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1 動物の霊がいっぱい!
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「よお。見てたぞ、スズ香」
龍司がわたしの前に立った。背は相沢さんと同じくらい。ベリーショートの黒髪は、ほとんど帽子に隠れている。
眉も目じりも上がっていて目つきが悪いのに、龍司はなぜか女の子に人気がある。
運動神経がいいから、スポーツをしているときは、カッコよく見えるのかもしれないね。
「見てたって、なにを?」
「カヲルのオヤジさんの霊を祓ったところだよ。でも、おれも鳥居のところの霊を祓ったから、引き分けだからな」
「……そんなに前からいたの?」
だったら、なんですぐに入ってこなかったんだろう。それに、また勝手に幽霊退治の勝負になってる。
「いつからいたっていいだろ!」
龍司はなぜか顔を赤らめた。
「だいたい、除霊は寺がするもんなんだよ。寺と神社じゃ役割が違うんだからな。神社が手を出すなっつの」
龍司は寺を継ぐことになっていて、わたしは神社の跡取りだから、ライバル心を燃やしているのかな。すぐに寺VS神社にしたがるんだ。こういうところも、めんどうくさいんだよね。
《小僧。もっと素直に接しないと、スズ香に嫌われるぞ》
《手遅れ。もう嫌われてるわよ》
龍司にはコンゴウとシロガネが見える。つり気味の眉を限界まで上げて、わたしの両肩にいるコンゴウとシロガネをにらんだ。
「なんだよっ、おれだってスズ香なんか嫌いだよっ」
「だったら来なければいいじゃないっ」
龍司はいつもこの調子だけれど、嫌いと言われて、さすがにわたしもムッとした。
「なんの用なの? 早くすませて帰ってよ」
「別に、通りかかっただけ」
なによ、それ。
「じゃあわたし、社務所の手伝いをしてくるから。龍司もお寺の手伝いをしなくていいの?」
「どうせ一人っ子で、おれしか継ぐヤツがいないんだから、今から頑張らなくてもいいんだよ。おまえこそ、女のくせに宮司になれるのかよ」
宮司とは、神社のみんなをまとめている人のこと。うちは今、おジイちゃんが宮司をしているんだ。
「女性の宮司だっているもん。……少ないけど」
龍司ってどうしていつも、いじわるばかり言うんだろう。
「でもわたし、宮司に拘ってないよ。この冬月神社を守れたらいいだけ。宮司になりたいって人がお婿さんに来てくれたら、それでいいんだ」
「お、おムコさんって」
龍司の顔が真っ赤になった。
「スズ香のくせに、もう結婚のこと考えてるのかよっ。恋人もいないくせに! 小学生のくせに!」
くせにくせに、うるさい。龍司だって小学生でしょ。
「跡取りなんだから、ちょっとは考えるよ。わたしがお嫁さんに行くわけにはいかないんだから」
「ダメだダメだ、早すぎる! つか、スズ香って嫁に行けないのかよ。家を継ぐって、そういうことなのか……」
龍司の顔が、今度は青くなった。それから真剣な顔でわたしを見る。
「おれ、思うんだけどさ。狭い町に、寺と神社が両方なくてもよくね?」
「……どうしたの? 急に」
「江戸時代とかってさ、寺も神社も一緒だったんだってよ。だから、ひとつにしちゃってもいいんじゃねえかな」
「なに言ってるの龍司。さっき自分で、寺と神社じゃ役割が違うって言ってたじゃない」
「いや、けっこう似てるよ。ほぼ同じかもしれない!」
《小僧、必死だな》
《ホント、素直じゃないわねえ》
コンゴウとシロガネは、あきれたような表情になった。
わけのわからないことを言い出した龍司を神社から追い出して、わたしはおジイちゃんの手伝いをしに社務所に向かった。
龍司がわたしの前に立った。背は相沢さんと同じくらい。ベリーショートの黒髪は、ほとんど帽子に隠れている。
眉も目じりも上がっていて目つきが悪いのに、龍司はなぜか女の子に人気がある。
運動神経がいいから、スポーツをしているときは、カッコよく見えるのかもしれないね。
「見てたって、なにを?」
「カヲルのオヤジさんの霊を祓ったところだよ。でも、おれも鳥居のところの霊を祓ったから、引き分けだからな」
「……そんなに前からいたの?」
だったら、なんですぐに入ってこなかったんだろう。それに、また勝手に幽霊退治の勝負になってる。
「いつからいたっていいだろ!」
龍司はなぜか顔を赤らめた。
「だいたい、除霊は寺がするもんなんだよ。寺と神社じゃ役割が違うんだからな。神社が手を出すなっつの」
龍司は寺を継ぐことになっていて、わたしは神社の跡取りだから、ライバル心を燃やしているのかな。すぐに寺VS神社にしたがるんだ。こういうところも、めんどうくさいんだよね。
《小僧。もっと素直に接しないと、スズ香に嫌われるぞ》
《手遅れ。もう嫌われてるわよ》
龍司にはコンゴウとシロガネが見える。つり気味の眉を限界まで上げて、わたしの両肩にいるコンゴウとシロガネをにらんだ。
「なんだよっ、おれだってスズ香なんか嫌いだよっ」
「だったら来なければいいじゃないっ」
龍司はいつもこの調子だけれど、嫌いと言われて、さすがにわたしもムッとした。
「なんの用なの? 早くすませて帰ってよ」
「別に、通りかかっただけ」
なによ、それ。
「じゃあわたし、社務所の手伝いをしてくるから。龍司もお寺の手伝いをしなくていいの?」
「どうせ一人っ子で、おれしか継ぐヤツがいないんだから、今から頑張らなくてもいいんだよ。おまえこそ、女のくせに宮司になれるのかよ」
宮司とは、神社のみんなをまとめている人のこと。うちは今、おジイちゃんが宮司をしているんだ。
「女性の宮司だっているもん。……少ないけど」
龍司ってどうしていつも、いじわるばかり言うんだろう。
「でもわたし、宮司に拘ってないよ。この冬月神社を守れたらいいだけ。宮司になりたいって人がお婿さんに来てくれたら、それでいいんだ」
「お、おムコさんって」
龍司の顔が真っ赤になった。
「スズ香のくせに、もう結婚のこと考えてるのかよっ。恋人もいないくせに! 小学生のくせに!」
くせにくせに、うるさい。龍司だって小学生でしょ。
「跡取りなんだから、ちょっとは考えるよ。わたしがお嫁さんに行くわけにはいかないんだから」
「ダメだダメだ、早すぎる! つか、スズ香って嫁に行けないのかよ。家を継ぐって、そういうことなのか……」
龍司の顔が、今度は青くなった。それから真剣な顔でわたしを見る。
「おれ、思うんだけどさ。狭い町に、寺と神社が両方なくてもよくね?」
「……どうしたの? 急に」
「江戸時代とかってさ、寺も神社も一緒だったんだってよ。だから、ひとつにしちゃってもいいんじゃねえかな」
「なに言ってるの龍司。さっき自分で、寺と神社じゃ役割が違うって言ってたじゃない」
「いや、けっこう似てるよ。ほぼ同じかもしれない!」
《小僧、必死だな》
《ホント、素直じゃないわねえ》
コンゴウとシロガネは、あきれたような表情になった。
わけのわからないことを言い出した龍司を神社から追い出して、わたしはおジイちゃんの手伝いをしに社務所に向かった。
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