15 / 43
一章 初めての事故物件
一章 初めての事故物件 その13
しおりを挟む
「どんなことを覚えているんだ」
雄誠の言葉を受けて、洋平は腕を組んで思い出すように天井を見た。
――実家は三百六十度、山に囲まれていました。東京のような高層ビルはありません。
《田舎なら、そんな景色ばっかりだよ》
《わかるのは海沿いではないってくらいだよな》
《東北だとか関東だとか、エリアを絞れるといいんだけど》
ヒントが足りないらしい。
洋平は更に記憶を絞り出そうとするかのように目を強く閉じる。
――変わった街並みだった気もします。オブジェが立っているような。
《町にオブジェ? どういうこと?》
《桜新町の“サザエさん通り”みたいな感じだろ》
《バリバリ都内じゃん》
《そういうイメージなら、鳥取県境港市の“水木しげるロード”だ! 町中にめっちゃブロンズ像がある》
《水木しげるって境港市って言われちゃうけど、東京の調布市を忘れないで!》
《妖怪と言えば、私が住んでる兵庫県福崎町も、柳田国男の地元ってことで妖怪が増えたよ。池から河童が出てくる公園もある》
《なんで妖怪自慢になってるんだよ》
チャットがご当地の話題で盛り上がる。
――そういうのではなかった気がします。なにかもっと、町の伝統のような……。
「だが、岡山県倉敷市や埼玉県川越市あたりの、伝統的な街並みではないんだろ?」
雄誠も住所特定の話題に参加する。
――はい。違和感があるくらいの置物が、町中に設置されていた記憶があります。
(なんだそれ)
央都也はまったく想像がつかない。
《置物って……、ブロンズ像みたいなものじゃないってことか》
《わかった! 超自信ある。宮城県の鳴子温泉だ! 条件にぴったり!》
URLも貼られたので、央都也はクリックする。
鳴子温泉駅にある“駅長こけし”なるものから始まり、ポストもこけしなら、公衆電話にもこけしの頭がついてる。
(なるほど、これはシュールだ)
洋平が言っていた通り、違和感のある伝統的な置物があちこちに点在していた。
洋平は瞳を輝かせた。
――近いですね! こんな感じです。でも、人の形をしていなかったと思います。
モニターの写真を見ながら、興奮したように洋平は何度もうなずいた。
《おおっ、近づいてる、近づいてる!》
《我ら優秀!》
《香川県にオブジェがいっぱいある島ならあるんだけど》
《遠ざかった。山に囲まれてるっつってただろ》
しばらく、ここはどうだと案が出るが、洋平はしっくりこないようだ。
(もう正解が出てるのに、この霊が思い出せないだけなんじゃないか?)
央都也が疑い始めた頃、ハイテンションの書き込みがあった。
《あったあった、これはビンゴだわ! 答え書いちゃうけどいい? もっと考えたい?》
《もったいぶらないでいいよ》
《まだ合ってるかわからないだろ》
停滞し始めていたチャットが再び活気づく。
雄誠や洋平が前のめりになる中、央都也は変わらず膝を抱えていた。参加者たちの熱量に、一人だけついていけない。
《じゃあ、特定しちゃうね!》
街並みの写っているURLが書き込まれた。
雄誠の言葉を受けて、洋平は腕を組んで思い出すように天井を見た。
――実家は三百六十度、山に囲まれていました。東京のような高層ビルはありません。
《田舎なら、そんな景色ばっかりだよ》
《わかるのは海沿いではないってくらいだよな》
《東北だとか関東だとか、エリアを絞れるといいんだけど》
ヒントが足りないらしい。
洋平は更に記憶を絞り出そうとするかのように目を強く閉じる。
――変わった街並みだった気もします。オブジェが立っているような。
《町にオブジェ? どういうこと?》
《桜新町の“サザエさん通り”みたいな感じだろ》
《バリバリ都内じゃん》
《そういうイメージなら、鳥取県境港市の“水木しげるロード”だ! 町中にめっちゃブロンズ像がある》
《水木しげるって境港市って言われちゃうけど、東京の調布市を忘れないで!》
《妖怪と言えば、私が住んでる兵庫県福崎町も、柳田国男の地元ってことで妖怪が増えたよ。池から河童が出てくる公園もある》
《なんで妖怪自慢になってるんだよ》
チャットがご当地の話題で盛り上がる。
――そういうのではなかった気がします。なにかもっと、町の伝統のような……。
「だが、岡山県倉敷市や埼玉県川越市あたりの、伝統的な街並みではないんだろ?」
雄誠も住所特定の話題に参加する。
――はい。違和感があるくらいの置物が、町中に設置されていた記憶があります。
(なんだそれ)
央都也はまったく想像がつかない。
《置物って……、ブロンズ像みたいなものじゃないってことか》
《わかった! 超自信ある。宮城県の鳴子温泉だ! 条件にぴったり!》
URLも貼られたので、央都也はクリックする。
鳴子温泉駅にある“駅長こけし”なるものから始まり、ポストもこけしなら、公衆電話にもこけしの頭がついてる。
(なるほど、これはシュールだ)
洋平が言っていた通り、違和感のある伝統的な置物があちこちに点在していた。
洋平は瞳を輝かせた。
――近いですね! こんな感じです。でも、人の形をしていなかったと思います。
モニターの写真を見ながら、興奮したように洋平は何度もうなずいた。
《おおっ、近づいてる、近づいてる!》
《我ら優秀!》
《香川県にオブジェがいっぱいある島ならあるんだけど》
《遠ざかった。山に囲まれてるっつってただろ》
しばらく、ここはどうだと案が出るが、洋平はしっくりこないようだ。
(もう正解が出てるのに、この霊が思い出せないだけなんじゃないか?)
央都也が疑い始めた頃、ハイテンションの書き込みがあった。
《あったあった、これはビンゴだわ! 答え書いちゃうけどいい? もっと考えたい?》
《もったいぶらないでいいよ》
《まだ合ってるかわからないだろ》
停滞し始めていたチャットが再び活気づく。
雄誠や洋平が前のめりになる中、央都也は変わらず膝を抱えていた。参加者たちの熱量に、一人だけついていけない。
《じゃあ、特定しちゃうね!》
街並みの写っているURLが書き込まれた。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
此処は讃岐の国の麺処あやかし屋〜幽霊と呼ばれた末娘と牛鬼の倅〜
蓮恭
キャラ文芸
――此処はかつての讃岐の国。そこに、古くから信仰の地として人々を見守って来た場所がある。
弘法大師が開いた真言密教の五大色にちなみ、青黄赤白黒の名を冠した五峰の山々。その一つ青峰山の近くでは、牛鬼と呼ばれるあやかしが人や家畜を襲い、村を荒らしていたという。
やがて困り果てた領主が依頼した山田蔵人という弓の名手によって、牛鬼は退治されたのだった。
青峰山にある麺処あやかし屋は、いつも大勢の客で賑わう人気の讃岐うどん店だ。
ただし、客は各地から集まるあやかし達ばかり。
早くに親を失い、あやかし達に育てられた店主の遠夜は、いつの間にやら随分と卑屈な性格となっていた。
それでも、たった一人で店を切り盛りする遠夜を心配したあやかしの常連客達が思い付いたのは、「看板娘を連れて来る事」。
幽霊と呼ばれ虐げられていた心優しい村娘と、自己肯定感低めの牛鬼の倅。あやかし達によって出会った二人の恋の行く末は……?
『イケメンだけど文句ある?』ってチャンネル名のYouTuberに出会ったから文句言ってやろうと意気込んだのに、どうしてこうなった!?
i.q
恋愛
イケメンYouTuberがカメラが回っていないのに私の心を奪いに来る!?
自分の名前にコンプレックスを持つ主人公の月。フルネームを呼ばれるのが嫌で人生地味に無難に生きてきた。そんな月が仕事中に出会ったのがチャンネル名『イケメンだけど文句ある?』で動画配信する超イケメンYouTuberのレックス。彼の部屋に入る事を特別に許される事になる月はいけ好かないと思っていたレックスに文句を言えるのか!? 画面越しでしか見たことの無かった男の本当の姿は?
国宝級イケメンYouTuberと繰り広げる、キラキラなラブストーリー!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
戒め
ムービーマスター
キャラ文芸
悪魔サタン=ルシファーの涙ほどの正義の意志から生まれたメイと、神が微かに抱いた悪意から生まれた天使・シンが出会う現世は、世界の滅びる時代なのか、地球上の人間や動物に次々と未知のウイルスが襲いかかり、ダークヒロイン・メイの不思議な超能力「戒め」も発動され、更なる混乱と恐怖が押し寄せる・・・
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる