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一章 信頼できるパートナー
信頼できるパートナー 6
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「わたしには先読みの力があると言っただろう」
ぼくはヴィンセントの問いに答えてから、現状を伝えた。
魔族と人の小競り合いの結果、一触即発状態になっていること。このままでは世界に甚大な被害が及ぶこと。
だから、魔族と人が手を取り合える平和な世界を作るために、協力してほしい。
そう力説すると、勇者は驚きと困惑が混ざったような表情になった。
「魔族が一枚岩ではないことは理解しているつもりだったが、世界平和なんて言葉を魔王から聞くとは思わなかった。お花畑の理想論者でさえ口にしないだろ」
そんなに現実離れした考えだろうか。
「市井の戯言ではないのだぞ。魔族の王と勇者が手を組んで、叶わぬことなどあるだろうか」
ぼくはヴィンセントを真っすぐに見つめて問う。ヴィンセントは表情を改めた。
「本気なんだな」
ぼくは頷いた。
ヴィンセントは腕を組み、長い指先でトントンと腕をノックしながら思案し始めた。
光沢のあるシルクの赤い寝衣越しにも、引き締まった肉体が見てとれる。自分を長身だと思ったけれど、ヴィンセントは更に十センチほど身長が高い。
さすがに騎士だけあって鍛えてある。ぼくとは体格がぜんぜん違った。ぼくは魔法で遠距離から攻撃するタイプだから筋肉は必要ないとはいえ、もし白兵戦になったらひとたまりもないだろう。
ヴィンセントが動かなくなってしまったので、ぼくは手持ち無沙汰になって、そんなことを思っていた。彼が長考するのは仕方がない。世界がかかっているんだからね。
ふと、自分の尻尾が視界に入った。
尻尾はずっとそこにあるものだけれど、今のぼくにとっては新鮮だ。記憶を取り戻してからは、魔王とぼくが融合したハイブリッド型の人格になったとでもいおうか。長年この世界にいたのにもかかわらず、いろんなことが目新しく感じる。
ぼくの尻尾は床につくくらいに長くて、付け根は太く、先端に行くほど細くなる。
どんな感触なのかな?
黒い尻尾を手前に持ってきて触ってみる。鱗がついていて、蛇のような感触だ。サラサラしていて触り心地がいい。
尻尾が受ける感覚はというと、先端はそれほどでもないけれど、根元のほうはちょっとくすぐったい。本体に近いから、先端よりも神経が多いのかもしれない。
「なぜ自分の尻尾をなでまわしているんだ」
揶揄した声音が飛んできて顔をあげると、ヴィンセントがあきれた顔をしていた。ぼくはちょっと恥ずかしくなる。
いつから見られていたんだろう。
「オレにも触らせてくれよ」
「えっ」
それは、ちょっと、イヤなんですけど。
ヴィンセントが近づいてくる。
ええい、消しちゃえ!
ぼくはまた人間に化けた。
「なんで消すんだ」
不満そうな表情のヴィンセントはぼくの背後に回り――。
次の瞬間、ぼくはホールドされて、首にナイフを突きつけられていた。
ぼくはヴィンセントの問いに答えてから、現状を伝えた。
魔族と人の小競り合いの結果、一触即発状態になっていること。このままでは世界に甚大な被害が及ぶこと。
だから、魔族と人が手を取り合える平和な世界を作るために、協力してほしい。
そう力説すると、勇者は驚きと困惑が混ざったような表情になった。
「魔族が一枚岩ではないことは理解しているつもりだったが、世界平和なんて言葉を魔王から聞くとは思わなかった。お花畑の理想論者でさえ口にしないだろ」
そんなに現実離れした考えだろうか。
「市井の戯言ではないのだぞ。魔族の王と勇者が手を組んで、叶わぬことなどあるだろうか」
ぼくはヴィンセントを真っすぐに見つめて問う。ヴィンセントは表情を改めた。
「本気なんだな」
ぼくは頷いた。
ヴィンセントは腕を組み、長い指先でトントンと腕をノックしながら思案し始めた。
光沢のあるシルクの赤い寝衣越しにも、引き締まった肉体が見てとれる。自分を長身だと思ったけれど、ヴィンセントは更に十センチほど身長が高い。
さすがに騎士だけあって鍛えてある。ぼくとは体格がぜんぜん違った。ぼくは魔法で遠距離から攻撃するタイプだから筋肉は必要ないとはいえ、もし白兵戦になったらひとたまりもないだろう。
ヴィンセントが動かなくなってしまったので、ぼくは手持ち無沙汰になって、そんなことを思っていた。彼が長考するのは仕方がない。世界がかかっているんだからね。
ふと、自分の尻尾が視界に入った。
尻尾はずっとそこにあるものだけれど、今のぼくにとっては新鮮だ。記憶を取り戻してからは、魔王とぼくが融合したハイブリッド型の人格になったとでもいおうか。長年この世界にいたのにもかかわらず、いろんなことが目新しく感じる。
ぼくの尻尾は床につくくらいに長くて、付け根は太く、先端に行くほど細くなる。
どんな感触なのかな?
黒い尻尾を手前に持ってきて触ってみる。鱗がついていて、蛇のような感触だ。サラサラしていて触り心地がいい。
尻尾が受ける感覚はというと、先端はそれほどでもないけれど、根元のほうはちょっとくすぐったい。本体に近いから、先端よりも神経が多いのかもしれない。
「なぜ自分の尻尾をなでまわしているんだ」
揶揄した声音が飛んできて顔をあげると、ヴィンセントがあきれた顔をしていた。ぼくはちょっと恥ずかしくなる。
いつから見られていたんだろう。
「オレにも触らせてくれよ」
「えっ」
それは、ちょっと、イヤなんですけど。
ヴィンセントが近づいてくる。
ええい、消しちゃえ!
ぼくはまた人間に化けた。
「なんで消すんだ」
不満そうな表情のヴィンセントはぼくの背後に回り――。
次の瞬間、ぼくはホールドされて、首にナイフを突きつけられていた。
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