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情報操作は華麗に

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 メイナードは馬車の中で改めて対面に座る、己の婚約者に目を向けた。

 久々にゆっくりと向かい合っているなと思い、そのままを口にすると、目を瞬かせたエレノアは間を置いてから答えた。


「王妃教育と、学園に入る前の準備に追われて時間もございませんでしたし、私もついていくのに必死で、殿下を上手く気遣えなかったのですわ。
 学園に入ったら入ったで殿下は生徒会のお仕事も出来てしまい、お忙しそうでしたので……。
 棟も離れておりますし、私も淑女科の委員に選ばれてご挨拶もままならず……」
「そうか、そうだな」

「正直言いますと、少々寂しく感じておりました。殿下が遠くなったと感じてしまって」


 エレノアの言葉で、メイナードは心の内で持っていた、彼女に対しての不満の根底に気付いた気がした。


 自分との時間を作らず、顔を見せたと思えば儀礼的な挨拶だけを交わして忙しそうに去るエレノア。
 未来の王妃の地位が確定したら、目を向けないのかとそんなものかと落胆していた。
 自身もエレノアと同じく寂しかったのかもしれないと気付くと、どうしようもなく恥ずかしくなり、手で顔を半分隠して気付かれないように窓に向けた。


「それに常に試験を受けている状態ですし…
 こうして目がないところで2人でいて、やっと昔のようにお話できますわねっ」


 悪戯っぽく笑うエレノアに、頬が緩むとともに、今度はメイナードが瞬いた。


「試験?」
「ええ、私には常に模範的であるようにと、合格が出るまでは審査をする者が複数おりますのよ。かれこれ五年になりますか」
「そうなのか?!」

「でも今日の一件で、少し表情を崩してしまいました。
 お叱りを受けるかもしれませんわ。どうかお叱りが軽く済むように、祈っていて下さいませね」


 口を尖らせて拗ねたように言うエレノアに、内心で面食らいながら、そんな試験があるとは知らなかったメイナードは心の中でエレノアに謝罪した。



(表情が変わらない、冷徹な女と思っていてすまない)




 因みに、確かに監視は事実付いてはいるが、学生の間にそこまで厳しくないのが現状である。
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