地球と地球儀の距離

来条恵夢

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 2006/8/5

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 時々、ひどく焦燥感に駆られる。
 平穏で、平凡だが幸せな日々。特別楽しいことがなくとも、小さな幸せはたくさんあり、穏やかに流れる、そんな毎日。
 そこに、私がいていいはずがないと、こんなにも幸せではいけないのだと、そう、思ってしまう。

 ――私は、妹を殺したのだから。この手で、確かに――

「兄さん、どうなさったの。眉間にしわが。考え事?」

 ふうと、暗い闇から引き戻された。目の前では、連れ添って十年以上になる妻が、心配そうに見つめている。そういえば、夕飯の途中だった。

「兄さん、だなんて」
「あら。昼間に、アルバムの整理をしていたせいね」

 私が笑ったからか、妻も笑い返した。
 そう。私に、妹はいない。あえて「兄」と呼ぶ者があるとすれば、それは、従妹の妻くらいのものだ。

「懐かしいわね」

 遠くを見つめるように、笑う。
 その顔を見ながら、思うのだ。この罪悪感は――もしかすると、未来からの警告だろうか、と。私は、いつか妻を、この手で――。

 何も知らず、彼女は、私の前で微笑ほほえんでいた。 
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