も使ってるからね)
私とほむろは、いまだ森の中をさまよっている……らしい。ほむろが、まだ森を抜けていないって言うから。
だって私は耳と目が両方とも使い物にならないから全く分からないんだもん。ほむろに全てを任せるしかない。
道中、ほむろは薬草や山菜を見つけては摘んできてくれる。それをほむろが自分でしまうのは難しいから、妖術の練習もかねて私が収納を手伝っている。
移動させたいものと移動させたい場所を指定して移転の術を使えば、さっきみたいに薬草をほむろの背中の風呂敷に自動でしまってくれる。
ぶっちゃけ目が見えなくても困らないというこの素晴らしさね。
だって対象物と行き先を念じれば自動で運んでくれるんだから。あんまり遠すぎると運べないみたいだけど。
どうも妖術とは、心の中で念じればそれに合った術が自動で発動するようで、大変便利です。
もちろん妖術なんて人前では使えないから、大都市とかに行ったら苦労するだろうけど。
(ああ、視界情報が何もないってつらいよ)
『我慢するのじゃ。そもそもお主が妾の力を吸収したのが悪い』
(それは不可抗力!私のせいではない!)
『それより、先ほどから大分たくさんの山菜やら薬草やらきのこやら採取しておるからそろそろ風呂敷の中が手狭になってきたのう。雫、ちょいと空間拡張の術を使ってはくれんか?』
(空間拡張?そんな芸当もできるのか。えーっと………"ほむろの背中の風呂敷内の体積を二倍"。これでいいのか?)
『うむ!成功じゃ!お主もなかなか手練れてきたのう』
(誰かさんの力を吸収したときに、"妖術を操る才能"ってのをもらってるからね。ところで、ここって日本のどのあたり?京の都って近いの?)
『ここか?妾は人間界の地理には疎いのじゃが………大仏が近くにあったはずじゃ。ほれ、あの戦国の世に松永 久秀の放火によって焼失した大仏と大仏殿』
ああ、あの鹿が凶暴なところね。
(ここは奈良の近くか。大仏生きてますか―――――――!!)
『な、なんじゃ!お主!大仏はとっくの昔に再興されておるぞ!』
(うん、知ってる。だって大仏と大仏殿は、宝永6年に全部復興し終わってるもん。復興が終わって、もう160年ぐらい経ってるでしょ?)
高校時代の修学旅行の時に、ガイドさんが散々言ってたからね。
『なんだ、知っておったのか』
(イエス。ただ叫んでみたかっただけ)
『お主が今叫んでも、その声は誰にも聞こえんぞ』
(だからこそよ。今なら全力で叫んでも周りの人には何の迷惑にもならないし、迷惑がかかるのは私の心の声が聞こえるほむろだけ。素晴らしいね)
『妾には迷惑をかけてもよいというのか!』
そんな馬鹿な会話をしつつ、一人と一匹は引き続き森の中を進んでいくのだった。
(はいはーい。えっと、"ほむろが持ってる薬草"を"ほむろの背中の風呂敷"に!)
『お!収納できだぞ!お主も妖術を使うのがうまくなってきたのう』
(そりゃあ何回も使ってるからね)
私とほむろは、いまだ森の中をさまよっている……らしい。ほむろが、まだ森を抜けていないって言うから。
だって私は耳と目が両方とも使い物にならないから全く分からないんだもん。ほむろに全てを任せるしかない。
道中、ほむろは薬草や山菜を見つけては摘んできてくれる。それをほむろが自分でしまうのは難しいから、妖術の練習もかねて私が収納を手伝っている。
移動させたいものと移動させたい場所を指定して移転の術を使えば、さっきみたいに薬草をほむろの背中の風呂敷に自動でしまってくれる。
ぶっちゃけ目が見えなくても困らないというこの素晴らしさね。
だって対象物と行き先を念じれば自動で運んでくれるんだから。あんまり遠すぎると運べないみたいだけど。
どうも妖術とは、心の中で念じればそれに合った術が自動で発動するようで、大変便利です。
もちろん妖術なんて人前では使えないから、大都市とかに行ったら苦労するだろうけど。
(ああ、視界情報が何もないってつらいよ)
『我慢するのじゃ。そもそもお主が妾の力を吸収したのが悪い』
(それは不可抗力!私のせいではない!)
『それより、先ほどから大分たくさんの山菜やら薬草やらきのこやら採取しておるからそろそろ風呂敷の中が手狭になってきたのう。雫、ちょいと空間拡張の術を使ってはくれんか?』
(空間拡張?そんな芸当もできるのか。えーっと………"ほむろの背中の風呂敷内の体積を二倍"。これでいいのか?)
『うむ!成功じゃ!お主もなかなか手練れてきたのう』
(誰かさんの力を吸収したときに、"妖術を操る才能"ってのをもらってるからね。ところで、ここって日本のどのあたり?京の都って近いの?)
『ここか?妾は人間界の地理には疎いのじゃが………大仏が近くにあったはずじゃ。ほれ、あの戦国の世に松永 久秀の放火によって焼失した大仏と大仏殿』
ああ、あの鹿が凶暴なところね。
(ここは奈良の近くか。大仏生きてますか―――――――!!)
『な、なんじゃ!お主!大仏はとっくの昔に再興されておるぞ!』
(うん、知ってる。だって大仏と大仏殿は、宝永6年に全部復興し終わってるもん。復興が終わって、もう160年ぐらい経ってるでしょ?)
高校時代の修学旅行の時に、ガイドさんが散々言ってたからね。
『なんだ、知っておったのか』
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『お主が今叫んでも、その声は誰にも聞こえんぞ』
(だからこそよ。今なら全力で叫んでも周りの人には何の迷惑にもならないし、迷惑がかかるのは私の心の声が聞こえるほむろだけ。素晴らしいね)
『妾には迷惑をかけてもよいというのか!』
そんな馬鹿な会話をしつつ、一人と一匹は引き続き森の中を進んでいくのだった。
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