退屈令嬢のフィクサーな日々

ユウキ

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エレノアの目覚め

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「……ん…」

 医務室の寝台に横たえられたエレノアは、閉じていた瞼を震わせるとゆっくりと開け、宙をぼんやりと見つめた。次に自身の手を握っている存在に気付き、ゆっくりと目を向ける。

 祈るようにエレノアの手を握っていたメイナードは、心配からか苦しげに歪められた表情に安堵の色を滲ませた。


「エリー、大丈夫か?!エリー…!」
「…メイ?…っう…!」


 咄嗟に起き上がろうとしたエレノアを、押しとどめてメイナードは優しく声をかける。


「無理するな、そのまま横になっているんだ。エリー、覚えているか?階段から落ちたんだ」
「階段…?ぁあ…ええ。…でも直ぐにメイの声が聞こえて…ありがとう、メイ」


 エレノアはふわりと微笑み、メイナードが握りしめていた手をキュッと握り返す。
 メイナードは安堵のせいか、湧き上がる愛しさのせいか、鼻の奥がツンとして不覚にも瞳を潤ませてしまう。

 公爵令嬢が危害を加えられて倒れたという事で、張り詰めた空気が漂っていた医務室内は一気に緩み、医師や駆けつけた学園長、騎士といったその場に居た面々は安堵と喜びの声を上げる。

 しかしそれも束の間。目が覚めたエレノアを、常駐していた女医に診断を受けさせるため、喜びを分かち合う面々を女医が早々に追い出したのだが。



 女医が診察したところ、ダンスの衣装の下に着ていたパニエのおかげか、腕や背中以外には打撲跡などはなかったが、その打撲痕もアザになったりはしないだろうと診断された。
 念のためにと痛み止めを処方され、ふらつきや気分が悪くなる可能性と、1週間の安静を告げられた。

 エレノアは王妃教育や委員の仕事もあることから難色を示したが、メイナードが口を挟み、渋々了承したのだった。

 意識もはっきりしていることから、制服などの着替えと荷物、馬車の準備が整うまでの間に、できる範囲でメイナードが聴取をすることにした。
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