可愛い姉・美人な妹

ユウキ

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サイドストーリー フレディ奮闘記

参考書

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本を取り出して、僕に向けて丁寧に並べる彼女は楽しげで。
思わず出そうになる笑いを堪えて、頬が引き攣るのが分かった。


「……君、今年入学の1年じゃなかった?
 なんでその上の学年のもあるの?」
「一応予習済みでありますので。
 先輩方にお願いしてテストの答案を頂き、それぞれの対策を練れば、できますでしょう?」


なぜ当然の事を聞くのかと、不思議そうに首を傾げた彼女に、「うっ」となったが、並べられた参考書に目をやってやり過ごすことにした。


「そ、そう。
 私は2学年なんだけれど、その参考書を一冊くれるかい?」
「ありがとうございます、1部5000オルでございます」

「……販売しているっていうのも本当なんだね」
「手間隙と印刷代が掛かっていますから、タダというわけには……」
「だね。では1部お願いできるかな?支払いはコレで」


ジャケットの内ポケットから財布を取り出して支払いすると、彼女はにっこり微笑み2学年用自作参考書を手渡してくれた。


「お買い上げ、ありがとうございます。
 こちらは昨年の答案や講師の癖を元にして作成しております。
 今のところほぼ変更はないと思いますが、あくまで“参考”でございますので悪しからずご利用くださいませ」


これも販売の時の念押しなのだろう。先に言うことでクレームや返品を封じているのか。


(……賢い子だな)


「確かに、講師の変更はないが、何故内容に変更がないと言い切れるんだい?」


もう少し話を伸ばしてみたくて、敢えて絡むように質問を投げかけた。
すると、彼女はまるで物を知らない子を諭すように人差し指を立てて話す。


「先輩、いろんな行事や個々の成績付け、保護者である貴族方への対応などなど、先生というのは、非常に精神が削れる上に多忙なのですよ。
 教える範囲は決まっているのに、態々自分で範囲を変えて忙しさに輪をかけようって言う人、居るのでしょうか?
 せいぜい上からのお達しで、変更点が反映される程度ですよ」


あぁ、彼女は確かに賢い。そんな風に教師を見る生徒が今までいただろうか?

“歳を重ねた、教えを説く偉い方々”ではなく、”方々にせっつかれて忙しい一個人“と断じている気すらある。しかも同情まで掛けていそうな言い方に、愉快な気持ちが腹の底から湧き上がるようで。


「成程。それもそうだ」


僕も満面の笑みを返して応えたのだった。
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