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「じゃ、じゃぁ、私が後継になるわ!」


微かに漂い出した甘い雰囲気を、破り裂くように叫んだジュリアナは、姉に口の前で人差し指を立てて微笑まれてグッと息を呑む。


「でも、貴女、お勉強嫌いで逃げ回ってばかりでしょう?まだマナーの初歩も修了していないのに、後継教育は難しいのではない?」

「フリード様が居るから、私は大丈夫よっ!お家で楽しくお茶会とか、今日みたいな夜会とかすればいいのでしょ?」

「ふふ、ジュリアナ。マナーが出来ていないのに、どうやって皆様のおもてなしをするの?マナーが出来ていない人が、会を開いても誰も来てくれないわよ?」

「し、使用人がちゃんとしたらっ」

「使用人に指示を出すのは主催者よ?のんびりお茶をしているだけじゃ勤まらないの。いろんな勉強が必要なのよ?」


貴族夫人の常識を優しく噛み砕いて説くと、ジュリアナは着ているワンピースのスカートをギュッと掴んで唇を噛む。


「お姉様ばかり着飾って、お出かけしたり……ズルいんですもの……!」


悔しげに呟かれた言葉に、フゥッと小さくため息をついたフランチェスカは、諭すように優しく話しかけた。


「何でもズルいズルイと言うけれど、その意味を知っていて?
“他の隙を突いたり騙して自分が利を得る、正しくない手法“ですのよ?
お勉強も頑張らない、マナーも逃げて学ばないのに、『ズルい』って言うのは可笑しいわよね?
ジュリアナ、あなたが淑女として隙だらけなのは私のせいかしら?
そんなに嫌なら全部頑張って、隙を無くさなきゃいけないわ」

「……!っだって!」

「何でも私のものを欲しがるけれど、自分で努力して欲しいものを手にしなきゃ。私から奪ったものは貴女の手に残り続けてはくれないわ。だって、隙だらけなのですもの。溢れ去っていくだけなのよ?」
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