地球と地球儀の距離

来条恵夢

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夢 2002/3/2

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 夢を見る。
 
 それはいつも決まって、同じ男が出てくるのだ。男は、扉を開けた私に向かって、口の端を上げて笑む。部屋の中も男も、これといった特徴はない。ただ、暗い。とても暗いのだ。
 蝋燭の光だけに切り取られた空間。
 男は、とても楽しそうに笑う。そして、絶望的な事を言う。
 ――毒を飲んだんだ そろそろ効いてくるかな
 足元に転がる幾つもの壜。
 ――ああ 血が止まらないねえ
 血に濡れた紅いナイフ。
 ――僕を 殺してくれるかい?
 優しい瞳で、男は死を望む。繰り返される、果てしない行為。

 願望といえば、そうかもしれない。
 何もしない日々は、無為だけが溜まって。つらいよりもひどく疲れる。
 記憶といえば、そうかもしれない。
 亡くした記憶は、戻ることがなくて。何一つ確かなものが判らない。

 男は笑っている。
 口の端を上げて。声を立てて。大きく口を開けて。酷く明るく。
 それは、紛れもなく私と、そして男自身に向けられたものなのだ。とても明るく、酷く楽しそうに。決まって男は、私を見据えたまま一人去っていく。
 ――僕を 殺してくれ
 ただ独り、残される。

 そんな 夢を見る。
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