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第1章 レッツスローライフ

諦めの境地とスローライフ (3)

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そしてその日の夕方。

やっぱりというかなんというか、魔の樹海を抜け出すことかなわず、私は一つの広い広場にたどり着いた。

「…………」

広場をガン見する私。

広場の周りは綺麗に木々に囲まれているが、ちょっと他の部分の木より高度が低く、太陽の光がさんさんと広場に降り注いでいる。西日のはずなのに。

「もうこれ家ここに置けって言ってるようなものだよね!?」

だって、こんな危険あふれる魔の樹海に、不自然なくらい丸い広場があるんだよ?しかも採光まで完璧とか都合良すぎるでしょう!

「それでもここに家置きますけど………」

だって、使わなかったらもったいないじゃん。せっかくこんないい場所があるんだもん。見たところ周囲とか地下とか上空にモンスターいないし。

私はエンジェルポーチから例の銀色のキューブを取り出した。こいつって、家を出す時以外影薄っすいよね。

神から言われた通りに、私は広場の中央に向かい、キューブを地面の上で3回転がした。

ピッカーーーーーーー!!!!

するとキューブがとんでもない輝きを放った。

「目がぁぁ!!目がぁぁぁぁ!!!」

しょうがないでしょ!!眩しくて目がツラいんだもん!!

光り方がピ○チュウっぽいとか言わないの!!

しばらくの間(おそらく数秒)あたりには光が炸裂し、私の目は焼かれるかと思った。

「うぅ………死ぬかと思った………」

なんか転移初日にも似たようなことを言った気がする。

私は未だにチカチカしてる目をゴシゴシこすりながら立ち上がる。え?目に悪い?そんなことは知ってます!

私は、今広場ではなく森の方を向いている。つまり家には背を向けているのだ。

今、私の正面には白い木のフェンスが広場の周囲を囲っていた。そしてフェンスの途中にはハートの形をした白い扉がつながっている。

「無駄にメルヘン!!」

ハート形の扉とか超おしゃれじゃないですか!やっぱりイセカイゴッドの女子力が高い!神の性別って、なんだ?

扉からは淡いパステルカラーのレンガが小道を作りながら私の後ろに向かって伸びている。道の両脇は青々とした芝生。

「環境状況が良すぎない!?」

こんな青々とした芝生、モンゴルの大平原にだってなさそうだよ!いや見たことないけど。

「と、とりあえず道が後ろまで続いてるから家は後ろかな………」

私はゆっくりゆーっくり振り向く。

「ダメだ。神の女子力がやっぱり高すぎる!!」

振り向いた私の目に飛び込んできたのは、白い壁にピンク色の屋根の、ドールハウスも裸足で逃げるほどかわいい3階建ての家だった。

窓枠は淡いクリーム色で、家の前には色とりどりの花が咲き誇る花壇がある。2階部分の左側にはかなり広そうなベランダ。そして日本の下手な一軒家より2倍くらいは大きい。

「ダメだ、すごすぎる」

もういろいろと。神の女子力の高さに感服いたしますよ。いや、マジで、本当に。

レンガの小道は、ピンクのお家の玄関まで伸びていた。私は小道をたどって玄関まで行く。

玄関は淡い茶色の板でできていて、ひし形の小さな窓もついている。玄関横にはちっちゃいくぼみがあり、その中ではさっき私が転がした銀キューブがくるくる回っている。

「確かこれを回すと元のキューブに戻せるんだよね」

やらないよ?

しかしここで、この玄関横キューブのもう一個の利用法をご紹介しよう。この間にもらった神の手紙に書いてあったのだ。

なんとこのキューブ!持ち主である私が回すと家をたたむ(?)ことができるんだが、私以外の人間が回すとチャイムになるんです!!

もうね、ファンタジー万歳だよ。科学技術がなくったって全部代用できてるっていう。

「おじゃましまーす………」

玄関の扉を手前に引くと、風鈴みたいな軽やかな音とともにドアが開いた。

私の家だってわかってるけど、万が一誰かいたら大変でしょ!

「………神が女子力高くて、需要あるの?」

私が思わずそうツッコんでしまったほど、家の中は可愛かった。

そこはいわゆる玄関ホールのような場所で、24畳ほどの広さがあった。

入り口正面には大きな中央階段があって、両側の壁に2個ずつ扉がついている。なんだろう。バイ○ハザードの洋館の玄関ホールと同じようなデザイン?

例えがアウトとか言うな。

手すりの形も柱の形もドアの形や模様も全てが可愛さを極めている。そして家の中は壁紙から天井まで全部が淡いパステルカラー。しかも色合いがすごいうまく工夫されていて、目は全くチカチカしない。それどころか目に優しい。

「神様どんだけこの家に労力かけたの!!」

思わずツッコんじゃったけど、私悪くないよね?
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