上 下
10 / 15

はち

しおりを挟む

そんな困っているときに声をかけられた

「ヴィンテッド様? シャルクスさん困ってますヨ?」

声のした方を向くと浮いたYシャツに白いズボン、金と赤の刺繍が入った紺色のエプロンに浮いている籠があった
それだけで相手が誰なのかがわかる

「…ルーセント、」
「こんにちは、ルーセントさん」
「はイ、こんにちわ」

ここの料理人は必ずエプロンをしており、みなそれぞれ色が違う
そのなかでも料理長のルーセントさんのエプロンは美しい花の刺繍が縫われており、すぐにわかる

しゃべり方も独特なのでわからなくもないが
料理人たちはレイス(亡霊)なのでほぼ見えないし、喋りがあまり上手ではないため
エプロンで判断した方が正しい

「?」

ルーセントさんの持っている籠からは甘い香りがする
私はなんだろうと見つめているとそれに気づいたルーセントさんは籠の上にかかっていた布を退かす

「今日のおやつですヨ」

クッキーが小袋に分けられたものがたくさん入っていた

「これハ、ちみっ子達ノ シャルクスさんのは後で持って行きますネ」

表情はわからないけど
声や言葉で楽しそうに話していることがわかり
私は微笑んで楽しみにしていると返事をする

「ヴィンテッド様も欲しいのでしたラ、邪魔は良くないですヨ?」
「…………月が欠けるときに持ってこい」

ヴィンテッドさんはそう言うと消えた
今日はルーセントさんに助けてもらったらしい

「ルーセントさん、助けていただきありがとうございます」
「いえいエ。 お菓子を作れるようになったのハ、シャルクスさんのお陰ですシ」

一礼をしたあとルーセントさんは院の方へ行った

このお城には院と呼ばれている、子供たちが通う学校のような施設がある
教会のような歌を歌ったり、聖書のようなものを覚えるところかと思っていたが、そうではなく
普通に歴史や言葉、簡単な勉強を習うというところだった

ルーセントさんは子供たちが好きで
私が来てからは毎日お菓子を差し入れしにいっている

何故、私が来てからかなのは
私が作り方を教えたというのもあるが、
ルーセントさんに人の食べているものを使い、食べられるものを作って良いと許可が出たからだ

「もう、こんな時間…」

月が欠けようとしている
もうすぐ夜が来るということだ

「…今日は月が満ちている時が短い日なのね」

私はもう誰もいない廊下を歩きだした
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

【R18】悪役令嬢を犯して罪を償わせ性奴隷にしたが、それは冤罪でヒロインが黒幕なので犯して改心させることにした。

白濁壺
恋愛
悪役令嬢であるベラロルカの数々の悪行の罪を償わせようとロミリオは単身公爵家にむかう。警備の目を潜り抜け、寝室に入ったロミリオはベラロルカを犯すが……。

巨根王宮騎士の妻となりまして

天災
恋愛
 巨根王宮騎士の妻となりまして

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

迷い込んだ先で獣人公爵の愛玩動物になりました(R18)

るーろ
恋愛
気がついたら知らない場所にた早川なつほ。異世界人として捕えられ愛玩動物として売られるところを公爵家のエレナ・メルストに買われた。 エレナは兄であるノアへのプレゼンとして_ 発情/甘々?/若干無理矢理/

処理中です...