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オナホール

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 陰茎が引き抜かれる感覚で、瑛は何回目かのアクメに達した。まだ痙攣が止まらない。
 ようやく解放されたと思った瞬間、ぽっかりと開いたアナルに、瞳の指が滑り込んできた。

「あっ、やめ……今、抜いたばっかり……」

 思うように動かない体を捩って嫌がるが、アナルはちゅぱちゅぱとしゃぶるような音を立てて、瞳の指に吸い付いた。まるで、穴を埋めてもらって喜んでいるみたいだ。

「今、イキやすくなってるから、イキ癖つけましょう」
「変な癖つけるな……!」

 力の入らない腕で瞳の体を押すが、下半身は瑛の気持ちとは反対に、腰を揺らして指にちゅうちゅうとしゃぶりつく。

「や、やだ……」

 指じゃ足りない。足りないのに、無理やりイカされる。
 前立腺を指で挟んで扱かれると、瑛は全身をこわばらせて射精した。もう水のようなザーメンしか出なかった。
 瞳はまだ手遊びのように、瑛の中で指を動かしている。
 アナルがじんじんと痺れて、奥が疼いた。

「瞳ーー」
「佐久間さん、めちゃくちゃエッチでした!」

 瞳はパッと体を起こすと、まだ甘イキが続く瑛をぎゅっと抱きしめた。

「佐久間さん、好き! 大好き!!」

 空気の読めなさには毎回呆れるが、瑛は諦めて瞳の頭をぽんぽんと撫でた。

「俺、いつか佐久間さんに頭を撫でられるだけでイケるようになるんじゃないかなって思ってます!」

 最初に決めた『嫌じゃない時は頭を撫でる』というルールは、まだなんとなく生きている。
 瑛は、あえて愛撫するような手つきで瞳の髪を指で梳いた。

「佐久間さん……」

 密着する瞳の胸が、どきどきと高鳴るのが伝わってくる。

「瞳ーー」
「もう! だめです!! またしたくなっちゃうから!!」

 またしたくなっちゃう気分にさせてんだよ。気づけよ。
 瞳は体を離すと、床に散らかっていたTシャツを着てしまった。

「あっそうだ。俺、来週から忙しくなるから、佐久間さんと全く会えないと思います!」
「は……?」

 シャワーを浴びようと起き上がった瑛から、思わず低い声が漏れた。

「……いつまで?」
「とりあえず、今月いっぱいですかね」

 今月まだ三日なんだが。
 こともなげに言う瞳へ、じっとりとした目を向ける。

「へ、へー……夜とか休みとかも、全然会えないってこと?」
「まあそうですね。帰りはほとんど終電ギリギリだと思うし、土日は施工立ち会いがあるんで」

 え? ほぼ一ヶ月会えないってこと? 嫌なんだが。嫌だと思う自分も、なんか嫌だ。

「……ここに来てもいい?」

 思わずしょんぼりとした声が漏れる。

「いいですけど、俺、会社に泊まることとかもあるし……あ、さっきのやつ観たいですか? あれ、続き気になっちゃいますよね!」

 さっきのあれ、とは動画配信サービスの海外ドラマのことだ。
 瞳は、家に連れ込んでいきなりセックスするのは気が引けるのか、毎回『美味しいお土産もらって~』とか『面白いドラマがあって~』と口実を作って瑛を誘う。そして毎回律儀に、誘った理由のノルマをこなしてからセックスに突入する。
 面倒くさくないか? いや、まあいいけど……

「これ、どうぞ! 俺がいなくても勝手に入って続き観てください! 家のものも好きに使ってくれて大丈夫なんで!」
「ああ……うん、サンキュー」

 全く色気のない合鍵のもらい方をしてしまった。





 それから一週間、まじで瞳からなんの連絡もなかった
 元々瞳は、遠慮しているのか、自分からは滅多に連絡してこない。いつもなら、瑛からメッセージを送れば、テンションの高い返事が返ってくるが、今回はそれも途切れがちだ。
 瑛も、彼女からの連絡を鬱陶しいなと思ったことはあった。忙しい時に『どうしてる?』なんて訊かれてもダルいだけだ。
 気持ちはわかる。わかるけど、一応彼氏なのに酷くないか?
 瑛は思い切って『今日、瞳の家に行ってもいい?』とメッセージを送った。
 勝手に入っていいと言われても、家主不在の家に入るのは気が引ける。だが、そんなことを言っていると、次に瞳に会えるのはいつになるかわからない。
 瞳からは、『じゃあ、なるべく早く帰りますね!』と返信があったものの、実際に帰ってきたのは日付の変わる直前だった。

「ごめんなさい、起こしちゃいましたか?」

 瞳の柔らかい声が耳元で響く。することがなくてベッドでうとうとしていた瑛は、暗闇の中で声の方へ手を伸ばした。

「すみません、早く帰れなくて」

 瞳が瑛の手を取って、きゅっと握りしめる。その声には疲れが滲んでいた。忙しい中、それでも急いで帰ろうとしてくれた瞳に、愛おしさが込み上げてくる。

「佐久間さん、もう寝ますか?」

 瞳が服を脱ぐ音が聞こえる。下半身が期待で疼いた。

「いや、お前がいいなら俺は遅くなっても……」
「俺は……」

 下着だけになった瞳が、瑛の隣に入ってくる。

「くっさ! 汗くっさ!!!」

 瑛は瞳の体をガンガン蹴り飛ばした。

「俺、もう眠くて」
「ちょ……シャワーくらい浴びろよ! そのままベッドに入るなって……くっさ!!」
「無理……風呂は明日の朝入るから……」

 瞳は半分寝ぼけているのか、ジタバタ暴れる瑛の体を抱きしめた。

「帰ってきて、家に佐久間さんがいるのって最高ですね……」
「ちょ……臭いしべとべとしてるし、触んなって……」

 枕のように抱きつかれて、嫌なのに離れられない。

「佐久間さん、キスだけしていい?」
「え、まあ……いいけど……」

 ぎゅっと抱き合ったまま、唇が重なる。久しぶりの快感に、ぞくぞくと体が震えた。瞳の髪を掴んで、脚を絡ませる。陰茎はとっくに勃ち上がって、無意識のうちに瞳の腹に擦り付けるような動きをしていた。

「佐久間さん、勃っちゃった? ごめん、俺今日は無理かも……」

 眠そうな疲れた声に、瑛のテンションが下がる。でも、瞳の匂いに包まれて、久しぶりの体温を感じている状況で、むらむらが収まらない。
 瑛は瞳の手を取ると、陰茎に導いた。

「触って……」

 瞳は、うん、と呟いて瑛のものを握った。大きな手に包まれて扱かれると、すぐに先走りが溢れ出る。

「疲れてるのに悪い」
「ううん、佐久間さんに触ってって言われて、めちゃくちゃ嬉しいです。俺こそ、手だけでごめんね」

 甘やかすようなキスをしながら、瞳のもう一方の手が脚の奥に向かう。陰嚢を揉んで会陰を擦られると、すぐに射精感が込み上げてきた。

「あ、あっ……イキそう……」
「うん、きて」

 瞳にしがみついて、びくびくと震えながら長い射精をした。
 瞳は手の中に溢れる精液を、適当にティッシュで拭うと、ぽいぽいとゴミを床に放って、シーツで手を拭いた。

 こいつとは絶対一緒に生活できない……

 瑛がそう思っている間に、瞳は寝息を立てて眠りに落ちた。
 瑛も久しぶりにスッキリして、心地よい眠りにつくーーはずが、眠れない。
 抜いたのに、もやもやしたものが腹の奥に渦巻いている。

 前だけじゃ足りない。後ろでイケないと……

 そう気づいた瞬間、瑛の頬を冷や汗が伝った。






 翌朝、瑛が起きると瞳は家を出るところだった。

「すみません、俺もう行きますね」
「……うん、行ってらっしゃい」

 瞳はぴくっと反応すると、瑛の手を取った。

「佐久間さんに『行ってらっしゃい』って言われるの、嬉しいです!」
「あ、そう……」

 瑛は寝起きなのと、もやもやのせいで、瞳のテンションについていけない。

「今日週末だし明日は立ち会いもないから、あの……よかったら今日もうちに来て欲しいな……」

 二日も外泊するのダルいんだが、と思ったものの、瑛は、わかった、と返事をした。

「やった♡今日は本当に早く帰りますね! あ、朝ごはん作ったんで食べてください! 食器はそのまま置いといてくれて大丈夫なんで!!」

 普段は朝飯食べないし、俺が食器をシンクに置きっぱにするの大嫌いって知ってんだろうが、という気持ちは胸に秘めて、瑛は瞳を送り出した。
 愛されてるんだろうなとは思う。
 思うけど、いくら忙しいからって付き合ったばっかりで淡白すぎないか? 昨日だって、瞳が抜いて欲しいって言えば、瑛だって手や口でするつもりだった。疲れているところにセックスしてくれとは言わないが、もう少しいちゃいちゃしてくれてもいいのに。
 そこまで考えて、ハッと我に返った。瞳にも不満はあるが、セックスできないくらいで悶々とする自分も、自分じゃないみたいで落ち着かない。

 瑛は、瞳が用意した朝食をもそもそと食べながら部屋を見渡す。
 昨日、瞳が帰ってくる前に一通り家捜ししたが、怪しいものはなかった。テレビボードには、相変わらず瑛がかつて出演したゲイビのパッケージが並んでいる。
 そういえば、なんであんなビデオが好きなのか訊いたときに、マグロで無反応なところがいいとか言ってたな。
 ……もしかして、セックスに不満なのか?
 いや、割とマグロだし、反応も鈍い方だとは思うが、最近は感度が上がっている気がする。瞳がしつこいせいだ。
 あいつ、純朴そうなツラしてセックスは手慣れてるし、意外と遊んでそうだし、ゲイビデオに出たことがあるとはいえ、ほぼ処女でセックスの反応も好みじゃない俺に物足りなくなっているのでは……?
 瑛は味を感じなくなったパンを、義務感だけで飲み込んだ。
 どうせなら、パンじゃなくてご飯の方がよかった。





『やっぱり遅くなりそうなんで、先に家に行っててください』という連絡があり、瞳が帰ってきたのは、瑛が着いてから一時間ほど過ぎた頃だった。

「すみません、遅くなっちゃって」
「お疲れ」

 瑛が出迎えると、満面の笑みで応える。
 こういうところは健気でかわいいんだよな……

「忙しくて、なかなか連絡できなくてごめんなさい。その……俺の思い上がりかもしれないけど、佐久間さん、最近ちょっと欲求不満気味なのかなって思って」

 気づかれていた恥ずかしさを感じると同時に、期待に胸が弾む。

「これ買ってきたんで、よかったらどうぞ!」

 瞳が差し出した紙袋を受け取る。ケーキか何かか? 甘い物好きじゃないんだけど……

「どんなのが好みかわかんなかったんで、評価の高いやついろいろ買ってきました!」

 紙袋の中を覗いた瑛は、フーッと大きく深呼吸をして『トロまん生極』と書かれたパッケージを手に取る。

「昨日、俺寝落ちしちゃったじゃないですか。まだしばらく繁忙期続くし、佐久間さんノンケだから、そういうの使ったらどうかなって……」

 わかってる。悪気はないんだ。
 瞳としては、純粋に瑛のことを気遣ってくれた結果なのだろう。でも、これ買ってる時間あるなら、さっさと帰ってこいよ。

「……お前が寝てる横で、俺がオナホこれこれ使ってたらどう思う?」
「めちゃくちゃ興奮しますね!!」

 ダメだこいつ。

「あっ、でも今日は俺が頑張るんで、使わないでくださいね!」

 この瞬間、瑛の中で、今日のセックスプランが決まった。
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