その令嬢は祈りを捧げる

ユウキ

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護衛候補は靴を脱ぎたい

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 辺りの騒めきが鎮まり、緊張感に包まれる。

 どうやら用意された証人も、王家の監視員の前には出てくることができないようだ。


「あら、そちらが言う証人は居ない様ですわねー?あぁ、ご存知かと思いますけれど、本人の証言は証拠にはなり得ませんわよ」

「くっっっ!」


 悔しげな声を上げたティーダは、憎々しげにエイディアーナを睨むが、本人はどこ吹く風に見返すばかりだ。


「貴様、罪を認めないどころか脅すとはっ!グレゴリ、この者を捉えて牢獄へ繋げよ!」


 フランクリンの呼びかけに、後ろに控えていた側近候補の男がザッと前へと出てくると、エイディアーナを捕らえるべく、壇上から降りたところで


「うっっぐぎゃぁぁっぁあぁぁぁぁ!」


 足を押さえてゴロゴロ転がってのたうちまわった。


「……?大丈夫ですの?」


 エイディアーナは思わず、足元に転がるグレゴリなる男を覗き込んで心配してしまった。


「く、足が!!靴のっっいだだだだ!」


 なんだかグレゴリは立ち上がれない様子。
 靴といっても、護衛を兼ねて出席したグレゴリは、装飾のついた軍服を着ており、足元は編み上げのショートブーツだ。淑女が膝をついてブーツの紐を解くのは遠慮したいところである。

 どうしたものかとエイディアーナは壇上の人たちを見上げる。

 お互いどうしたらと微妙な雰囲気で見つめ合い、エイディアーナは先に口火を切った。


「では、皆さまどうやら大変そうですし、私は先にお暇いたしますわね。破棄の件は承りましたわ」


 綺麗なカーテシーを披露したエイディアーナは、クルッと踵を返して会場を去って行った。

 後に残るのは、痛みに悶絶するグレゴリと呆然と佇むフランクリン始め3人であった。
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