その令嬢は祈りを捧げる

ユウキ

文字の大きさ
上 下
5 / 11

うっかり神様

しおりを挟む
 天使が他の仕事にと去った後、書類仕事が終わった神様は、肩をコキコキと鳴らしてふと宙を見ると新しい願い玉が手元に降りて来た。


「おや?これはあの娘の最新号か!」


 面白いゴシップ雑誌か何かの扱いになりつつある、件のご令嬢の願いは、神様の手に降りるとキラリと光ってその祈りを懇々と流し出す。


「ふっふひゃひゃひゃっっ!これはまた!エイダちゃん面白いのーぅ!ご、御令嬢がもっもげろとか!分かっとるんかいのーぉ?!ひゃははっ」


 立ち上がって玉を親指と人差し指で挟んでかざしながらバンバンと机を叩いて笑いっていると、その騒がしさを聞きつけた天使が舞い戻って来た。


「どうかなさいましたっっ!」
「おわぁっっっ!!」


 その瞬間、机の端に置かれていた籠に神様の振り下ろされた手の端が当たってしまい、籠はグルンと回転してしまった。その弾みで中の玉が宙へと、弧を描くように舞踊った。

 あんぐりと口を開けている間に玉は止まることなく弧を描き、少し離れた場所にあった「叶える」箱に吸い込まれるように入って行った。



「あーーーーーーー!!!!」



 神様は慌てて「叶える」箱に駆け寄って覗き込むと、シュワっという音と共に願い玉が消化されたところだった。


「あーーーーーーーー……」


 その残念さと切なさ、後悔が混じった声音に天使は背の羽をはためかせながら近寄り、一緒に覗き込む。


「……なんか、すみません。あれ、叶っちゃダメなやつでしたっけ?」
「いや、実害はほぼないから叶ったところで……じゃが。ワシの息抜きがぁ」


 悲しみに暮れた神様が、しょぼんと肩を落とした時、天使がすまなそうに神様を見ると指に見知らぬ願い玉が挟まっているのが見えた。


「神様それは?」
「……あ?なんじゃ?」


 と、意識を向けると脱力ついでに指の力も抜けたのか、ポロッと指から願い玉が落ちて行った。


「……あっ」
「…………!!!!」



 シュワっっ!パァァ



 どうやら願い玉は最新号も叶えられるようだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった

白雲八鈴
恋愛
 私はウォルス侯爵家に15歳の時に嫁ぎ婚姻後、直ぐに夫は魔王討伐隊に出兵しました。6年後、戦地から夫が帰って来ました、妻という女を連れて。  もういいですか。私はただ好きな物を作って生きていいですか。この国になんて出ていってやる。  ただ、皆に喜ばれる物を作って生きたいと願う女性がその才能に目を付けられ周りに翻弄されていく。彼女は自由に物を作れる道を歩むことが出来るのでしょうか。 番外編 謎の少女強襲編  彼女が作り出した物は意外な形で人々を苦しめていた事を知り、彼女は再び帝国の地を踏むこととなる。  私が成した事への清算に行きましょう。 炎国への旅路編  望んでいた炎国への旅行に行く事が出来ない日々を送っていたが、色々な人々の手を借りながら炎国のにたどり着くも、そこにも帝国の影が・・・。  え?なんで私に誰も教えてくれなかったの?そこ大事ー! *本編は完結済みです。 *誤字脱字は程々にあります。 *なろう様にも投稿させていただいております。

【完結】真実の愛だと称賛され、二人は別れられなくなりました

紫崎 藍華
恋愛
ヘレンは婚約者のティルソンから、面白みのない女だと言われて婚約解消を告げられた。 ティルソンは幼馴染のカトリーナが本命だったのだ。 ティルソンとカトリーナの愛は真実の愛だと貴族たちは賞賛した。 貴族たちにとって二人が真実の愛を貫くのか、それとも破滅へ向かうのか、面白ければどちらでも良かった。

【完結】待ってください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ルチアは、誰もいなくなった家の中を見回した。 毎日家族の為に食事を作り、毎日家を清潔に保つ為に掃除をする。 だけど、ルチアを置いて夫は出て行ってしまった。 一枚の離婚届を机の上に置いて。 ルチアの流した涙が床にポタリと落ちた。

婚約が取り消されました。

ララ
恋愛
幸せは突然に消え去る。 婚約はいとも簡単に取り消された。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

「おまえを愛している」と言い続けていたはずの夫を略奪された途端、バツイチ子持ちの新国王から「とりあえず結婚しようか?」と結婚請求された件

ぽんた
恋愛
「わからないかしら? フィリップは、もうわたしのもの。わたしが彼の妻になるの。つまり、あなたから彼をいただいたわけ。だから、あなたはもう必要なくなったの。王子妃でなくなったということよ」  その日、「おまえを愛している」と言い続けていた夫を略奪した略奪レディからそう宣言された。  そして、わたしは負け犬となったはずだった。  しかし、「とりあえず、おれと結婚しないか?」とバツイチの新国王にプロポーズされてしまった。 夫を略奪され、負け犬認定されて王宮から追い出されたたった数日の後に。 ああ、浮気者のクズな夫からやっと解放され、自由気ままな生活を送るつもりだったのに……。 今度は王妃に?  有能な夫だけでなく、尊い息子までついてきた。 ※ハッピーエンド。微ざまぁあり。タイトルそのままです。ゆるゆる設定はご容赦願います。

【完結】私が貴方の元を去ったわけ

なか
恋愛
「貴方を……愛しておりました」  国の英雄であるレイクス。  彼の妻––リディアは、そんな言葉を残して去っていく。  離婚届けと、別れを告げる書置きを残された中。  妻であった彼女が突然去っていった理由を……   レイクスは、大きな後悔と、恥ずべき自らの行為を知っていく事となる。      ◇◇◇  プロローグ、エピローグを入れて全13話  完結まで執筆済みです。    久しぶりのショートショート。  懺悔をテーマに書いた作品です。  もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!

【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~

Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。 そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。 「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」 ※ご都合主義、ふんわり設定です ※小説家になろう様にも掲載しています

処理中です...