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四章 闇落ち ~破滅の刻~
闇落ち ~破滅の刻~ 3
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……なんだか、胸騒ぎがする。
「――こうして特区は、人と魔族の共存の場であるだけでなく、双方の領土の治安維持に貢献し、人と魔族の両方の血を継いだ優秀な者たちが、才能を開花させる場所にもなっている」
ヴィンセントはバルコニーの手すりを掴み、大きく身を乗り出した。
「そこでみんなに意見を聞きたい。特区を……」
鋭い音が鳴り響いた。
同時に、黒い塊が頭上を通り抜ける。
ヴィンセントの言葉がとまり、胸を押さえて、片膝をつく。
その胸から、服に赤いシミが広がっていった。
あちこちから悲鳴が上がり、聴衆が身を隠そうと右往左往し始めた。
「ヴィンセント!」
ぼくはバルコニーに移動して、膝立ちの状態から横に倒れるヴィンセントを受けとめた。その胸は真っ赤に染まっていて、周囲にも血が広がっている。
「なんだよこれ……、やだ、ヴィンセント……」
血に染まったヴィンセントの手の上から、ぼくも手を重ねて傷を押さえる。それでも、溢れてくる血をとめることはできない。貫通した背中からも血が流れている。
血液はぬめっとしていて温かい。血液が溢れるほど、ヴィンセントの生命も流れ出るように感じた。
「ヴィンセント」
呼びかけると、ヴィンセントが薄く目を開いた。肌は白を通り越して青くなっている。
「アーシェン、来てくれたのか。こんな姿は、見せたくなかったな……」
ヴィンセントが苦笑する。
「なに言ってるの、きっと、すぐ医者が来てくれるから」
ぼくは治癒魔法を使えない。どうしてこんな大事な時に必要な魔法を持っていないんだ。魔力がいくら高くても、意味がないじゃないか!
「アーシェン」
ヴィンセントは胸の上にある手を返し、ぼくの手を握った。
そして、微笑んだ。
「愛している」
ヴィンセントはそう言うと、力尽きたように目を閉じた。
「ヴィンセント……」
ぼくはヴィンセントの身体を揺する。ぼくのされるがままにその身体が揺れた。
「やだ、やだよヴィンセント。死なないで、お願いだから」
鼓動と共に溢れていた血の量が極端に減った。
首筋を触っても脈はない。呼吸が止まっている。
「そんな、うそだ……。ぼくもヴィンセントが好きだよ。次に会うことができたら、愛してるって、ちゃんと伝えるつもりだったのに……!」
ぼくはヴィンセントに抱きついて泣いた。
どうしてヴィンセントが死ななければいけないんだ。
こんな展開、知らない。
ぼくがこの世界を捻じ曲げたから?
ぼくの代わりにヴィンセントが死んでしまったの?
打ちひしがれているぼくの頭上で、「一体どこから来たんだ、どけ」と頭を押された。
タルボット侯爵だ。
侯爵は足でヴィンセント蹴って反応を確かめ、「よし、死んでるな」とニヤリと笑う。ぼくはヴィンセントを守るように抱きかかえた。
「――こうして特区は、人と魔族の共存の場であるだけでなく、双方の領土の治安維持に貢献し、人と魔族の両方の血を継いだ優秀な者たちが、才能を開花させる場所にもなっている」
ヴィンセントはバルコニーの手すりを掴み、大きく身を乗り出した。
「そこでみんなに意見を聞きたい。特区を……」
鋭い音が鳴り響いた。
同時に、黒い塊が頭上を通り抜ける。
ヴィンセントの言葉がとまり、胸を押さえて、片膝をつく。
その胸から、服に赤いシミが広がっていった。
あちこちから悲鳴が上がり、聴衆が身を隠そうと右往左往し始めた。
「ヴィンセント!」
ぼくはバルコニーに移動して、膝立ちの状態から横に倒れるヴィンセントを受けとめた。その胸は真っ赤に染まっていて、周囲にも血が広がっている。
「なんだよこれ……、やだ、ヴィンセント……」
血に染まったヴィンセントの手の上から、ぼくも手を重ねて傷を押さえる。それでも、溢れてくる血をとめることはできない。貫通した背中からも血が流れている。
血液はぬめっとしていて温かい。血液が溢れるほど、ヴィンセントの生命も流れ出るように感じた。
「ヴィンセント」
呼びかけると、ヴィンセントが薄く目を開いた。肌は白を通り越して青くなっている。
「アーシェン、来てくれたのか。こんな姿は、見せたくなかったな……」
ヴィンセントが苦笑する。
「なに言ってるの、きっと、すぐ医者が来てくれるから」
ぼくは治癒魔法を使えない。どうしてこんな大事な時に必要な魔法を持っていないんだ。魔力がいくら高くても、意味がないじゃないか!
「アーシェン」
ヴィンセントは胸の上にある手を返し、ぼくの手を握った。
そして、微笑んだ。
「愛している」
ヴィンセントはそう言うと、力尽きたように目を閉じた。
「ヴィンセント……」
ぼくはヴィンセントの身体を揺する。ぼくのされるがままにその身体が揺れた。
「やだ、やだよヴィンセント。死なないで、お願いだから」
鼓動と共に溢れていた血の量が極端に減った。
首筋を触っても脈はない。呼吸が止まっている。
「そんな、うそだ……。ぼくもヴィンセントが好きだよ。次に会うことができたら、愛してるって、ちゃんと伝えるつもりだったのに……!」
ぼくはヴィンセントに抱きついて泣いた。
どうしてヴィンセントが死ななければいけないんだ。
こんな展開、知らない。
ぼくがこの世界を捻じ曲げたから?
ぼくの代わりにヴィンセントが死んでしまったの?
打ちひしがれているぼくの頭上で、「一体どこから来たんだ、どけ」と頭を押された。
タルボット侯爵だ。
侯爵は足でヴィンセント蹴って反応を確かめ、「よし、死んでるな」とニヤリと笑う。ぼくはヴィンセントを守るように抱きかかえた。
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