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3 まだまだ続くよ! 試練その3

まだまだ続くよ! 試練その3 7

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「おれが開けます」
 隼人はスコップの上のカプセルを持ち上げた。
 池の横にある花壇まで、少し移動する。
「~~~~~~っ!」
 隼人は顔を赤くして、歯を食いしばってカプセル開けようとするけれど、ふたはピクリとも動かなかった。
「ちょっと貸して」
 わたしも挑戦してみた。
「ふぬぬっ」
 でも、ふたは接着剤でくっついているみたいに、ぜんぜん動かない。
「おれが開かないのに、マユカに開けられるわけないだろ。貸してみろよ」
 なんだか、隼人は不機嫌のようだった。
「隼人はさっき、開けられなかったでしょ。センパイ、パス!」
「どれどれ」
 カプセルを受け取った大地センパイがふたをひねると、いともアッサリと開いた。
「わあっ、センパイ、すごいです!」
「オレは、力だけはあるんだよ」
「手も大きいですよね」
 大地センパイと手を合わせてみたら、子供と大人ってくらい違った。センパイの手は骨っぽくて、筋が浮いていて、指が長くて大きくて、男の人! って感じがしてドキドキしてしまう。
「隼人も比べてみれば?」
「おれはいい」
 隼人は細い眉をつり上げている。
 あれ、やっぱり、機嫌が悪い。
 あっ、そうか!
 隼人は数年前まで、女の子みたいってずっと言われていたらから、女の子扱いされるのが大嫌いなんだ。男らしさみたいなものに、とてもこだわってる。
 さっきからセンパイたちが力仕事を取っていっちゃうから、それが気にくわないのかもしれない。
 隼人は中学一年生にしては身長が高いと思うし、力だってあるとは思うけど、でも三年生の、しかもその中でも大きい生徒会長や大地センパイと比べると、どうしても小さく見える。
 別に、気にすることないのにね!
「なんだこれ。重いと思ったら、コンクリが入ってるのか? ……いや、猫砂が固まったもののようだな」
 大地センパイが、タイプカプセルの中身を取り出しながら首をひねった。
「どうして、タイムカプセルに猫砂が入ってるのかな?」
 わたしは隼人にたずねる。
「タイムカプセルの敵は、水だ。湿気とか雨水とかで、タイムカプセルの中が水びだしになってるって失敗談は、よくある。生徒会長はいろいろと調べて、そういう対策をしていたんだろう」
 まだ眉間にしわを寄せたままの隼人が、そう解説してくれた。
「じゃあ、猫砂が池の水を吸ったから、こんなに重くなったんだな。隼人、おまえは本当に博識だな」
 大地センパイに褒められて、隼人はぷいっと顔をそらせた。怒っていいのか、照れていいのか、わからないって感じの顔をしている。
 大地センパイは、ものすごく長い足を組んで花壇の縁に座った。そしてカプセルの中のセメントみたいな灰色の塊を、花壇の縁に置く。
 灰色の猫砂からは、ビニール袋がはみ出していた。
 大地センパイは花壇の縁に猫砂の塊をぶつけて割って、ビニール袋を取り出した。
「紫苑のヤツ、かなり厳重に保管してたんだな。紙は全然濡れてない」
 わたしも大地センパイのとなりに座って、その紙に注目した。隼人はわたしたちの前に立っている。
「うわっ、あいつの手紙、長いな」
 大地センパイは苦笑する。
 小さな便せんに、三枚の手紙が入っていた。小学一年生だった生徒会長が、中学一年生になった自分に宛てたもの。
 そこには、家族を大切にすることとか、妹を守ることとか、将来の夢に向かってしっかり勉強することとか、すごく真面目なことがビッシリと書いてあった。
「ははっ、あいつらしいな。紫苑は妹が好きすぎるって弱点以外は、カンペキな優等生だから。まあ、真面目が行き過ぎて、ザンネンなところも多々あるけど」
「妹好きは弱点ですか? わたし、あんなに素敵なお兄さんに好き好きって言われたら、うれしいです」
「まあ、度をこさなければな。でも実は美香も恥ずかしがっているだけで、内心ではイヤがっていないと思うよ。オレはあの兄妹と幼稚園のころから一緒なんだけど、そのころはベッタリだった。美香の今の態度は、その反動なんじゃないかな」
「兄妹、仲良しだったんですね」
「紫苑たちの親は共働きで留守がちだったから、二人で支えあってたんだよ」
 へえ、親があまり家にいなかったんだ。うちと同じだ!
 大地センパイが持っている袋の中には、便せんともうひとつ、ハート形に折られた折り紙が入っていた。
「これが、美香が書いた手紙だろう」
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