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悪役ではなく
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エレノアの言葉に、クレアは激昂して赤くなった顔を一気に青くさせた。
「な…!なんで…?!」
「だってそうでしょ?
真実はどうあれ、貴族の底辺である男爵の……それも庶子が、殿下に横恋慕して、殿下の婚約者である私に妄言を吐いて危害を加えたのよ?
温情ある処分で済まそうとしている慈悲深い私に、どんな証言をするのかしら?
『待ち伏せして揉みあって、勝手に落ちて行ったのです』とか?周りがどう思って行動するか…止めきれなかったらごめんなさいね?」
「あんたがそうしろっって言ったんじゃない!」
「もぅ、ちゃんと聞いてらして?『やりたいならやってみたら?』と言ったの。発言は自己責任よ?私の責任になさらないで」
まるで出来の悪い小さな生徒を諭すように言ったエレノアは、青ざめたクレアに「分かったかしら?」と小首を傾げて優しく微笑む。
「…あなたの失敗は私を巻き込んだことよ。私に関わらなければ、放っておいたもの。
そうしたらうまく行った可能性は、ほんの少しくらいあるかしら?遠い地で、仲良く慎ましやかに過ごす事くらいは叶ったかもしれないわね。何人道連れにする気だったか知らないけど」
「遠い…なん…でよ」
「だから、貴女が最下位の男爵令嬢で庶子だからよ?
まずは殿下。王族に嫁ぐには侯爵家以上、状況によって伯爵家からと定められているの。だからそもそも奪えたとしても廃嫡は決定ね。
次にどなたにも言えることだけれど、家が決めた婚約を、子が正当な理由なく覆す事など以ての外。その上利益にもならない貴女を、後釜に据えて喜んで迎えるはず無いでしょう?
だからね?なんとか上手く奪えたとしても、その先は無いのよ」
事実を淡々と語るエレノアに、反論出来ようもなく、クレアはハクハクと口を開閉させる。
「キチンと学べばヒントは沢山あったのに。貴族の学園に通う貴女が『知らなかった』では済まされないわ。
私が言えるのはこんなところかしら。足掻きたいなら足掻きなさいな。止めはしないわ。いつでも遊んであげてよ?では、ご機嫌よう」
言い終えたとばかりに背中を向けて去ろうとするエレノアに、クレアは口汚く暴言をぶつけた。
「このっクソ悪役令嬢!」
暴言の意味がわからず、振り返って目を瞬かせるエレノアは、次の瞬間には綺麗な淑女の微笑みを作る。
「悪役だなんて…ふふふ。そんなベタなものに分類しないで?私はそうねぇ…言うなればフィクサーかしらね?」
ウフフと微笑み去っていくエレノアの背中を、クレアは今度こそ呆然とした面持ちで黙って見つめた。
「な…!なんで…?!」
「だってそうでしょ?
真実はどうあれ、貴族の底辺である男爵の……それも庶子が、殿下に横恋慕して、殿下の婚約者である私に妄言を吐いて危害を加えたのよ?
温情ある処分で済まそうとしている慈悲深い私に、どんな証言をするのかしら?
『待ち伏せして揉みあって、勝手に落ちて行ったのです』とか?周りがどう思って行動するか…止めきれなかったらごめんなさいね?」
「あんたがそうしろっって言ったんじゃない!」
「もぅ、ちゃんと聞いてらして?『やりたいならやってみたら?』と言ったの。発言は自己責任よ?私の責任になさらないで」
まるで出来の悪い小さな生徒を諭すように言ったエレノアは、青ざめたクレアに「分かったかしら?」と小首を傾げて優しく微笑む。
「…あなたの失敗は私を巻き込んだことよ。私に関わらなければ、放っておいたもの。
そうしたらうまく行った可能性は、ほんの少しくらいあるかしら?遠い地で、仲良く慎ましやかに過ごす事くらいは叶ったかもしれないわね。何人道連れにする気だったか知らないけど」
「遠い…なん…でよ」
「だから、貴女が最下位の男爵令嬢で庶子だからよ?
まずは殿下。王族に嫁ぐには侯爵家以上、状況によって伯爵家からと定められているの。だからそもそも奪えたとしても廃嫡は決定ね。
次にどなたにも言えることだけれど、家が決めた婚約を、子が正当な理由なく覆す事など以ての外。その上利益にもならない貴女を、後釜に据えて喜んで迎えるはず無いでしょう?
だからね?なんとか上手く奪えたとしても、その先は無いのよ」
事実を淡々と語るエレノアに、反論出来ようもなく、クレアはハクハクと口を開閉させる。
「キチンと学べばヒントは沢山あったのに。貴族の学園に通う貴女が『知らなかった』では済まされないわ。
私が言えるのはこんなところかしら。足掻きたいなら足掻きなさいな。止めはしないわ。いつでも遊んであげてよ?では、ご機嫌よう」
言い終えたとばかりに背中を向けて去ろうとするエレノアに、クレアは口汚く暴言をぶつけた。
「このっクソ悪役令嬢!」
暴言の意味がわからず、振り返って目を瞬かせるエレノアは、次の瞬間には綺麗な淑女の微笑みを作る。
「悪役だなんて…ふふふ。そんなベタなものに分類しないで?私はそうねぇ…言うなればフィクサーかしらね?」
ウフフと微笑み去っていくエレノアの背中を、クレアは今度こそ呆然とした面持ちで黙って見つめた。
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