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2 試練その1、それから、その2
試練その1、それから、その2 5
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「あっ」
またわたしの頭に、ビリビリッとしたものが走った。
「ひらめきました!」
わたしはパイプ椅子をずらして立ち上がった。
「指輪は、ぬか床にあるはずです!」
「どうしてぬか床なんかに……あっ」
大地センパイは、スマートフォンを持った手で、ポンと手を打った。
「確かにおふくろ、朝飯と夕飯用の野菜を取り出すときに、ぬか床をかき混ぜてるわ」
右手でぬか床をかき混ぜるなら、左手の薬指にはめる指輪は入らないけど、大地センパイのお母さんは左利き。かき混ぜている時に指輪が外れてしまったに違いない。
これなら指輪が落ちていないから音がしないし、ツルリと抜けて、外れたことにも気づきにくいと思う。
「ちょっと、おふくろに電話してくる」
大地センパイはスマートフォンを持ったまま部室を出た。
しばらくして戻ってくると、
「指輪、ぬか床にあったって。メッチャ感謝してた」
と報告してくれた。
「やったね!」
わたしはガッツポーズをした。
理論を組み立てるような問題は隼人のほうが強いんだけど、ヒラメキ問題はわたしの方が得意なんだよ!
大地センパイがにっこりと笑顔を向けてくる。
「マユカちゃん、ありがとう。今日からこの部は、“文芸・名探偵部”だ」
うわあ、夢の名探偵部だ!
「はい、よろしくお願いします!」
立ったままだったわたしは、深々と頭を下げた。隼人も、座ったまま頭を下げる。
「でも実は、この部はとても重大な問題を抱えている」
「重大な問題、ですか?」
大地センパイが、わたしの前に立った。壁みたいに大きい。
わたしはゴクリとツバをのみこんだ。
「マユカちゃんに質問する」
「はいっ」
「この部屋には今、何人いる?」
「四人です」
「部として、最低限必要な人数は?」
「五人です。……えっ?」
わたしは、イヤな予感がした。
「もしかして……」
「そう。昨年、ごっそり三年が抜けた文芸部は、今はオレと美香しかいないんだ」
「じゃあ、今日中にもう一人部員が入らないと……」
「廃部だ」
「ええええーーーーーーーーーーっ!」
せっかく、念願の名探偵部ができると思ったのに!!
「は、隼人、どうしよう⁉」
「最少催行人数に満たないイベントは……」
ああっ、隼人は遠い目をして、もうあきらめてる!
「やあ、困ってるね」
そこで突然、文芸部のドアが開いた。
入ってきたのは、見覚えのある、整った顔の男子生徒。
「えっ、生徒会長⁉」
どうして、ここに来たんだろう?
「さあ、もう四時だよ。一年生が二人入部したみたいだけど、それでも四人。廃部決定だね」
あわわっ! 生徒会長は廃部センコクに来たんだ!
「隼人っ、このままじゃ名探偵部がなくなっちゃうようっ!」
「ナニゴトもあきらめが肝心」
なんか、サトリを開いた人っぽくなってる!
「さあ大地。観念して、この廃部届にサインするんだ。部長としての最後の仕事だな」
生徒会長はうっすらと笑みを浮かべながら、小さな紙を大地センパイに突き出した。
ああっ、どうしよう。
本当に文芸・名探偵部は、廃部になっちゃうの⁉
またわたしの頭に、ビリビリッとしたものが走った。
「ひらめきました!」
わたしはパイプ椅子をずらして立ち上がった。
「指輪は、ぬか床にあるはずです!」
「どうしてぬか床なんかに……あっ」
大地センパイは、スマートフォンを持った手で、ポンと手を打った。
「確かにおふくろ、朝飯と夕飯用の野菜を取り出すときに、ぬか床をかき混ぜてるわ」
右手でぬか床をかき混ぜるなら、左手の薬指にはめる指輪は入らないけど、大地センパイのお母さんは左利き。かき混ぜている時に指輪が外れてしまったに違いない。
これなら指輪が落ちていないから音がしないし、ツルリと抜けて、外れたことにも気づきにくいと思う。
「ちょっと、おふくろに電話してくる」
大地センパイはスマートフォンを持ったまま部室を出た。
しばらくして戻ってくると、
「指輪、ぬか床にあったって。メッチャ感謝してた」
と報告してくれた。
「やったね!」
わたしはガッツポーズをした。
理論を組み立てるような問題は隼人のほうが強いんだけど、ヒラメキ問題はわたしの方が得意なんだよ!
大地センパイがにっこりと笑顔を向けてくる。
「マユカちゃん、ありがとう。今日からこの部は、“文芸・名探偵部”だ」
うわあ、夢の名探偵部だ!
「はい、よろしくお願いします!」
立ったままだったわたしは、深々と頭を下げた。隼人も、座ったまま頭を下げる。
「でも実は、この部はとても重大な問題を抱えている」
「重大な問題、ですか?」
大地センパイが、わたしの前に立った。壁みたいに大きい。
わたしはゴクリとツバをのみこんだ。
「マユカちゃんに質問する」
「はいっ」
「この部屋には今、何人いる?」
「四人です」
「部として、最低限必要な人数は?」
「五人です。……えっ?」
わたしは、イヤな予感がした。
「もしかして……」
「そう。昨年、ごっそり三年が抜けた文芸部は、今はオレと美香しかいないんだ」
「じゃあ、今日中にもう一人部員が入らないと……」
「廃部だ」
「ええええーーーーーーーーーーっ!」
せっかく、念願の名探偵部ができると思ったのに!!
「は、隼人、どうしよう⁉」
「最少催行人数に満たないイベントは……」
ああっ、隼人は遠い目をして、もうあきらめてる!
「やあ、困ってるね」
そこで突然、文芸部のドアが開いた。
入ってきたのは、見覚えのある、整った顔の男子生徒。
「えっ、生徒会長⁉」
どうして、ここに来たんだろう?
「さあ、もう四時だよ。一年生が二人入部したみたいだけど、それでも四人。廃部決定だね」
あわわっ! 生徒会長は廃部センコクに来たんだ!
「隼人っ、このままじゃ名探偵部がなくなっちゃうようっ!」
「ナニゴトもあきらめが肝心」
なんか、サトリを開いた人っぽくなってる!
「さあ大地。観念して、この廃部届にサインするんだ。部長としての最後の仕事だな」
生徒会長はうっすらと笑みを浮かべながら、小さな紙を大地センパイに突き出した。
ああっ、どうしよう。
本当に文芸・名探偵部は、廃部になっちゃうの⁉
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